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しおりを挟むそんなことがあって、エリシュカがフェルディナンドと婚約することになるのも、割とすぐのことだった。
エリシュカに再び笑顔を取り戻すことになったのだ。その笑顔は以前にも増して眩い輝きを放っていた。それが、全てを物語っていたのだ。
婚約したことで、たくさんの人たちが喜んでくれて、祝福してくれた。
一番喜んでくれたのは、お互いの両親とユスティーナとその婚約者の王太子だった。
喜んでくれなかったのは、フェルディナンドが隣国に戻って来るものと思っていた彼の元婚約者と新しい婚約者の子息くらいだった。別に喜んでくれずともいいのだが、喜んでくれない理由が何とも酷いのだ。
まぁ、ヤルシルやラディスラヴァやエヴシェンも、どう思っているかと聞けば祝福なんて、すんなりしてくれるとは思えないが、それよりも酷い理不尽な理由で祝福できないのだから、相容れない何かが存在していた。
そのため、フェルディナンドの両親はエリシュカを連れて挨拶に来るのは、もう少し後がいいと言っていて、その理由を手紙で送って来たのだ。
それは、エリシュカが婚約者となることに関して何の不満もないが、国に来るとフェルディナンドたちが面倒なことになると伝えるためだった。
それを読んでフェルディナンドはため息をついていた。彼はかいつまんで手紙のことをエリシュカにすぐさま話してくれた。
「怒ってるんですか?」
「そうみたいだ。私が、戻ったら、とりなしてもらう気満々なようだ。そんなことをあてにされても困るんだがな」
フェルディナンドの困った顔を見てエリシュカも確かに困るなと思って苦笑していた。フェルディナンドの元婚約者が、フェルディナンドにしてほしいことがあるらしく待ち構えているから、それが落ち着くまで戻って来ない方がいいということのようだ。
そういう人がいることにもエリシュカはだいぶ慣れたつもりだが、やはり理解しきれなかった。
「世の中、不思議なことばかりだな。浮気していると濡れ衣をきせておいて、その謝罪もせずに婚約するのに手を貸してくれたからとさらなる期待をされるんだ。どうして、そんなことをしてもらえるとは思うんだろうな」
「私も相思相愛だから、浮気しているものと思っていましたが、どうやら浮気している方々は意気投合して、心地の良いだけの相手と一緒にいたいだけで、本当に好いているからではないことの方が多いみたいですね。何より幼なじみは、私と婚約している子息で、私が好いている相手だと思って奪っただけで、好きでもなかったようですし」
エリシュカが尽くしているのを見て、そこまでするほど好きな相手だとラディスラヴァは思って、あんなことをしたようだ。
それが、実は好きになれる要素が皆無だとエリシュカが思っているとわかって速攻で婚約破棄をして、新しい相手を見つけようとしていたことを知って、呆れるばかりだった。
「確かにそうだな。こっちが、気にかけることでもないのに手を貸しすぎたせいで、さらなる迷惑を被ることになるんだから、ほっとくのが一番だったのかも知れないな」
そんなことを言いつつ、それでも気になってしまったところが一緒なことに笑うしかなかった。
それこそ、祝福だけでもしたいからと言って、こちらに来て、フェルディナンドが駄目でもエリシュカに取り入って、どうにかしてもらおうという考えもないようだ。あくまでも、自分たちのところに来て話を聞いてほしいらしい。どこまで、上から目線なのだろうか。
だが、そんな人たちがそのままでいられるはずがない。余裕がなくなったら形振り構わずにこちらに会いに来るのではないかと身構えていたが、そんなことにはならなかったことにエリシュカたちは、ホッとしていた。
本当に何とも奇妙なことだ。
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