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しおりを挟むヤルシルは、とにかく自分よりできた令嬢が好みではないようだ。なのに至れり尽くせりしすぎて、自分よりすぐにでもできるようになったエリシュカが疎ましくて仕方がなかったようだが、努力を惜しむことが苦ではないエリシュカにとって、やりたいことをちょっと挫折でグチグチと言い訳してやらなくなる人の方が理解できなかった。
そんなことで怒られることになるとは、エリシュカは思っていなかったが、他の人なら激怒しているところだったはずだ。
彼は、できない言い訳が多く、その分を必死にやろうと思う子息ではなかったのだ。成績も、エリシュカにヤマを張ってもらって、それしかしないのに成績が少しでもエリシュカの方がいいと怒鳴り散らすのだ。
それなのに至れり尽くせりにしていたことで、エリシュカが彼にも周りにも、ヤルシルをそこまでして好いていると勘違いされていることには全く気づいていなかった。
そのため、長らくヤルシルのことで、エリシュカのコアなファンたちは、あぁいう子息が好みなのだと思ってしまったようで、前のように引き離そうとすることはなかった。
「彼に尽くしていると聞いていたのに」
「なんてことなの。そこまでされて、浮気していたと言いがかりを格上の家の婚約者に言うなんて」
「信じられないよな」
それこそ、学園の中では普通なようにできるようにと配慮されていたこともあり、こんなことになったようなところもあるも、それでエリシュカが婚約破棄となったことに怒りをあらわにする者は多かった。
「しかも、浮気しているのは、そんなこと言った方だと聞いたわ」
「は? 自分がしておいて、なすりつけたのか?!」
「そうみたいよ」
「彼女が、とても優しいのをいいことに自分がしていることを言い逃れるためにそんなことをしたのか」
「最低な子息がいたものね」
「まぁ、あの服装を見ていればわかりそうなものだな」
「確かに。あんな格好を好んで着ることを恥ずかしいと思わないみたいだものね」
でも、だからといってヤルシルやラディスラヴァに目立ってやり返す者はいなかった。怒りのあまり静かにエリシュカがされたことを調べて、やり返す気満々でいたが、エリシュカがとんでもない勘違いをしたことで、それも実行されることはなかった。
何はともあれ、ラディスラヴァがヤルシルをエリシュカから奪おうとしていることにエリシュカは欠片も気づいていなかったが、奪う理由を勘違いしたことでヤルシルたちは命拾いするとは思ってもいなかったことだろう。
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