公爵家の隠し子だった

平民として生き、平民として死んでいく。
そう信じて疑わなかった。
兄と私は捨て子。スラム街に捨てられ、それでもなんとか生き残って、普通の生活までたどり着いた。

病弱な兄と具の少ない冷えたスープを飲む、硬いパンを笑いながら食す。
薬ではもう癒えぬ兄の体、日に日に痩せ細っていく兄、死ぬまで幸せでいてほしいと死物狂いで働いた。
魔法も、薬学も、聖力も、剣も、全部学び、戦い、有名人にまでなった。

だが、兄は死んだ。

殺された。

皮肉なことに、病気ではなく殺されてしまった。

たった17歳でこの世を去った兄、そこに残された15歳の妹はどう生きればいいのか。


兄を殺した相手は公爵家の当主。

「お前が私の娘か」
「は…?」

血まみれな兄を見て、呆然と立ち尽くす私に対してその殺人鬼は言う。

私は、公爵家の娘であった。
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