婚約者と兄、そして親友だと思っていた令嬢に嫌われていたようですが、運命の人に溺愛されて幸せです

珠宮さくら

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母や姉の方も、エリシュカが自分たちに欠片も似ていないからといって、意地悪いことをすることもなければ、同じようになれと言うことも一切なかった。それどころか。自分たちにない可愛らしくて愛らしいエリシュカのことをこよなく愛していた。

期待に満ちた瞳を煌めく輝きを独り占めしたいと思う中でも、常に母と姉は上位に位置していた。それを濁らせるようなことだけは、断固として阻止することに全神経を集中することも厭うことはないのが、エリシュカの母と姉だった。

買い物に出かけて、こんなやり取りが繰り広げられていた。


「エリシュカには、こっちが似合うわ」
「そういうのは、エリシュカにしか似合うわないわね」
「そ、そうですか? でも、お母様、お姉様。今日は、私のお買い物ではなくて、お二人のお買い物をするのでは?」
「私たちはいいのよ」
「私たちより、エリシュカよ」
「……」


そう言って毎回、エリシュカの買い物ばかりとなっていることにエリシュカは苦笑せずにはいられなかった。二人は悪気はなく、実に楽しそうにしているのだが、エリシュカのものばかり買おうとするのだ。

これでは申し訳ないとエリシュカは、奮起することになったのも、すぐのことだった。エリシュカは、してもらって嬉しいことは即実践するところがあった。自分がされて嬉しいのだから、人もしてもらえたら喜んでくれる。そう信じて疑うことはなかった。

美人な母とユスティーナは、エリシュカが自分たちの似合わないものがよく似合うことを羨ましがることがよくあったが、逆に二人しか似合わないものを見ても、エリシュカは羨ましがるということは一度もなかった。

それが似合う二人に目を輝かせて素敵だと褒めることはあれど、それを妬ましく思うことも、同じ物を着こなせるようになろうと思うこともなかった。

それに気づいてからは、エリシュカは二人にも気兼ねなく買い物をしてもらおうと率先して、素敵だと褒めては、二人に似合うものを探すようになった。

それだけでは終わらなかったのだ。


「お母様には、こちらとこちらのデザインのいいとこ取りの方が似合うのに」
「え?」
「お姉様は、こちらとあちらのここの部分が強調されていたら、もっといいのに」
「っ、」
「そういう物があれば、お二人の素晴らしさが更に際立つと思うのですけど」
「「っ!?」」


そんなことをぽつりと呟いてから、そのデザインの物を探してくれたのか。しばらくして、手に入ったと呼ばれて、試着した二人は本当に素晴らしかった。

それこそ、二人がエリシュカの言っていたものを仕立てさせたとは思っていなかったが、その時から変化し始めていた。

エリシュカは、本当にそう思っているからこそ言っていることで、嘘でも煽てているわけでも何でもなかった。

そのためエリシュカが、目を輝かせて褒める衣装を母とユスティーナは嬉しそうに着ては、購入するようになっていったのも早かった。


「エリシュカが、そういうなら、これにするわ」
「そうね。そんなに褒めてくれるのなら、これは絶対に買わないと駄目ね」


母とユスティーナの基準は、エリシュカがどう思うかが大きくしめていた。二人がたくさん素敵な物を購入しても、エリシュカが何も買えなくとも不平不満など持つこともなかったが、そうならないように母と姉もエリシュカに似合うものをと選ぶため、この面々でのお買い物はそれは賑やかだった。


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