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しおりを挟むニヴェスは、ショックから立ち直れずにいた。ニヴェスにとって小説は宝物だった。切っても切り離せないものとなっていた。
だが、アミールカレは妹に大事にしている婚約者のプレゼントを台無しにされたから元気がないままだと思っていた。
そのため、出かける度に何かとプレゼントしてくれようとしたりしたが、ニヴェスはそれに困った顔をすることが多かった。
それをアミールカレは、申し訳なく思っていると解釈していたようだが、ニヴェスとしてはそう言う物より、本を買い揃えたくなっていた。
確かに妹に取り上げられていて、アミールカレからの物も返すのだが、癪だからと捨てた物も多かった。その辺のことはショックではあるが、割合はほぼ小説の方に傾いている。ただ、捨てるならわかるが、ボロボロにしたことがショックでならなかったのだ。
その辺を察したマルチェッリーナとアデーレとベアトリーチェが、前にニヴェスが持っていたものではなくて、自分たちのお気に入りの本をプレゼントしてくれた。
「ありがとう」
「いいのよ」
「それを読んだら、語り合いましょうね」
ベアトリーチェからも、これでもかと本が届いた。ベアトリーチェからもあるだろうが、彼女の父親が娘とのわだかまりを解消してくれた恩人とでも思っているようで、奮発してくれたようだ。
それがまた凄かった。色んな国の言葉で翻訳されたもので揃えられていたのだ。それを読みたいがために語学にめっきり強くなった。
それに感心したのが、アミールカレだ。
「ニヴェスは、本が本当に好きなんだな」
どんなジャンルの本を読んでいるかをアミールカレは知らずに独学で語学を学ぶきっかけが本だったことにニヴェスを尊敬するような眼差しで見ていた。
それにニヴェスは、苦笑するしかなかった。色んな誤解しかなかったが、その誤解をニヴェスが解くことはなかった。
幼なじみたちも、そうだ。婚約者たちには、ひた隠しにしていた。何ならバレそうな時にお互いが庇い合うまでになっていた。
更にアデーレとアミールカレの妹も加わるようになり、次第に同じような本を愛読している女性は増えていった。
「新刊、読みました?」
「もちろん。読んだわ」
お茶会をしては、小説の話でもちきりになるほどだった。ニヴェスが、ずっとほしかった語りの場が出来上がっていた。
アミールカレの方は、相変わらずニヴェスを溺愛していて、結婚してからも変わることはなかった。
ニヴェスは、結婚してから小説より家族が大事になっていった。
どこで見かけてもニヴェスは仲睦まじい姿を見かけたと言われるようになり、格好いい旦那で羨ましいと言う夫人たちの殆どに言ってやりたかった。
ざまぁみろと。
羨ましがられるたび、ニヴェスは妹に心の中で感謝していた。誰もが、自分より可愛い子息と婚約したくないと言っていたが、月日が経った今、そんなことを誰も言っていなかったみたいに羨ましがる面々にニヴェスはそんなことを思っていたが、素知らぬ顔をしていた。
こうして、ニヴェスは幸せいっぱいの人生を謳歌することができたのだった。
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