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しおりを挟むそんなことを繰り返すうちにヤルシルとラディスラヴァは、みんなから笑いものにされるようになっていた。
あちらが好き勝手言うのをやめないことに対抗して、周りも同じように思っていることを口にし始めたのだ。
「恥ずかしくないのかしらね」
「あら、恥ずかしいと思ったら、あんなことできないわよ」
そんな風に言っては、二人を見て色んな人たちが笑うのだ。
それも、至るところで笑われることになって、流石の二人も自分たちが笑われていると気づいたようだ。
「何で、こんなにも笑われるのよ!?」
「あの女に違いない」
ラディスラヴァは、ヤルシルの言葉にハッとした。
「そうね。エリシュカが何かしているに違いないわ」
「みんなが、こぞって無視するのも、あいつが何かしているんだろう。跡継ぎになったからって、図に乗っているんだな」
「信じられないわ。エヴシェン様みたいなお兄さんがいるのに跡継ぎになろうだなんて、どうかしているとしか思えないわ。その上、私たちまで、笑いものにするなんて許せないわ」
「あぁ、そうだな。文句を言ってやらないと気がおさまらないな」
自分たちの話を唯一聞いてくれるエヴシェンが跡継ぎではなくなったことで、最近では話すこともしなくなってしまったことも、全てエリシュカのせいだと二人は思っていた。
「それにお母さんも、お茶会にもパーティーにも同じように呼ばれなくなったと嘆いていたわ。私たちだって、除け者にしているみたいだし、絶対にエリシュカが親や周りにあることないこと言っているせいに決まってるわ!」
「そこまでしているのか?! 信じられないな」
彼らは自分たちが何かしたからではなくて、他から無視されるのも、みんなエリシュカが裏で暗躍しているからだと思って疑わなかったようだ。
それこそ、エリシュカのことを婚約破棄する前から散々なことを言って邪魔者扱いされていたことにも気づいておらず、迷惑ばかりをかけていたことの自覚もないラディスラヴァとその母親の酷さをヤルシルは知らなかったようだ。
ヤルシルの両親は、パーティーにも、お茶会にも、呼ばれていても極力出ないようにしていた。息子がしでかしたことで、そういうところに出る気になれなかったのだ。
それこそ、一人息子なこともあり、着々と跡継ぎを親戚の家から養子にできないかと動いているところだが、ヤルシルはそれに全く気づいていなかった。
散々なまでに恥を晒している自覚がないせいで、さらに恥をかいている状態なことに彼らの両親は気づいていなかった。
ラディスラヴァの母親は娘にそっくりで、その父親はそんな妻と娘に愛想を尽かしていて、よそに愛人を囲っているようで、殆ど家にも寄り付かなくなっているせいで、恥の上塗りをしていることにも気づいていないようだ。
忙しくしているエリシュカにどうにかしろと騒がしくするようになるのも、それからすぐのことだった。
そんな二人のことなどお構いなしにエリシュカは勉強に集中していた。
「ちょっと! 聞いてるの?!」
「おい、無視するな!」
「……」
二人が、エリシュカにそんなことを言うのは、いつものことだった。
だが、毎回凄い集中力を発揮しているエリシュカは、騒がしくしている二人のことなど存在していないかのようにしていた。
それに習うかのように他の面々も、ヤルシルとラディスラヴァを同じように無視していた。
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