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『隠された皇女』
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しおりを挟む学び舎でおかしな勘違いが起こっていることを全く知らないまま、リーシーは忙しなく働いていた。
人の出入りが激しい時に居座る客はいない。それが落ち着く頃に現れるようになった人がちらほらいた。
(今日も来たわね)
「あー、小腹が空いてるんだ。いいか?」
「はい。こちらにどうぞ!」
身なりのいい若者が、そんなことを言いながら現れた。
身なりが良すぎて、お付きの者がいるくらいだ。1人で来たことがない。
(どこの子息だろ。こんなにここ来るより、もっと他のことすればいいのに)
小腹が空いたなら、家で食べればいいとすら思っていた。何なら、探るような目を向けられていて、それが嫌で仕方がなかったが、何も気づかないふりをして働いている。
「そちらは、どうされますか?」
「同じもので」
「かしこまりました」
お付きの人にも必ず声をかけた。ただ座っているよりは良いかと思っているのと。何も食べずに居座られても困るからだ。
リーシーは、注文を義父に伝えに行った。
するとぼそっと常連たちが、こんなことを言葉にした。
「この前からよく見かけるよな?」
「あぁ、よく見るぜ。どっかのボンボンだよな?」
常連は、こそこそと話をした。身なりが良すぎて、追い出すに追い出せなかった。冷やかしではなく、明らかにリーシー狙いなのだ。
(う~ん、狙われているより、探られている気がするんだよね)
リーシーは、そう見ていた。
今も、消えたリーシーの後ろ姿を目で追い、他の客と目が合うと視線を戻した。そうなるとお返しとばかりにお付きに睨まれるのだ。殺気立ったものに常連の方が目を離す。怖いのだ。でも、わかっていて、同じことを繰り返している。
(本当に何で通ってるんだ?)
リーシーは、目的がよくわからなくて追い払うこともできずにいた。
そんなところにいつもなら、一緒にならないのだが、別の若い子息が現れた。
それにリーシーは、目を輝かせた。いい人とか、そんなのではないが、この状況を打破してくれそうな人物が来てのことだ。
「リーシー。飯を頼む」
リーシーと名前をわざわざその子息が呼ぶのに先ほどの身なりのよい若者が反応した。
常連客も、名前を呼んだのを知ってるのでなければ、過剰反応していたところだ。
(ナイス! いいところの子息だって知られてるから、他にちょっかいかけられなくなるから、名前呼びにしてくれって言って正解だったわ!)
そう、厄介な貴族の坊ちゃん避けに彼を使っている。彼の名前は、ハオラン。明らかに庶民に合わせようとしている先ほどの若様よりも、しっくりくるのが、ハオランだ。
無理をし過ぎてはいない。元から、不用意に着飾ったりしない人だが、それでいて、それなりのものを身にまとうようになった。
そこも、リーシーにはポイントが高めだった。最初は、着られれば何でもいいみたいな格好から、変わったのだ。
(誰かしらにアドバイスもらったのよね)
そこから、ずっと気を付けているのだから、武官を目指すにしても、身だしなみも大事だと気づいたようだ。
「いらっしゃい。すぐにご用意しますね。……あ、また、訓練で怪我したんですか?」
「あぁ、でも、大したことない」
「駄目ですよ。こういう怪我を放置しちゃ。薬箱取って来ますね」
「あぁ、なら、頼む」
「はい!」
リーシーは、バタバタと駆けて行った。
「やっぱ、お似合いだよな」
「だな」
常連客のほとんどが、この2人を何気に応援していた。
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