ReBirth 上位世界から下位世界へ

小林誉

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第245話 ドラゴンライダー

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ガルシア王国に転移した俺達は、レヴィアに変身してもらって空の上から南下を始めていた。遥か先には険しい山脈が続いている。あれを徒歩で越えるのは相当な困難だと思える。クレアと初めて訪れた街でもあるコペルから出発したので、王国のペガサスライダーなどにも見つからずに快適に進めていたのだが、ヴルカーノの領土である山脈上空を通過した時から様子が変わってきた。

遠目に見えていた米粒程の点がみるみる近寄ってくると、レヴィアと並走し始めたのだ。隣に飛んでいるのは小型のワイバーンに跨ったリザードマン。これがヴルカーノご自慢のドラゴンライダーなのだろう。風切り音が凄くて何を言っているのか解らないが、リザードマンが何やらこちらに向かって叫んでいるのが見えた。手を上下にバタバタと動かしているので、鳥の物真似でもしているのだろうか?

「主殿、あれは下に降りろと言っているのではないのか?」
「そう…なのかな?でも降りると言っても下は岩山しかないし、降りる所なんかないんだが…」

そうこうしているうちに諦めたのか、リザードマンはレヴィアから離れると俺達と同じ方向に先行し始めた。流石に飛ぶために生まれてきた竜だけあって、飛行速度はレヴィアよりも速いみたいだ。あっと言う間に見えなくなったドラゴンライダーだったが、しばらくすると再び姿を現した。今度は大勢で、しかも緑色の巨大なドラゴンを引き連れて。おつむの方はどうか知らないが、大きさで言えばファフニルに匹敵するぐらいの体躯だ。あれに攻撃されてはレヴィアとて無事でいられるとは思わない。

「…なあ、あれってこっちを攻撃するつもりなのかな?」
「そうとしか思えないんだが…」
「ご主人様、戦いになりますか?」
「シャリーもパチンコで戦えるよ?」

ひょっとしてさっきのは領空侵犯する輩を穏便に誘導するためにやっていたのか?だとしたらマズい事になる。前世でも一部の国を除いて領空侵犯や領海侵犯した者達には警告なしの撃墜や撃沈が基本だろう。彼等からすれば俺達は見た事も無い形状のドラゴンに乗った不法侵入者でしかなく、迎撃するのは当然の流れに思えた。

「やばいな…レヴィア、すぐに高度を落として地上に降りてくれ!このままじゃ攻撃されるかも知れない!」
「えぇっ!?そんな事急に言われても…じゃあ…あの辺でいいかな」

先に進む事を止めたレヴィアは急速に高度を落として少し開けた場所を目指すが、その時にはドラゴンライダー達がレヴィアの巨体に殺到していた。手に持った槍を金色の鱗に叩きつけ、騎乗しているワイバーンの鉤爪や牙で攻撃を開始する。

「ちょっと!いたた!やめてよね!」

以前とは比べ物にならない程頑丈になっているレヴィアの体に、彼等の攻撃はほとんど通用していない。繰り出された槍は簡単に跳ね返され、牙や爪は鱗を少し削る程度だ。本当なら反撃したいところだが、ここで彼等を蹴散らすと話がややこしくなって指輪の捜索はおろか入国する事さえ困難になる。ここは守りを固めて耐えるしかない。

攻撃を受けているのはレヴィアだけでなく、彼女の上に乗っている俺達に対しても同様だ。あちこちから飛来してくる投槍を剣で弾き盾で防ぐ。レヴィアを含めてまったく攻撃が通用しない事に焦ったのか、彼等ドラゴンライダー達は一度距離を取ると、その間を縫うように先程の巨大ドラゴンが急速に近づいて来た。いよいよ親玉の出番て訳か。しかしこれはまさか…

「ヤバい!レヴィア!」
「え?きゃっ!?」

なんとドラゴンはその巨体を止める事無く加速させ、そのままレヴィアに体当たりをしてきたのだ。これには流石のレヴィアもなす術無く吹き飛ばされる。バランスを崩して地上に真っ逆さまだ。そうなれば当然レヴィアの背に乗る俺達もタダで済む筈がなく、レヴィアと共に地上に向かって真っ逆さまに落ちて行った。

「おわああっ!」
「きゃああー!」
「きゃはははは!」
「ん~~~!!」

空中でバラバラにされて自由落下を始めた状態では、いくら俺達が高レベルだからと言っても良くて大怪我、悪くすれば死ぬかもしれない。レヴィアは落ちたところで大したダメージもなさそうだからこの際放っておくとして、問題はレヴィア以外の面子だ。この状況で爆笑できるシャリーはともかく、クレアは何とかレヴィアに掴まろうと手を伸ばしているが、ディアベルに至っては目をつむったままの状態で固まっている。俺は瞬時に腕輪に魔力を流すと、連続転移で彼女達の回収に入った。

まずディアベルの横に転移して片手で抱えると、クレアの下に転移する。俺の意図を正確に理解した彼女は肩に手を添えると次の転移に備え、シャリーの横に転移した瞬間彼女を捕まえた。後は落下中のレヴィアの背中に転移してその鱗にしがみつく。後はレヴィアの目を覚まさせれば終わりだ。

「レヴィア!レヴィアー!」
「うー…えっ?嘘!」

体当たりの衝撃で前後不覚に陥っていたレヴィアは地上すれすれで正気を取り戻し、そこから何とか軌道修正を図るが間に合うはずもなく、落下の衝撃を少し減らすのが精一杯だった。レヴィアの巨体が轟音を立てながら岩肌を削り地面を滑る。その様はまるで削岩機か何かの様だ。

『きゃああああ!』

必死でしがみついていたのだが、あまりの衝撃にレヴィアの背から振り落とされてしまう。直接的な衝撃はレヴィアの体が緩和してくれたとは言え、背中から地面に叩きつけられて息が出来なくなる。ゴロゴロと地面を転がり続け岩肌にぶち当たる事でようやく止まる事が出来た。

「みんな無事か!?」
「いたた…」
「地面…地面だ…」
「面白かった~」

あちこち擦り剥いたりぶつけたりで体中が痛い。だがそんな傷を癒す暇もなく、上空で攻撃を仕掛けてきたドラゴンライダー達が俺達を取り囲んだ。

「貴様等!どこの国の手の者だ!?」
「武器を捨てろ!」
「抵抗するなら容赦なく斬るぞ!」

これはまたややこしい事態になってしまった。槍を構えて包囲を狭めるリザードマン達に手を上げながら、どうやってこの事態を切り抜けようかと俺は頭を捻るのだった。
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