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しおりを挟むエリシュカは、その後、どうやって帰宅したかを全く覚えてはいなかった。言われたことに色々とショックなことはあれど、自分が何やら誤解と勘違いをしていて、いらぬ頑張りをしていた気がしてならなかったのだが、気づけば帰宅していた。
ぼんやりして帰ってきたエリシュカを心配して家族が集まって来て、何があったかを話すことになった。もちろん心配そうにしている中にエヴシェンは入っていない。家族ではないが使用人たちも、みんな何があったのかと気にしているようだ。
そこで、エリシュカはぽつぽつと話し始めたのだが……。
「エリシュカが、浮気をしているですって!?」
「っ」
婚約破棄をしたいとヤルシルから言われたことを話したら、一番に憤慨して怒りをあらわにしたのは姉だった。
それこそ、そんなに怒っているのを見るのは初めてだったエリシュカは、ビクッ!と肩を震わせてしまった。浮気という単語にではなくて、姉の声にビクついてしまったのだ。
だが、そんな風に妹を怯えさせたことにも気づいていないようだ。
「よくも、私の妹にそんなこと言えたわね。浮気していると言われるのは、あちらでしょうに」
「え?」
エリシュカは、姉の言葉に心底驚いてしまった。両親も、ユスティーナの言葉に何かあるのかとその先を待っていた。
エヴシェンだけは、表情一つ変えることなく、何でもないような顔をしていた。
「エリシュカが、私と王太子殿下と一緒にいることが増えたことをいいことにエリシュカの幼なじみのラディスラヴァがヤルシルとよく二人でいるようになったのよ」
「本当なのか?」
エリシュカは、そんなことになっていることを知らないため、何と言ってみようもない顔をしていた。
「それなら、私も見たことがあるな。友人も、よく見かけると教えてくれたが、妹の婚約者なのに大丈夫なのかとまで言われてはいたが、会っていただけで、浮気だなんて言い過ぎもいいところだ」
エヴシェンは大げさだと言っていたが、両親は眉を顰めていた。ユスティーナも、何を呑気なことを言っているとばかりの顔をしていた。
「よく見かけていると言われていたんだろ? それも二人っきりで」
「幼なじみの婚約者だとわかっていて、やたらと二人っきりになっていたのよね? それだけでも十分疑われるようなことをしているのは明白じゃない」
「それは、姉さんたちとエリシュカがやたらと一緒にいたからでは? 婚約者をほっといたのは、エリシュカなんだから、エリシュカが悪いんですよ」
「……」
浮気していると言われているエリシュカの自業自得だと言わんばかりのエヴシェンにエリシュカは、確かに自分に非があるなと思っていたが、他の家族は違っていた。
「何を言っているのよ! エリシュカは、婚約者のためにと勉強も、彼のやりたいことのサポートも率先してやっていたのよ。それを最近では、エリシュカの方ができすぎるようになって任せっきりになっていたから、私が少し距離を置かせていただけなのに」
エリシュカは、ユスティーナの言葉にえ?という顔をしていたが、それに気づいた家族はいなかった。そんなことをユスティーナに話したことは、エリシュカにはなかったのだ。
どうやら、婚約者だからとヤルシルに対して、至れり尽くせりでしていたことが仇になっていたようだ。
それでも、ヤルシルとラディスラヴァが好きあってしまったのならば、何をしてもエリシュカに気持ちが向くものではなさそうに思えてしまって、尽くし方を完全に自分本意に間違えていたようだと思ってエリシュカは、しょんぼりしていた。
ヤルシルは、エリシュカにしてほしかったことが、サポートでも尽くすことでもなかったのだ。彼がしてほしかったのは、ラディスラヴァにとりなしてほしかっただけなのだと思えてならなかったのだ。
そこに行き着くまでに何年経っているのかと思っていた。それこそ、はっきりと言ってくれれば、良かったのに。今更になって、そんなことを言うヤルシルと察することができなかった自分が嫌になってしまい、げんなりしていた。
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