38 / 58
第37話:チート能力+チート装備
しおりを挟む
叫びながらそいつの顔面に右手を叩き込む。
しかし、そいつはわずかに顔を逸らして避けてみせた。
「テメェ、今の見えてたのか?」
「野蛮な王子様だねぇ。 そんな技術も何も無いパンチなんか目を瞑ってても当たらないよ」
「なるほど、テメェの目が節穴だってのはよーく分かった」
「……なんの話だい?」
今、俺はこいつの瞬発力と反応速度を見るためにわざと指を1本、2本と変化させつつ殴った。
だがこいつはそれをただのパンチだと言い切った。
つまり速度はあるが、視力はお察しというわけだ。
その証拠に、俺が腰につけていた袋を奪ったところで気付かず、目の前で掲げてからようやく知ったくらいだ。
「どうした、速過ぎて見えなかったか?」
「まさかッ!?」
刀の柄に手を掛けるが、俺が柄の頭を抑えたせいで抜けない。
「どうした、抜けよ。 飾りじゃねぇんだろ」
「このッ……!」
そいつは後ろに飛びずさり、改めて刀を抜く。
先ほどまでのヘラヘラした表情と違い真剣な顔をしているが、それが余計に滑稽に見える。
「くたばれボンボンがぁ!」
速度に自信があるからこそ、遠間からの助走をつけた突きをくりだす。
だが分かりやすく、そして遅い。
半身をずらして躱し、無防備などてっぱらに膝を叩き込むと身体がくの字に曲がりながら空中に浮かび、そのまま足を掴んで地面に叩き付けた。
「ゴッ……ハァ!?」
苦悶の声が聞こえる、まだ足りない。
もう一度持ち上げ地面に叩き付ける、まだ足りない。
また持ち上げてから、今度は地面にこすり付けるように何度も念入りに叩き付ける。
そのせいで綺麗だった顔面が擦り切れっちまった。
そこでようやく俺は手を離してやる。
クソ野郎はまだ動けるようで、虫のように必死に這って逃げようとするところを頭を踏みつけて押さえる。
「ここにいる奴らは何の間違ったことしてないのにみすぼらしく死ぬんだろ? それに比べれば、お前がこうやって死ぬのは妥当な結末だろう?」
そして俺は頭を潰そうと足に力を入れる。
パン、という音が聞こえた瞬間にクソ野郎が消えた。
「アァン?」
もう一度パン、という音がした。
そしてそれと同時に俺が持っていた親父殿の首まで消えてしまった。
音の鳴った方向に顔を向けると、そこにはいなかったはずの奴らがいた。
俺と同じくらいの体格である男は静かに佇みながら俺を見ている。
背後にいる紫髪の女は先ほどまでボロ雑巾になっていたクソ野郎にポーションを飲ませ回復させる。
そして青髪の女が親父殿の首が入った袋を、元気になったクソ野郎に渡した。
「こっちはメナスがなんとかする、あなたはそれを持ってツァーカムまで逃げなさい」
「オレに逃げろだと!」
クソ野郎は激昂するも、男が視線を向けただけで後ずさった。
どうやら目の前にいる男はそれだけの強さを秘めているようだ。
「テメェ、逃げたら殺すぞ」
クソ野郎に脅しを込めて距離を縮めようと足を踏み出した瞬間、悪寒を感じて咄嗟に回避体勢をとった。
さっきまで俺の頭があった箇所に、不可視の刃が通り過ぎていた。
速さだけならクソ野郎の方があったかもしれねぇが、こいつのはちょいと厄介だ。
なにせあまりにも動作がコンパクトで静かなせいで"起こり"が掴めなかった。
例えば殴るときに振りかぶるように、何かをしようとする前段階の行動がそれだ。
それが掴めないということは攻撃の予測ができないということであり、一撃が致命傷になる戦いにおいて厄介なことこの上ない。
「アンタ、本気で戦いなさい!」
ここでようやく女が口を出してきやがった。
「おい女ァ、こいつはなんだ!」
「種族は不明、性格も過去も不明。 知ってるのはメナスって名前と……30を超える刻印糸によるチートに、昔の転生者が作ったチート装備を持つ最強の男ってことよ!」
しかし、そいつはわずかに顔を逸らして避けてみせた。
「テメェ、今の見えてたのか?」
「野蛮な王子様だねぇ。 そんな技術も何も無いパンチなんか目を瞑ってても当たらないよ」
「なるほど、テメェの目が節穴だってのはよーく分かった」
「……なんの話だい?」
今、俺はこいつの瞬発力と反応速度を見るためにわざと指を1本、2本と変化させつつ殴った。
だがこいつはそれをただのパンチだと言い切った。
つまり速度はあるが、視力はお察しというわけだ。
その証拠に、俺が腰につけていた袋を奪ったところで気付かず、目の前で掲げてからようやく知ったくらいだ。
「どうした、速過ぎて見えなかったか?」
「まさかッ!?」
刀の柄に手を掛けるが、俺が柄の頭を抑えたせいで抜けない。
「どうした、抜けよ。 飾りじゃねぇんだろ」
「このッ……!」
そいつは後ろに飛びずさり、改めて刀を抜く。
先ほどまでのヘラヘラした表情と違い真剣な顔をしているが、それが余計に滑稽に見える。
「くたばれボンボンがぁ!」
速度に自信があるからこそ、遠間からの助走をつけた突きをくりだす。
だが分かりやすく、そして遅い。
半身をずらして躱し、無防備などてっぱらに膝を叩き込むと身体がくの字に曲がりながら空中に浮かび、そのまま足を掴んで地面に叩き付けた。
「ゴッ……ハァ!?」
苦悶の声が聞こえる、まだ足りない。
もう一度持ち上げ地面に叩き付ける、まだ足りない。
また持ち上げてから、今度は地面にこすり付けるように何度も念入りに叩き付ける。
そのせいで綺麗だった顔面が擦り切れっちまった。
そこでようやく俺は手を離してやる。
クソ野郎はまだ動けるようで、虫のように必死に這って逃げようとするところを頭を踏みつけて押さえる。
「ここにいる奴らは何の間違ったことしてないのにみすぼらしく死ぬんだろ? それに比べれば、お前がこうやって死ぬのは妥当な結末だろう?」
そして俺は頭を潰そうと足に力を入れる。
パン、という音が聞こえた瞬間にクソ野郎が消えた。
「アァン?」
もう一度パン、という音がした。
そしてそれと同時に俺が持っていた親父殿の首まで消えてしまった。
音の鳴った方向に顔を向けると、そこにはいなかったはずの奴らがいた。
俺と同じくらいの体格である男は静かに佇みながら俺を見ている。
背後にいる紫髪の女は先ほどまでボロ雑巾になっていたクソ野郎にポーションを飲ませ回復させる。
そして青髪の女が親父殿の首が入った袋を、元気になったクソ野郎に渡した。
「こっちはメナスがなんとかする、あなたはそれを持ってツァーカムまで逃げなさい」
「オレに逃げろだと!」
クソ野郎は激昂するも、男が視線を向けただけで後ずさった。
どうやら目の前にいる男はそれだけの強さを秘めているようだ。
「テメェ、逃げたら殺すぞ」
クソ野郎に脅しを込めて距離を縮めようと足を踏み出した瞬間、悪寒を感じて咄嗟に回避体勢をとった。
さっきまで俺の頭があった箇所に、不可視の刃が通り過ぎていた。
速さだけならクソ野郎の方があったかもしれねぇが、こいつのはちょいと厄介だ。
なにせあまりにも動作がコンパクトで静かなせいで"起こり"が掴めなかった。
例えば殴るときに振りかぶるように、何かをしようとする前段階の行動がそれだ。
それが掴めないということは攻撃の予測ができないということであり、一撃が致命傷になる戦いにおいて厄介なことこの上ない。
「アンタ、本気で戦いなさい!」
ここでようやく女が口を出してきやがった。
「おい女ァ、こいつはなんだ!」
「種族は不明、性格も過去も不明。 知ってるのはメナスって名前と……30を超える刻印糸によるチートに、昔の転生者が作ったチート装備を持つ最強の男ってことよ!」
0
お気に入りに追加
39
あなたにおすすめの小説
ゲスいお嬢様的日常(仮)
胸の轟
ファンタジー
お気に入り登録ありがとうございます。すごく励みになります。
【乳首を吸うだけの簡単なお仕事です。経験不問】その広告を見た瞬間赤ちゃんになりました。うん、そんなことだと思ってたから悔しくなんてない(血涙)ごく普通の私は、ごく普通に授業サボったり、ごく普通に美少年の匂い嗅いだり、たまにバイオレンスしたりしてだらだら過ごします。
※たまに直してます
【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~
石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。
ありがとうございます
主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。
転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。
ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。
『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。
ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする
「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
Age43の異世界生活…おじさんなのでほのぼの暮します
夏田スイカ
ファンタジー
異世界に転生した一方で、何故かおじさんのままだった主人公・沢村英司が、薬師となって様々な人助けをする物語です。
この説明をご覧になった読者の方は、是非一読お願いします。
※更新スパンは週1~2話程度を予定しております。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
世界最強の勇者は伯爵家の三男に転生し、落ちこぼれと疎まれるが、無自覚に無双する
平山和人
ファンタジー
世界最強の勇者と称えられる勇者アベルは、新たな人生を歩むべく今の人生を捨て、伯爵家の三男に転生する。
しかしアベルは忌み子と疎まれており、優秀な双子の兄たちと比べられ、学校や屋敷の人たちからは落ちこぼれと蔑まれる散々な日々を送っていた。
だが、彼らは知らなかったアベルが最強の勇者であり、自分たちとは遥かにレベルが違うから真の実力がわからないことに。
そんなことも知らずにアベルは自覚なく最強の力を振るい、世界中を驚かせるのであった。
竜の契約者
ホワイトエンド
ファンタジー
一人の青年は魂の半分を失った------
1体の竜は肉体を失った--------
二つの魂は混ざり合い生まれ変わった-----
あの日、全てを失った彼はその身に宿した力を振るう
悪を裁くために
正義をまっとうするために
例え、歪んでいようとも
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる