人間に慈悲深い捨てられ聖女はその慈悲を捨てた

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第一章 二人の聖女

四話 この国の聖女(4)

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沢井が夏合宿の話を持ち出して3週間が経ち、その間に前期の講義のテスト期間もようやく終わりを迎えいよいよ夏休みが始まった

彰人と須田は訓練のためにサークル室ではなく朝から須田の家で2人で過ごしていた

「明日からの準備もうしたか?」

1時間の訓練が終わりいつも通り須田の膝の間でテレビを見ていると後ろから明日からのことを聞かれた

「だいたい、かな?」

「なに、まだ終わってないのあんの?」

「んー……ちょっと」

言い淀むと須田は彰人の頭上から覗き込むと聞いてきた

「海行ったことなくて、水着持ってないんですよね……」

そう言って苦笑いを見せると、そんなことかと須田は驚いた

「せっかくだし持っていくだけ持っていけば?入る入らないは行ってみてから決めればいいしさ」

須田のその言葉に悩みつつ頷くと、2人は須田の家を後にしてショッピングモールに向かった

「そっかぁ、彰人海初めてなんか」

感慨深げに横を歩く須田が呟くため、困ったように笑ってみせた

「泳ぐの苦手?」

「得意じゃないかなぁ」

「そっかそっか、まぁ海入るって言ったって足着くくらいのとこで遊ぶ程度だから怖かったら俺とビーチバレーでもしてような」

気遣うようにそう言って頭を撫でられながら歩くと、左腕をさすり喉の奥に支えるような感覚を心の奥底に押し込め明日からの夏合宿への期待で押し込めた

「これは?」

「派手すぎじゃない?!」

「目立つ方が見つけやすいなって」

「小さい子どもじゃないんだから!」

2人で彰人の水着を選んでいると、よく知った声が聞こえてきた

「相変わらず一緒にいるっすね」

「ん?お、沢井に上條じゃん。そっちも買い物?」

声に振り向くと、サークルの先輩の2人が連れ立ってその場にいた

「沢井さんが今更なって水着ないの気付いたって言い始めて」

暑い中引っ張り出され不服そうに上條がそういうと、横にいた沢井はけらけらと笑った

「いやぁ、去年遊びすぎて破けてたの忘れてて」

「事前に見るんすよ、絶対使うんすから」

「ごめんって」

パートナーとはいえDomの上條を振り回して明るく笑っている沢井の姿は、彰人にはまだまだ眩しく見えた

「山本も水着買ってるんだから俺と同じじゃん?」

「こいつはお前と違って、海行ったことないのー。一緒にすんなぁ?」

同じものを買っている彰人を仲間だと言わんばかりに沢井がそういうと、須田は一緒にするなと言い返していた

「ちぇ、まあ明日から楽しみましょう!」

拗ねた顔を一瞬作りつつ直ぐにそう明るく言って挨拶を済ませると、上條と共に会計へ歩いて行った

「あいつ、マジで嵐みたいなやつだな」

須田は2人の後ろ姿を見ながら呆れ顔でそう口にして、彰人はその言葉に小さく笑った
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