婚約者と兄、そして親友だと思っていた令嬢に嫌われていたようですが、運命の人に溺愛されて幸せです

珠宮さくら

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エリシュカは、ヤルシルたちが慌ただしくいなくなったのを見て、こう思っていた。彼らは、クラスを間違えていたのだと。それに気づいて恥ずかしくなって、あんなに早くいなくなったのだと思って、何とも言えない顔をしていた。

それこそ、別のクラスになったことにまだ慣れていないのだとすら思っていたが、毎回何かと来ていて、エリシュカに喧しく怒鳴りつけていたことに本当に全く気づいていなかっただけとは思ってはいなかった。

他の生徒たちも放置していたのは、エリシュカがどうするのかを見たかったからに過ぎなかったが、その辺のことにもエリシュカは気づく余裕はなかった。


「エリシュカ嬢。よければ、後で教えましょうか?」


走り去って行く元婚約者と幼なじみにエリシュカは首を傾げていたら、話しかけて来た男性がそんなことを言ってくれたことに久々に笑顔となった。


「いいんですか?」
「っ、えぇ、私でよければ」
「ありがとうございます!」
「っ、」


エリシュカは、目をキラキラと輝かせて、満面の笑みと共にお礼を言った。

それを見て、他の子息たちも羨ましがり、にこにこと笑うエリシュカを見て、悔しそうにしたのは令嬢たちも同じだった。

それでも、誰も彼に文句や不満を口にすることはなかった。彼が、みんなは誰かを知っていたからだろう。


「いいところを持って行かれたな」
「本当だな」


そう言いながらも、エリシュカが久しぶりに笑っているのを見て、教室の中の雰囲気も柔らかくなっていた。

エリシュカの姉は、美人すぎるのと王太子が婚約者なこともあり、早々に近づける人物ではなかったが、エリシュカは婚約破棄となり、更には跡継ぎとなったことで、跡継ぎ以外の子息たちがエリシュカを狙っている者が何かといた。

何より、愛らしいエリシュカのことを前々から気にかけている者は多かったのだ。元婚約者が不甲斐なくても一途に支えようとしていたというのにあの男には美人ではないというだけで、エリシュカの良さがまるでわかっていなかったのだ。

その挙げ句、エリシュカの幼なじみで親友だと思っていた令嬢に奪われることになって、健気にも相思相愛だと思って婚約させてほしいと頭を下げたのだ。そんな令嬢をほっとくわけがない。

もっとも、他の令嬢がそれをしたなら嫌がらせだと誰もが思ったことだったが、エリシュカがやったとわかって嫌がらせではなくて、本気でそう思ってやったのだと思う者が殆どだった。


「やっぱりエリシュカ様が笑っているのを見ると和むわね」
「そうだな。あの笑顔を見ているとこちらまで笑顔になる」


そんな風に周りに思われていることも知らず、エリシュカは久々に周りをちゃんと認識した。周りの生徒たちも、何やらにこにことしているのを見て、エリシュカは嬉しそうにした。

それこそ、エリシュカにつられて笑っているのだと思ってもいないエリシュカは、呑気なものだった。

そんなほんわかムードのところに先生がやってきて、殺伐とした雰囲気ではないことに何があったんだと思っていたようだが、エリシュカがへにゃっと笑っているのを見て、何やら納得したようだ。

それこそ、雰囲気がどうにも悪いことに先生も、どうしたものかと頭を悩ませていたが、エリシュカが笑っているだけで呆気なく解決することに苦笑していた。

何があったかの詳しいことは聞く気はないが、この状態が続くことを先生だけでなくて、みんなが思っていた。殺伐とした中で、勉強していても、忍耐力が鍛えられるが、物凄く疲れるのだ。変な緊張感の中で勉強したので、ここ最近の授業の内容が上手く思い出せない者たちが多かった。

だが、ここから、そんなことが起こることはなかった。


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