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しおりを挟むエリシュカの姉とは、少し歳が離れていた。姉のユスティーナは母譲りで歳を重ねるごとに美しさを増していっていた。
毎年のように今が一番だと思っていても、更に美しくなるのだ。それと同じくエリシュカも、毎年のように可愛らしさに磨きがかかっているのだが、本人はそのことに気づいていなかった。
更に幼なじみのラディスラヴァも、美人ではないというだけで可愛らしさが増していくエリシュカの良さが全くわかってはいなかったようだ。
彼女にとっての基準のすべては美人であることであり、美人でないエリシュカは自分よりも下だと思っているのだろう。
顔だけで決めつけているが、エリシュカとラディスラヴァが並んでいると体型の差がかなりあったりするが、その辺りのことにはラディスラヴァは全く関心がないようだ。周りから、どう見られることよりも、ラディスラヴァは自分がエリシュカをどう思っているか。それが周りと同じ考えなのだと思っているようでもあった。
他国の流行り物を着ることに頑張りすぎていて、それが似合っているかは別物なのだが、そんなことも気にならないようだ。
ラディスラヴァはユスティーナと王太子が並ぶのを見ては、うっとりとした顔をよくしていた。
もっともユスティーナを見てそんな顔をするのは、ラディスラヴァだけではない。年頃の令嬢たちは、みんなそんな顔をして、二人のことを時間があれば眺めていた。どれだけ見ていても飽きないほどに何をしていても二人揃うと見目麗しすぎて近寄り難い何かがあった。二人っきりの世界を醸し出しているわけではないのだが、邪魔してはならないと言わんばかりの何かがあったのは確かだ。
だが、大概の人が話しかけても嫌な顔をされることはなかった。よほど、いいところを邪魔しない限りはだったが。そのいいところというのも、エリシュカに関することが大きかったりするが、それに気づいている者は少なかった。
実の妹のエリシュカは、うっとりというより、にこにこと見ていることが多かったが、彼女だけは例外でユスティーナたちが何をしていても話しかけたところで嫌な顔をされることは決してなかった。エリシュカが、二人から物凄く好かれているということが大きかったのだが、それにすらエリシュカは気づいていなかった。
「エリシュカが、羨ましいわ。あんなに美人なお姉さんがいて、その婚約者が王太子なんだもの」
「そうかな?」
羨ましいと言われて、エリシュカはちょっと嬉しそうにしていた。自慢の姉とその婚約者の話題が出たことが嬉しかっただけで、自分が褒められたかのように鼻を高くしていたわけではないのだが、ラディスラヴァは嬉しそうにするエリシュカに眉を顰めていた。
「それにお兄さんも美形だし、ご両親も素敵だし、本当に羨ましいわ」
そう言いながら、ラディスラヴァはチラッとエリシュカを見た。不躾にも上から下を見ていたが、エリシュカはそんなことをされても不愉快そうにすることはなかった。
「?」
時折、彼女は値踏みするような視線をエリシュカに向けていたが、エリシュカはその意味がよくわかっていなかったのだ。
その意味するところを知っている者がいたら、そんなラディスラヴァのことを射殺しそうな目で見ていただろうが、この時は側にいなかったのだ。
「? どうしたの?」
「それに比べて、エリシュカは誰にも似てないわよね」
「え……?」
ラディスラヴァにそんなことを言われてエリシュカは目をパチクリさせた。それこそ、そんなこと何を今更言うのかと思うだけで、彼女が何を言いたいのかがエリシュカにはさっぱりわからなかった。
美人に生まれなかったから、何だと言うのかとエリシュカは思うこともなかった。似てないことがいけないのだろうかと思うくらいだった。
「婚約者のヤルシル様は、エリシュカがお姉さんみたいに美人になると思って婚約したって聞いたけど。知ってた? 彼、美人にならないあなたに物凄くがっかりしてるのよ?」
「え? がっかり……?」
ラディスラヴァの言葉にそれも今更だとエリシュカは思ってしまったが、物凄くがっかりしてると聞いて驚かずにはいられなかった。
でも、面と向かってヤルシルからそんなことをエリシュカは言われたことがなかった。彼がラディスラヴァにそんな話をしているのかと聞き返そうとしたところで、その言葉を口に出すことはなかった。
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※暇な時にちょこちょこ書いている程度なので、内容はともかく出来についてはご了承ください。
追記
六十五話以降、タイトルの頭に『※』が付いているお話は、流血表現やグロ表現がございますので、閲覧の際はお気を付けください。
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