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第46話 アミルの回想
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俺があいつと初めて出会ったのはオークに追われて逃げてきた時だ。あの頃の俺にとって、オークは一対一なら何とかなるけど倍以上出てこられたんじゃ歯が立たない相手だった。だから俺は迷わず逃げた。俺はともかくレレーナを危ない目に遭わせたくなかったからな。
簡単な依頼のはずが予想外の強敵に遭遇し途方にくれて座り込んでたら、俺より少し年下に見える黒髪の少年と、それと同じぐらいの歳の猫族の女の子が通りかかったんだ。
一見頼り無さそうな外見だったけど、ステータスを見ると俺より五つも高いレベル13だった。驚いて思わず声をかけちまったよ。話してみると幸いあいつ等も俺達と同じ依頼を受けていたみたいだから、臨時でパーティーを組む事になったんだ。
初めて一緒に戦った時は目を疑ったね。驚いた事にあいつは剣も魔法も両方使えたんだ。普通はどっちか一つに専念するものなんだよ。簡単な魔法を使って戦うレベルの高い戦士は居るけど、とてもじゃないが戦闘中に無詠唱で魔法を使うなんて器用な真似は出来ないだろう。無詠唱なんてスキル、高レベルの魔法使いが使えるかどうかだ。この国には宮廷魔術師が何人か居るけど、その中でも使える奴はせいぜい一人か二人だと聞いたことがある。
オークとの戦いの後、あいつはそれだけの実力を見せたのに自分は活躍してないなんて謙遜してたっけ。でもあいつは常に周りのメンバーが有利に戦えるように立ち回っていた。それは誰にでも出来る事じゃない。俺なんかには無い、生まれ持った資質なんだろうな。
そして一番驚かされたのは『経験値アップ』って言う聞いたことも無いスキルだ。俺とレレーナは村を出てから長い時間をかけて少しずつレベルを上げてきたんだ。それをただの一戦で今までこつこつ稼いだ経験値より多く稼げたんだから開いた口が塞がらなかったね。
下心が無かったとは言わない。こいつと居ると俺達は運が開けると思ったんだ。話しやすい奴だったし、一緒に居るクレアも凄く良い娘だった。受けてもらえるか解らなかったが、駄目もとでパーティーを組んでくれと言ったらあっさりと了承された。ただ道ですれ違っただけの俺達をパーティーに加えてくれたんだ。嬉しかったな。
でも、すぐに俺のミスが原因で皆を危ない目に遭わせちまった。新パーティーの初依頼だと気合を入れて取って来た依頼がシルバーランクの依頼だったんだ。当時ブロンズの俺達が成功する見込みの無い危険な依頼だった。すぐに返そうかと思った時シルバーランクのパーティーに絡まれたんだ。
そいつらは俺達を散々馬鹿にして依頼を持って行こうとしたんだけど、あいつは頑として譲らなかった。それどころか格上のパーティーに正面から喧嘩を売ったんだ。こいつの心臓は鋼で出来てるんじゃないかと疑ったね。そしてあいつは、何でもない事のように言ったんだ。自分達が強くなれば何の問題も無いって。
口で言うのは簡単だけど実際出来るかどうか確信は無かった。でもあいつの自信満々の表情を見ているうちに、不思議と出来るって思ったんだ。俺達はすぐにダンジョンに潜って特訓を始め、僅か数日でシルバーランクにまで到達する事が出来た。薬草を採って来ては小銭を稼いでいた俺達がだ。
見違えるように強くなった俺達はかつての強敵オーガを簡単に倒し、襲撃してきたシルバーランクの冒険者も一対一で倒してしまった。俺はこんな簡単に強くなっていいのかと少し怖くなったぐらいだ。
緊急依頼で魔物の大群と戦った時も、あいつは異彩を放っていた。強力な弓や魔法でないと落とせないワイバーンを、空を飛ぶ敵には不向きなはずの爆発魔法で虫を落とすみたいに次々と地上に落としていたっけ。あれを見た時、どんな技術や道具でも使う人次第で色んな戦い方が出来るんだと感心させられたよ。
緊急依頼の時に知り合ったオッサンから王都での士官の話を聞き、俺達はすぐに王都に向かったんだ。王都のダンジョンで実力をつけて俺を騎士にしようと皆で協力してくれたよ。凄く嬉しかった。パーティーを組んだことは何度かあったけど、こんな親身になってくれる仲間に出会えた事なんて今まで無かったからな。
ダンジョンに潜った時、盾として使い捨てられる寸前の奴隷の女の子二人と出会ったんだ。可哀相に一人はまだ子供だった。そんな子を盾代わりに使う男達に俺は随分腹を立てたが、あいつは俺以上に怒ったみたいで、その場でおっさん達を痛めつけてたっけ。その時は結構喧嘩っ早い奴なのかと思ったよ。当然のようにあいつは女の子達を連れて行く事に決めていた。俺達と出会った時の様に。冷たく見えても根は良い奴なんだよ。
下層に潜ると地上では現れないような強敵が次々と現れた。何度か命の危険を感じたな。でも、その度にあいつが何とかしてくれた。男として少し情けないけど本当に頼りになる奴だと思った。
そしてフロアマスターと戦った時、俺達は雑魚の対処に手一杯だったからあいつはフロアマスターと一対一で戦う羽目になった。俺達が加勢するまで持ってくれと頑張っていたら、なんとあいつは深手を負いながらも一人で倒してしまったんだ。フロアマスターを単独で倒すとか、昔の勇者じゃあるまいし。
皆の手助けもあって俺はついにゴールドランクになり、そして騎士への推薦が決まった。試験前に初めてあいつと剣を合わせたが、まるで歯が立たなかったね。レベルにはそれ程差は無いんだけど、称号が付いてからのあいつにはどこか余裕のようなものが感じられた。見た目は最初に出会った頃とあまり変わっていないはずなのに、なぜか貫禄があるんだ。これが真の強者というものなのかな。
騎士の試験当日、最初は面接からだった。ひげ面の騎士団長と小太りの副団長の二人が面接官だった。騎士団長は普通に話してくれたんだけど、副団長の方は凄く嫌な奴だったな。貴族だって事を鼻にかけて、俺の生まれや両親を侮辱しやがった。何度怒鳴って帰ってやろうかと思ったけど、協力してくれた皆のためにも我慢するしかなかった。
副団長には手合わせの時に恥をかかせてやったから、少しはスッとしたかな。でもその後に戦った騎士団長は物凄い強さだった。打ち込んでも軽く受け止められ、払おうとしても受けた剣ごと流されそうになる。何とか隙を見つけて攻撃したんだけど、誘いだったみたいで剣を弾かれた。俺は負けてしまった。
ここまで付き合ってくれたみんなに申し訳なくて、俺は頭を上げる事も出来なかった。絶対不合格だと思ったのになぜか合格したと聞いた時は驚いて声も出なかったっけ。レレーナも一緒に喜んでくれて、騎士団長の前だと言うのに大騒ぎしてしまった。
そして、何でそんな事になったのか解らないけど、あいつと騎士団長が闘うことになったんだ。いくらあいつが強くても相手は王国中の騎士を纏め上げる歴戦の勇士だ。レベルもあいつよりずっと上だし、さすがに負けるんじゃないかと思った。
でもあいつは俺の予想を簡単に上回ったよ。あの騎士団長が手も足も出ずに翻弄されて、挙句の果てに刃を潰した訓練用の剣で騎士団長の剣を二つに断ち切ったんだ。あいつが本気を出すとこんなに強いなんて改めて驚かされたな。
そしてついに、俺達に別れの時がやって来た。俺は明日から王国の騎士になり、あいつ等は別の国に旅立つそうだ。今まで散々世話になって礼をするのはこっちの方なのに、自分達の分の報酬まで多めにくれたんだ。結婚祝いだと言って。俺は本当に良い友達とめぐり合えたと思う。
まだ俺の騎士人生は始まったばかりだけど、旅の空であいつに活躍が伝わるぐらい頑張ってみせる。あいつを失望させたくないしな。だから、いつかまた会おう、エスト。
簡単な依頼のはずが予想外の強敵に遭遇し途方にくれて座り込んでたら、俺より少し年下に見える黒髪の少年と、それと同じぐらいの歳の猫族の女の子が通りかかったんだ。
一見頼り無さそうな外見だったけど、ステータスを見ると俺より五つも高いレベル13だった。驚いて思わず声をかけちまったよ。話してみると幸いあいつ等も俺達と同じ依頼を受けていたみたいだから、臨時でパーティーを組む事になったんだ。
初めて一緒に戦った時は目を疑ったね。驚いた事にあいつは剣も魔法も両方使えたんだ。普通はどっちか一つに専念するものなんだよ。簡単な魔法を使って戦うレベルの高い戦士は居るけど、とてもじゃないが戦闘中に無詠唱で魔法を使うなんて器用な真似は出来ないだろう。無詠唱なんてスキル、高レベルの魔法使いが使えるかどうかだ。この国には宮廷魔術師が何人か居るけど、その中でも使える奴はせいぜい一人か二人だと聞いたことがある。
オークとの戦いの後、あいつはそれだけの実力を見せたのに自分は活躍してないなんて謙遜してたっけ。でもあいつは常に周りのメンバーが有利に戦えるように立ち回っていた。それは誰にでも出来る事じゃない。俺なんかには無い、生まれ持った資質なんだろうな。
そして一番驚かされたのは『経験値アップ』って言う聞いたことも無いスキルだ。俺とレレーナは村を出てから長い時間をかけて少しずつレベルを上げてきたんだ。それをただの一戦で今までこつこつ稼いだ経験値より多く稼げたんだから開いた口が塞がらなかったね。
下心が無かったとは言わない。こいつと居ると俺達は運が開けると思ったんだ。話しやすい奴だったし、一緒に居るクレアも凄く良い娘だった。受けてもらえるか解らなかったが、駄目もとでパーティーを組んでくれと言ったらあっさりと了承された。ただ道ですれ違っただけの俺達をパーティーに加えてくれたんだ。嬉しかったな。
でも、すぐに俺のミスが原因で皆を危ない目に遭わせちまった。新パーティーの初依頼だと気合を入れて取って来た依頼がシルバーランクの依頼だったんだ。当時ブロンズの俺達が成功する見込みの無い危険な依頼だった。すぐに返そうかと思った時シルバーランクのパーティーに絡まれたんだ。
そいつらは俺達を散々馬鹿にして依頼を持って行こうとしたんだけど、あいつは頑として譲らなかった。それどころか格上のパーティーに正面から喧嘩を売ったんだ。こいつの心臓は鋼で出来てるんじゃないかと疑ったね。そしてあいつは、何でもない事のように言ったんだ。自分達が強くなれば何の問題も無いって。
口で言うのは簡単だけど実際出来るかどうか確信は無かった。でもあいつの自信満々の表情を見ているうちに、不思議と出来るって思ったんだ。俺達はすぐにダンジョンに潜って特訓を始め、僅か数日でシルバーランクにまで到達する事が出来た。薬草を採って来ては小銭を稼いでいた俺達がだ。
見違えるように強くなった俺達はかつての強敵オーガを簡単に倒し、襲撃してきたシルバーランクの冒険者も一対一で倒してしまった。俺はこんな簡単に強くなっていいのかと少し怖くなったぐらいだ。
緊急依頼で魔物の大群と戦った時も、あいつは異彩を放っていた。強力な弓や魔法でないと落とせないワイバーンを、空を飛ぶ敵には不向きなはずの爆発魔法で虫を落とすみたいに次々と地上に落としていたっけ。あれを見た時、どんな技術や道具でも使う人次第で色んな戦い方が出来るんだと感心させられたよ。
緊急依頼の時に知り合ったオッサンから王都での士官の話を聞き、俺達はすぐに王都に向かったんだ。王都のダンジョンで実力をつけて俺を騎士にしようと皆で協力してくれたよ。凄く嬉しかった。パーティーを組んだことは何度かあったけど、こんな親身になってくれる仲間に出会えた事なんて今まで無かったからな。
ダンジョンに潜った時、盾として使い捨てられる寸前の奴隷の女の子二人と出会ったんだ。可哀相に一人はまだ子供だった。そんな子を盾代わりに使う男達に俺は随分腹を立てたが、あいつは俺以上に怒ったみたいで、その場でおっさん達を痛めつけてたっけ。その時は結構喧嘩っ早い奴なのかと思ったよ。当然のようにあいつは女の子達を連れて行く事に決めていた。俺達と出会った時の様に。冷たく見えても根は良い奴なんだよ。
下層に潜ると地上では現れないような強敵が次々と現れた。何度か命の危険を感じたな。でも、その度にあいつが何とかしてくれた。男として少し情けないけど本当に頼りになる奴だと思った。
そしてフロアマスターと戦った時、俺達は雑魚の対処に手一杯だったからあいつはフロアマスターと一対一で戦う羽目になった。俺達が加勢するまで持ってくれと頑張っていたら、なんとあいつは深手を負いながらも一人で倒してしまったんだ。フロアマスターを単独で倒すとか、昔の勇者じゃあるまいし。
皆の手助けもあって俺はついにゴールドランクになり、そして騎士への推薦が決まった。試験前に初めてあいつと剣を合わせたが、まるで歯が立たなかったね。レベルにはそれ程差は無いんだけど、称号が付いてからのあいつにはどこか余裕のようなものが感じられた。見た目は最初に出会った頃とあまり変わっていないはずなのに、なぜか貫禄があるんだ。これが真の強者というものなのかな。
騎士の試験当日、最初は面接からだった。ひげ面の騎士団長と小太りの副団長の二人が面接官だった。騎士団長は普通に話してくれたんだけど、副団長の方は凄く嫌な奴だったな。貴族だって事を鼻にかけて、俺の生まれや両親を侮辱しやがった。何度怒鳴って帰ってやろうかと思ったけど、協力してくれた皆のためにも我慢するしかなかった。
副団長には手合わせの時に恥をかかせてやったから、少しはスッとしたかな。でもその後に戦った騎士団長は物凄い強さだった。打ち込んでも軽く受け止められ、払おうとしても受けた剣ごと流されそうになる。何とか隙を見つけて攻撃したんだけど、誘いだったみたいで剣を弾かれた。俺は負けてしまった。
ここまで付き合ってくれたみんなに申し訳なくて、俺は頭を上げる事も出来なかった。絶対不合格だと思ったのになぜか合格したと聞いた時は驚いて声も出なかったっけ。レレーナも一緒に喜んでくれて、騎士団長の前だと言うのに大騒ぎしてしまった。
そして、何でそんな事になったのか解らないけど、あいつと騎士団長が闘うことになったんだ。いくらあいつが強くても相手は王国中の騎士を纏め上げる歴戦の勇士だ。レベルもあいつよりずっと上だし、さすがに負けるんじゃないかと思った。
でもあいつは俺の予想を簡単に上回ったよ。あの騎士団長が手も足も出ずに翻弄されて、挙句の果てに刃を潰した訓練用の剣で騎士団長の剣を二つに断ち切ったんだ。あいつが本気を出すとこんなに強いなんて改めて驚かされたな。
そしてついに、俺達に別れの時がやって来た。俺は明日から王国の騎士になり、あいつ等は別の国に旅立つそうだ。今まで散々世話になって礼をするのはこっちの方なのに、自分達の分の報酬まで多めにくれたんだ。結婚祝いだと言って。俺は本当に良い友達とめぐり合えたと思う。
まだ俺の騎士人生は始まったばかりだけど、旅の空であいつに活躍が伝わるぐらい頑張ってみせる。あいつを失望させたくないしな。だから、いつかまた会おう、エスト。
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