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しおりを挟む長い、長い、夢を見ていた気がする。
ジャスミンは、そんな感覚に囚われていた。
「ジャスミン様、よかった。こちらにいらしたんですね」
「……」
ジャスミンは、ウェディングドレスを着て立ち尽くしていて、見知った使用人がジャスミンを見つけて安堵の表情をしていた。
(ここは……、戻って来たの?)
「大変なことになっているんです!」
「?」
「あ! それ、ジャスミン様のところにも届いたんですか?! な、中は? もう見られましたか?」
「えっと」
(これって、私が集めた浮気の証拠の数々よね? 見たも、何もないんだけど……。どうして、知っているのかしら?)
呼びに来た使用人の慌てっぷりと夢を長らく見ていたような感覚から、今がどの辺りなのかを思い返せていなかった。
「ジャスミン! ジャスミンは、いたのか?!」
「お父様」
「あぁ、よかった。見つかったんだな。……それを見たのか?」
「えっと」
「ジャスミン! よかった! あぁ、そんな物、持っていなくていいのよ」
母親は、ジャスミンが持っているものを汚らわしいと言わんばかりに叩き落してジャスミンを抱きしめていた。
(どうなっているの??)
ジャスミンは、わけがわからなくなっていて、周りについていけずにいた。
「結婚式は、取りやめにした。婚約も破棄にしたからな。可哀想に親友だと思って付き添い役にまで選んだのに婚約者と浮気していたなんて、気づかなかったとは……」
「結婚式が終わる前でよかったわ。終わった後だったら、もっと大変だったもの。可哀想に知らなかったのでしょう? 付き添い役になんて選ぶほど、あなたは親友だと心から思っていたのに」
「……」
両親だけでなくて、使用人やジャスミンの友達の令嬢たちもジャスミンの側に集まって泣いていた。
ジャスミンは、目をパチクリさせていた。
(えっと、つまり、浮気が知れ渡っているってこと……?)
しかも、ジャスミンが用意した証拠の数々を式が始まる前の会場で、誰かがばら撒いたようだ。
それにより、結婚式どころではなくなり、アーロは両親からどういうことだと責め立てられ、ミアはオークリーに怒鳴りつけられて、婚約破棄をすると言われたようだ。
ミアは、新婦の親友で付き添い役を引き受けておきながら、ジャスミンをボロクソにアーロと馬鹿にしている音声まで流されて、浮気していた二人は言い訳も何もなかった。
そんな会場から、ジャスミンを心配して両親や友達、使用人はジャスミンを探してくれていたようだ。
(えっと、どうなってるの??)
ジャスミンは、逃げずに戦うと決めてはいたが、それが拍子抜けする展開になっていて、頭が上手く動いていなかった。
(とりあえず、私があちらに行って、色々とやったから、ここの未来が変わったとか……?)
それこそ、ジャスミンの両親が何となく以前よりジャスミンに寄り添ってくれている気がする。家のために我慢しろとよく言う父親と自分もそうしてきたからと娘に同じ我慢を強いるような母親だったはずが、全然違っているのだ。
みんなが、ジャスミンを心配して泣いてくれたり、怒ってくれたりしているのだ。ジャスミンは、ありがたいとおもえてならなかった。
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