人間に慈悲深い捨てられ聖女はその慈悲を捨てた

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第一章 二人の聖女

とある王国には

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 この国には、聖女が二人いた。

 初めに産まれてきたのは、力はごく僅かだったがとても美しい天女のような聖女。
 けれどその翌年、小さな村で歴代最高の力をもったと謳われる聖女が産まれた。
 人々は喜び、祝福した。これで、この国は他の国に負けないほどの平穏が訪れると、誰もがそう思った。

 ーーーけれど、そんなはずはなかった。

 力の少ない聖女は聖女に向かなかったのだ。精霊と仲が悪く、聖女の祝福の力も持っていなかった。
 けれど、彼女は聖女であるという証の一番大切な宝石眼を持っていたのだ。だからこそ、人々は疑わなかった。
 そして何より、人々はその美しさの虜となったのだ。皆がその聖女を称え、美しいと褒め、歴代最高の聖女など目になかった。

 そのうち歴代最高の聖女は、人々から蔑まれる存在となっていった。金食い虫と言われ、暴言をはかれ、協会で監禁のような生活を強いられまともなご飯もない、ただ送られてくるのは仕事の山。
 それでも人間に慈悲深いその聖女は人間を見捨てなかった。


 だが、誰一人として気づかない。
 この国の平穏があるのは、その金食い虫と言われる聖女だということを…
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