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しおりを挟むよくよく王太子の話を聞いていれば、マーセイディズにお妃教育をもっと頑張れ。無駄なことに時間もお金もかけずにやるべきことは勉強のみだと言っていただけなのだが、それは何が何でもしたくないマーセイディズはものの見事にスルーして、聞こえなかったことにした。
それこそ、トレイシーと仲良くなった時のまま、婚約してもなお上手く隠していて、猿呼ばわりするのは酷いと王太子にまで言わずとも、トレイシーの味方のままでいたら、まだ周りもここまでトレイシーの味方になることもなかったのだが、マーセイディズは其処まで頭が回らなかったようだ。
ずっと隠しておけばよかったと思うが、婚約できたことで浮かれてしまい、前々から誰よりも気に食わなかったトレイシーを馬鹿にできると思ってしまったのが悪かった。
だが、ずっと機会を伺って人を馬鹿にしようとしている人間が、王太子妃に相応しいと思うわけがないのだが、マーセイディズはそうは思わなかった。
自分の両親が、ずっとそうだったのだ。それなのに王太子の婚約者にマーセイディズがもっとも相応しいと言い続けたのを真に受けていたせいで、自分ほど相応しい者などいないのだと思っていた。
だからこそ、婚約できなかった令嬢たちが褒めちぎるのもやっと認める気になったのかとまで思っていたほどだった。
その上、ずっとらしくなく落ち込み続けるトレイシーを見て、優越感に浸っていた。それほどまでに王太子と婚約したかったのだと思うとそれに勝ったことがマーセイディズは嬉しくてたまらなかった。
「勝ったのは、私なのよ。邪魔させるもんですか。今更、あの女に負けるわけがないけど」
マーセイディズは、益々変な方向に頑張ることを始めていたが、王太子はというとあれだけ言ったのだから、流石に大丈夫だろうと思っていた。
「フィランダー殿下」
「マーセイディズにはよく言った。もう、同じことを言うな」
「……」
毎日のように報告やらに来るのが煩わしくなった王太子は、たった一度言っただけで、その後、来る者には……。
「わかっている。同じことを言うな」
「……」
そう言いながらも、少しずつマーセイディズはよくなっていっているものと王太子は思っていた。
それが、益々酷くなっているとは思うまい。この時、ちゃんと報告を聞いて再三に渡り直すようにマーセイディズのところに通っていたら、少しは違っていたかもしれない。
もっとも、マーセイディズはあの調子だが手に負えないと国王に話しても、わかってくれたかもしれないが、たった一度のみで婚約者に何もせずにいたことは、国王にしっかり報告されていて、それが大きく影響することになるとは思わなかったのだ。
「フィランダー殿下。婚約者にお会いになっていますか?」
「ん?」
「前回、お会いしてから、だいぶ経ちますが……」
「確かにあれから、経っているな」
今まで、報告をわかっていると言ってもしつこく言いに来るだけだったが、その時は別のことを言われて、王太子もそろそろ良い方向に改善されているかと思い、会うのを楽しみにしていたが、そこにいたのは、マーセイディズは王太子の従兄と猿女といるところだった。
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