歴史から消された皇女〜2人の皇女の願いが叶うまで終われない〜

珠宮さくら

文字の大きさ
33 / 50
『隠された皇女』

しおりを挟む

学び舎でおかしな勘違いが起こっていることを全く知らないまま、リーシーは忙しなく働いていた。

人の出入りが激しい時に居座る客はいない。それが落ち着く頃に現れるようになった人がちらほらいた。


(今日も来たわね)


「あー、小腹が空いてるんだ。いいか?」
「はい。こちらにどうぞ!」


身なりのいい若者が、そんなことを言いながら現れた。

身なりが良すぎて、お付きの者がいるくらいだ。1人で来たことがない。


(どこの子息だろ。こんなにここ来るより、もっと他のことすればいいのに)


小腹が空いたなら、家で食べればいいとすら思っていた。何なら、探るような目を向けられていて、それが嫌で仕方がなかったが、何も気づかないふりをして働いている。


「そちらは、どうされますか?」
「同じもので」
「かしこまりました」


お付きの人にも必ず声をかけた。ただ座っているよりは良いかと思っているのと。何も食べずに居座られても困るからだ。

リーシーは、注文を義父に伝えに行った。

するとぼそっと常連たちが、こんなことを言葉にした。


「この前からよく見かけるよな?」
「あぁ、よく見るぜ。どっかのボンボンだよな?」


常連は、こそこそと話をした。身なりが良すぎて、追い出すに追い出せなかった。冷やかしではなく、明らかにリーシー狙いなのだ。


(う~ん、狙われているより、探られている気がするんだよね)


リーシーは、そう見ていた。

今も、消えたリーシーの後ろ姿を目で追い、他の客と目が合うと視線を戻した。そうなるとお返しとばかりにお付きに睨まれるのだ。殺気立ったものに常連の方が目を離す。怖いのだ。でも、わかっていて、同じことを繰り返している。


(本当に何で通ってるんだ?)


リーシーは、目的がよくわからなくて追い払うこともできずにいた。

そんなところにいつもなら、一緒にならないのだが、別の若い子息が現れた。

それにリーシーは、目を輝かせた。いい人とか、そんなのではないが、この状況を打破してくれそうな人物が来てのことだ。


「リーシー。飯を頼む」


リーシーと名前をわざわざその子息が呼ぶのに先ほどの身なりのよい若者が反応した。

常連客も、名前を呼んだのを知ってるのでなければ、過剰反応していたところだ。


(ナイス! いいところの子息だって知られてるから、他にちょっかいかけられなくなるから、名前呼びにしてくれって言って正解だったわ!)


そう、厄介な貴族の坊ちゃん避けに彼を使っている。彼の名前は、ハオラン。明らかに庶民に合わせようとしている先ほどの若様よりも、しっくりくるのが、ハオランだ。

無理をし過ぎてはいない。元から、不用意に着飾ったりしない人だが、それでいて、それなりのものを身にまとうようになった。

そこも、リーシーにはポイントが高めだった。最初は、着られれば何でもいいみたいな格好から、変わったのだ。


(誰かしらにアドバイスもらったのよね)


そこから、ずっと気を付けているのだから、武官を目指すにしても、身だしなみも大事だと気づいたようだ。


「いらっしゃい。すぐにご用意しますね。……あ、また、訓練で怪我したんですか?」
「あぁ、でも、大したことない」
「駄目ですよ。こういう怪我を放置しちゃ。薬箱取って来ますね」
「あぁ、なら、頼む」
「はい!」


リーシーは、バタバタと駆けて行った。


「やっぱ、お似合いだよな」
「だな」


常連客のほとんどが、この2人を何気に応援していた。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

なんでも奪っていく妹に、婚約者まで奪われました

ねむ太朗
恋愛
伯爵令嬢のリリアーナは、小さい頃から、妹のエルーシアにネックレスや髪飾りなどのお気に入りの物を奪われてきた。 とうとう、婚約者のルシアンまでも妹に奪われてしまい……

【完結】先に求めたのは、

たまこ
恋愛
 ペルジーニ伯爵の娘、レティは変わり者である。  伯爵令嬢でありながら、学園には通わずスタマーズ公爵家で料理人として働いている。  ミゲル=スタマーズ公爵令息は、扱いづらい子どもである。  頑固者で拘りが強い。愛想は無く、いつも不機嫌そうにしている。  互いを想い合う二人が長い間すれ違ってしまっているお話。 ※初日と二日目は六話公開、その後は一日一話公開予定です。 ※恋愛小説大賞エントリー中です。

【完結】私の初恋の人に屈辱と絶望を与えたのは、大好きなお姉様でした

迦陵 れん
恋愛
「俺は君を愛さない。この結婚は政略結婚という名の契約結婚だ」 結婚式後の初夜のベッドで、私の夫となった彼は、開口一番そう告げた。 彼は元々の婚約者であった私の姉、アンジェラを誰よりも愛していたのに、私の姉はそうではなかった……。 見た目、性格、頭脳、運動神経とすべてが完璧なヘマタイト公爵令息に、グラディスは一目惚れをする。 けれど彼は大好きな姉の婚約者であり、容姿からなにから全て姉に敵わないグラディスは、瞬時に恋心を封印した。 筈だったのに、姉がいなくなったせいで彼の新しい婚約者になってしまい──。 人生イージーモードで生きてきた公爵令息が、初めての挫折を経験し、動く人形のようになってしまう。 彼のことが大好きな主人公は、冷たくされても彼一筋で思い続ける。 たとえ彼に好かれなくてもいい。 私は彼が好きだから! 大好きな人と幸せになるべく、メイドと二人三脚で頑張る健気令嬢のお話です。 ざまあされるような悪人は出ないので、ざまあはないです。 と思ったら、微ざまぁありになりました(汗)

【完結】精霊姫は魔王陛下のかごの中~実家から独立して生きてこうと思ったら就職先の王子様にとろとろに甘やかされています~

吉武 止少
恋愛
ソフィアは小さい頃から孤独な生活を送ってきた。どれほど努力をしても妹ばかりが溺愛され、ないがしろにされる毎日。 ある日「修道院に入れ」と言われたソフィアはついに我慢の限界を迎え、実家を逃げ出す決意を固める。 幼い頃から精霊に愛されてきたソフィアは、祖母のような“精霊の御子”として監視下に置かれないよう身許を隠して王都へ向かう。 仕事を探す中で彼女が出会ったのは、卓越した剣技と鋭利な美貌によって『魔王』と恐れられる第二王子エルネストだった。 精霊に悪戯される体質のエルネストはそれが原因の不調に苦しんでいた。見かねたソフィアは自分がやったとバレないようこっそり精霊を追い払ってあげる。 ソフィアの正体に違和感を覚えたエルネストは監視の意味もかねて彼女に仕事を持ち掛ける。 侍女として雇われると思っていたのに、エルネストが意中の女性を射止めるための『練習相手』にされてしまう。 当て馬扱いかと思っていたが、恋人ごっこをしていくうちにお互いの距離がどんどん縮まっていってーー!? 本編は全42話。執筆を終えており、投稿予約も済ませています。完結保証。 +番外編があります。 11/17 HOTランキング女性向け第2位達成。 11/18~20 HOTランキング女性向け第1位達成。応援ありがとうございます。

私が、良いと言ってくれるので結婚します

あべ鈴峰
恋愛
幼馴染のクリスと比較されて悲しい思いをしていたロアンヌだったが、突然現れたレグール様のプロポーズに 初対面なのに結婚を決意する。 しかし、その事を良く思わないクリスが・・。

真実の愛のお相手様と仲睦まじくお過ごしください

LIN
恋愛
「私には真実に愛する人がいる。私から愛されるなんて事は期待しないでほしい」冷たい声で男は言った。 伯爵家の嫡男ジェラルドと同格の伯爵家の長女マーガレットが、互いの家の共同事業のために結ばれた婚約期間を経て、晴れて行われた結婚式の夜の出来事だった。 真実の愛が尊ばれる国で、マーガレットが周囲の人を巻き込んで起こす色んな出来事。 (他サイトで載せていたものです。今はここでしか載せていません。今まで読んでくれた方で、見つけてくれた方がいましたら…ありがとうございます…) (1月14日完結です。設定変えてなかったらすみません…)

【完結】赤い薔薇なんて、いらない。

花草青依
恋愛
婚約者であるニコラスに婚約の解消を促されたレイチェル。彼女はニコラスを愛しているがゆえに、それを拒否した。自己嫌悪に苛まれながらもレイチェルは、彼に想いを伝えようとするが・・・・・・。 ■《夢見る乙女のメモリアルシリーズ》1作目の外伝 ■拙作『捨てられた悪役令嬢は大公殿下との新たな恋に夢を見る』のスピンオフ作品。続編ではありません。 ■「第18回恋愛小説大賞」の参加作品です ■画像は生成AI(ChatGPT)

やっかいな幼なじみは御免です!

ゆきな
恋愛
有名な3人組がいた。 アリス・マイヤーズ子爵令嬢に、マーティ・エドウィン男爵令息、それからシェイマス・パウエル伯爵令息である。 整った顔立ちに、豊かな金髪の彼らは幼なじみ。 いつも皆の注目の的だった。 ネリー・ディアス伯爵令嬢ももちろん、遠巻きに彼らを見ていた側だったのだが、ある日突然マーティとの婚約が決まってしまう。 それからアリスとシェイマスの婚約も。 家の為の政略結婚だと割り切って、適度に仲良くなればいい、と思っていたネリーだったが…… 「ねえねえ、マーティ!聞いてるー?」 マーティといると必ず割り込んでくるアリスのせいで、積もり積もっていくイライラ。 「そんなにイチャイチャしたいなら、あなた達が婚約すれば良かったじゃない!」 なんて、口には出さないけど……はあ……。

処理中です...