上 下
33 / 52

33

しおりを挟む

家族に嫌味だと言われたことで、エリシュカはいたたまれない顔をし始めていた。


「嫌味でしたか? 私、そんなつもりはなくて、その本当に邪魔にだけはならないようにと思っていただけなのですが……」


エリシュカは、またも余計なことをしたのだと思ったようでしょんぼりとしていた。最近は、よかれと思っていることが空回りしすぎていて、エリシュカは落ち込むことが多かった。

エヴシェンは、それを聞いて不愉快そうにしていた。


「馬鹿にしたのも自覚がないのか。本当に最悪もいいところだな。きちんと謝罪しろ」
「必要ないわ」
「姉さん。そうやって、エリシュカを甘やかすから……」
「ユスティーナの言う通りだ。そんな奴らに謝罪する必要はない」


エヴシェンは、家族がまたもエリシュカの味方になることに眉を顰めていた。それこそ、甘やかしていると言わんばかりだった。


「エヴシェン。あなたこそ、エリシュカに謝罪するべきよ。それにエリシュカの元婚約者に肩入れするのも、同じようなことをあなたがしているからだと耳にしたわ」
「っ、」
「同じようなこと?」


どうやら、エヴシェンは父親譲りの美形でモテることを理由にして、婚約者よりも何かとチヤホヤしてくれる令嬢たちと何かと一緒にいたようだ。

そのため、何かとヤルシルたちの方が正しいかのように言って、エリシュカを批難していたようだ。悪いのは、エリシュカやエヴシェンの婚約者の令嬢だと思わせたかったのだろう。


「今は、私のことではなくてエリシュカのことだ! あんなことをしておいて、そのままにするなんて……」
「エリシュカに関しては、謝罪は不要だと言っている。そんなことをしたら、あちらをのさばらせるだけだ」
「それよりも、婚約者だけを大事にして、他の令嬢たちと仲良くしすぎるのを今すぐやめなさい」
「っ、」


エヴシェンは、それこそ誰にも迷惑かけていないと言っていたが、両親やユスティーナにそんなことをしておいて迷惑しかかけられていないと言われていたが、やめる気はなかったようだ。

エリシュカはというと兄が複数の令嬢と仲良くしていることを知って何とも言えない顔をしていた。婚約者がいるのに他の令嬢と仲良くする必要などないはずだ。

それこそ、兄の婚約者の令嬢とはエリシュカだけでなくて、ユスティーナも仲良くしているのだ。義理の姉妹になれることを密かに喜んでいたが、もしかすると本音ではなかったのかも知れない。

エリシュカは、段々と見聞きしているものが、本当にその通りに思われているのかがわからなくなってきていて、ため息をつきたくなっていた。

エリシュカの瞳がきらきらと輝くことも減っていた。暗い表情をすることが増えたエリシュカを周りは心配するようになっていった。

その頃には、毎月の楽しみの買い物にも赴くことが減っていた。

家族みんなで笑い合うことも減ってきていた。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私が我慢する必要ありますか?【2024年12月25日電子書籍配信決定しました】

青太郎
恋愛
ある日前世の記憶が戻りました。 そして気付いてしまったのです。 私が我慢する必要ありますか? ※ 株式会社MARCOT様より電子書籍化決定! コミックシーモア様にて12/25より配信されます。 コミックシーモア様限定の短編もありますので興味のある方はぜひお手に取って頂けると嬉しいです。 リンク先 https://www.cmoa.jp/title/1101438094/vol/1/

婚約破棄宣言は別の場所で改めてお願いします

結城芙由奈 
恋愛
【どうやら私は婚約者に相当嫌われているらしい】 「おい!もうお前のような女はうんざりだ!今日こそ婚約破棄させて貰うぞ!」 私は今日も婚約者の王子様から婚約破棄宣言をされる。受け入れてもいいですが…どうせなら、然るべき場所で宣言して頂けますか? ※ 他サイトでも掲載しています

貴方が側妃を望んだのです

cyaru
恋愛
「君はそれでいいのか」王太子ハロルドは言った。 「えぇ。勿論ですわ」婚約者の公爵令嬢フランセアは答えた。 誠の愛に気がついたと言われたフランセアは微笑んで答えた。 ※2022年6月12日。一部書き足しました。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。  史実などに基づいたものではない事をご理解ください。 ※話の都合上、残酷な描写がありますがそれがざまぁなのかは受け取り方は人それぞれです。  表現的にどうかと思う回は冒頭に注意喚起を書き込むようにしますが有無は作者の判断です。 ※更新していくうえでタグは幾つか増えます。 ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

強い祝福が原因だった

恋愛
大魔法使いと呼ばれる父と前公爵夫人である母の不貞により生まれた令嬢エイレーネー。 父を憎む義父や義父に同調する使用人達から冷遇されながらも、エイレーネーにしか姿が見えないうさぎのイヴのお陰で孤独にはならずに済んでいた。 大魔法使いを王国に留めておきたい王家の思惑により、王弟を父に持つソレイユ公爵家の公子ラウルと婚約関係にある。しかし、彼が愛情に満ち、優しく笑い合うのは義父の娘ガブリエルで。 愛される未来がないのなら、全てを捨てて実父の許へ行くと決意した。 ※「殿下が好きなのは私だった」と同じ世界観となりますが此方の話を読まなくても大丈夫です。 ※なろうさんにも公開しています。

<完結> 知らないことはお伝え出来ません

五十嵐
恋愛
主人公エミーリアの婚約破棄にまつわるあれこれ。

【12/29にて公開終了】愛するつもりなぞないんでしょうから

真朱
恋愛
この国の姫は公爵令息と婚約していたが、隣国との和睦のため、一転して隣国の王子の許へ嫁ぐことになった。余計ないざこざを防ぐべく、姫の元婚約者の公爵令息は王命でさくっと婚姻させられることになり、その相手として白羽の矢が立ったのは辺境伯家の二女・ディアナだった。「可憐な姫の後が、脳筋な辺境伯んとこの娘って、公爵令息かわいそうに…。これはあれでしょ?『お前を愛するつもりはない!』ってやつでしょ?」  期待も遠慮も捨ててる新妻ディアナと、好青年の仮面をひっ剥がされていく旦那様ラキルスの、『明日はどっちだ』な夫婦のお話。    ※なんちゃって異世界です。なんでもあり、ご都合主義をご容赦ください。  ※新婚夫婦のお話ですが色っぽさゼロです。Rは物騒な方です。  ※ざまあのお話ではありません。軽い読み物とご理解いただけると幸いです。 ※コミカライズにより12/29にて公開を終了させていただきます。

(完)貴女は私の全てを奪う妹のふりをする他人ですよね?

青空一夏
恋愛
公爵令嬢の私は婚約者の王太子殿下と優しい家族に、気の合う親友に囲まれ充実した生活を送っていた。それは完璧なバランスがとれた幸せな世界。 けれど、それは一人の女のせいで歪んだ世界になっていくのだった。なぜ私がこんな思いをしなければならないの? 中世ヨーロッパ風異世界。魔道具使用により現代文明のような便利さが普通仕様になっている異世界です。

公爵令嬢の辿る道

ヤマナ
恋愛
公爵令嬢エリーナ・ラナ・ユースクリフは、迎えた5度目の生に絶望した。 家族にも、付き合いのあるお友達にも、慕っていた使用人にも、思い人にも、誰からも愛されなかったエリーナは罪を犯して投獄されて凍死した。 それから生を繰り返して、その度に自業自得で凄惨な末路を迎え続けたエリーナは、やがて自分を取り巻いていたもの全てからの愛を諦めた。 これは、愛されず、しかし愛を求めて果てた少女の、その先の話。 ※暇な時にちょこちょこ書いている程度なので、内容はともかく出来についてはご了承ください。 追記  六十五話以降、タイトルの頭に『※』が付いているお話は、流血表現やグロ表現がございますので、閲覧の際はお気を付けください。

処理中です...