婚約者と兄、そして親友だと思っていた令嬢に嫌われていたようですが、運命の人に溺愛されて幸せです

珠宮さくら

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エリシュカは跡継ぎの勉強を頑張っていたが、王子であるフェルディナンドも婿入りするために何かと頑張っていた。

義両親や義姉と仲良くなるのは、すぐのことだったが、その速度にもエリシュカは驚いた。

だが、家族が彼と楽しそうにしているのを見るのは、とても楽しかった。それこそ、馴染み方が凄かったのだ。

そこに共通してエリシュカの存在が大きくしめていることにエリシュカは気づいてはいなかったが。


「何だか、エヴシェンより息子として、しっくりくるわね」


ぽつりとエリシュカがいないところで母親がそんなことを言った。それに夫は、頷いていた。


「確かに馴染み具合が半端ないな」
「弟も、エリシュカに優しくして、お父様みたいに一人の令嬢に優しかったら、文句なんてなかったんだけどね。本命以外にモテたからって、どうということもないでしょうに」


父親も、フェルディナンドも、浮気なんてありえないという顔をしていた。ここに王太子がいても、同じようにありえないと即答していたことだろう。

浮気なんてして、本命に一生話しかけてもらえなくなるなんて、耐えられないとばかりに苦い顔をしていた。その顔が、とても似ていて本当に親子のように見えていたが、ユスティーナはそのことを口にすることはなかった。


「エリシュカと出かけるのよね?」
「買い物でもしようかと思っています」
「それなら、エリシュカのセンスは抜群よ」
「この国の流行りを先取りするのは、エリシュカだもの」


そんなことを聞いてフェルディナンドは驚いていた。驚いた表情は、エリシュカによく似ていると両親やユスティーナが思っていることにフェルディナンドは気づいていなかった。


「流行りの最先端は、王太子殿下だと思っていましたが……。もしや、あれも?」
「私が、頼んでエリシュカにそれとなくアドバイスしてもらっているのよ」


フェルディナンドが、この国に留学しに来たのも、パヴェルの流行りが他の国よりも素晴らしいから選んだことが大きかった。


「お待たせしました」


エリシュカは、そんな会話がなされていたことも知らずに買い物に出かけることになった。それを両親も姉も快く送り出してくれた。








やたらとフェルディナンドがアドバイスを求めてくるので、エリシュカは不思議に思いつつも、全力で彼に似合う物を選んでいた。

それこそ、義兄となる王太子に負けず劣らずな美形のフェルディナンドだ。しかも、自分の婚約者ともなると何の遠慮もいらないかと思うほどだったが、それでもエリシュカの全力ではなかったようだ。

こうして、エリシュカは両親や姉たちに負けず劣らず婚約者との仲睦まじい姿を至るところで目撃されることになり、羨ましがられるようになるまで、あっという間のことだった。

それこそ、エリシュカは可愛らしい容姿なままとなり、子供が生まれても若々しいままとなって、フェルディナンドはそんな妻と子供たちを溺愛してやまなかった。

妻に負けじと若々しいフェルディナンドは、愛してやまない妻の笑顔が曇ることない日々を送れるように気を配り続けていた。

そのため、エリシュカは笑顔溢れる毎日を過ごし続けて、幸せいっぱいの人生を謳歌することができたのだった。







そんなエリシュカに負けず劣らず姉のユスティーナも王太子妃となってから、益々美しい美貌に磨きがかかることになり、王太子も更に洗練された見目麗しい容姿となって、世の人々にもっとも親しまれて愛される国王となった。

そんな二人の着ている物や持ち物について、こっそりとアドバイスをしていたのがエリシュカだったが、それが流行り続けていることにエリシュカの助言があるからではなくて、それを着こなす姉たちが凄いと思っていた。

そんなエリシュカもまた多くの人たちに溺愛されていることに気づいていなかった。

一番溺愛しているのが、フェルディナンドなことにだけは気づいていたようだが。







ちなみにヤルシルとエヴシェンは、相変わらずつるんでいたようだが、自分たちのできなさっぷりを他人のせいにばかりしていて、良縁に恵まれることはなかったようだ。

そんな二人の意気投合するのは、いつもエリシュカに対する悪口だった。

かたや元婚約者のことであり、かたや妹のことを悪く言ってばかりいて、自分たちにはまるで非がないかのように言う二人に呆れた顔をして女性が近づかなくなっていたが、その意味すら彼らはわかっていなかった。

駄目男すぎて関わりたくないと思われていることに一生気づくことはなかったようだ。何ともおめでたい思考をしていて、そっくりな二人が意気投合しすぎるせいで、堂々巡りな思考から抜け出すことは、なかったようだ。


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