婚約者と兄、そして親友だと思っていた令嬢に嫌われていたようですが、運命の人に溺愛されて幸せです

珠宮さくら

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エリシュカたちが、いつもの店で買い物をしている時は決まって貸し切りとなったのは、いつからだったろうか。エリシュカは、ふと気づいた時には、貸し切りとなっていたが、それを気にしたことはなかった。

外からは誰が買い物に来ているかを会えて見えるようにされていたことにも気づいてはいなかった。


「あら、侯爵家の方々だわ」
「また、新しい物を御召しになるのね。あの方々が着る物は流行るから、今のうちにどんな物を購入されたか。店員に確認しようかしら」
「そうね。すぐに頼まないと出来上がるまでに時間がかかるものね」


貸し切りとなっていても、こっそりと聞きたがる方々がいるのも、いつものことになっていて次の日から大忙しになるのも、恒例となっていた。

その店は、候爵家の面々の御用達となっていたことで、他の店よりも群を抜いて急成長を遂げていて、店を他にも開くまでになるのも、すぐだった。

そんな風に店や周りに多大な影響力を及ぼしていることにも、エリシュカは気づいてはいなかった。

他の家族でも、それに気づいていない者もいたが、母と姉はそのことをよく知っていた。

そのため、店側ときちんと話し合いをして貸し切りにして、買い物をしていた。新しいデザインをサラッと口にするエリシュカの側には、数名のデザイナーがいて、すぐさま絵に表されていたりもしたが、エリシュカはそれが当たり前となっていて、それが普通ではないことに気づいていなかった。


「エリシュカ様。こんな感じでしょうか?」
「ん~、ここは……」


デザイナーの絵を見て、更に付け足したり、色んな体型にあうパターンをエリシュカは口にするのだ。

それらのアイディアはデザイナーたちにとって、驚くばかりだった。そんな短時間に新しいものを生み出していくのだ。

最初は、デザイナーは一人しかいなかった。でも、それでは間に合わなくなって、募集されることになり、集まった者たちは見下していた。子供にデザインの何がわかるのかと。

でも、違っていたのだ。そのため、どんなに忙しくとも、エリシュカが買い物に来るとなると時間の都合をつけて、やって来るようになっていた。


「今回も、凄まじいな」
「そうね」


それを元にして、来月は試着やらがなされるのだ。今回試着したものは、先月に考えられたものなのだ。

侯爵家の女性陣が着ている姿を見て、毎回感嘆していた。こんなに母や姉、そして自分に合ったものを1から生み出し続けられるのだ。

まだ、子供なのだと侮るなかれ。この国の流行を生み出しているのは、エリシュカなのだ。

それを知って自棄を起こすこともなく、専属のデザイナーとして彼女の側で勉強しているようなものだった。

パタンナーたちも、お針子たちも、みんなそうだ。エリシュカの言っていたものを形にすることが楽しくて仕方がないのだ。

そして、それを着て幸せそうにする見目麗しい二人と愛らしいエリシュカ。そんな人たちを見れて、今回も感激していた。

そんなことになっているとも知らずにエリシュカは、月に一度の買い物を満喫するのが、いつの間にやらの恒例になっていたことに慣れてしまっていた。

それこそ、二人の見目麗しい美女が着こなせるドレスをそのまま着こなせることなどないため、それを各々がどう着こなせるかをデザイナーや店員が、それとなくエリシュカに聞いていて、熱心にメモをしているのだが、それすらエリシュカは向上心溢れる店員だと思うばかりだった。大したことをしていないと思っているエリシュカは、エリシュカの何気なく話すことが、そんなに勉強になるなんて思ってもいないのだ。

エリシュカの言うことを取り入れていることで、売れ行きが好調となっていることにも、エリシュカだけが気づいてはいなかった。


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