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しおりを挟むアミーリアの機転で、オーガスタはチェスターとの出会いをやり直すことにしたのだが……。
「チェスター様!」
「……」
留学先から、婚約破棄をしてまで追いかけて来た令嬢が現れたのだ。
「誰だ?」
「誰って、酷いわ!」
「……」
チェスターは、全く知らない令嬢だと言っていたが、全く知らないのに婚約破棄までして追いかけて来るだろうか?とオーガスタは考えずにはいられなかった。
オーガスタは、あの弟の兄だからとついつい色眼鏡で見てしまっていた。
「その女は?」
「私の婚約者だ」
「はぁ? あなた、私がいるのに婚約したの?!」
「っ、誤解するようなことを言うな!」
「……」
ギャーギャーと騒ぐのを見ていて、オーガスタは好みの子息だったはずだが、彼の弟を彷彿とさせる令嬢とのやり取りを見ていて、気持ちが冷めていく一方となっていた。
元より、冷めかけていたのだが、この一件で心が決まったのは、確かだ。
その日、プレストン侯爵家に帰ってオーガスタはこう言った。
「お父様、婚約を解消したいです」
「それでいいのか?」
「はい」
彼の側にいるだけで、一生面倒くさいことに巻き込まれそうだと思えたのが、一番の理由だ。それを2人で乗り越えていくなんて、オーガスタには無理だと思えた。
乗り越えるなら、勝手に乗り越えて行ってほしい。オーガスタに関係ないところでやってくれという感じだ。
「よかったの?」
「うん。なんか、見た目とか、殴られそうな時に助けてくれたのとかは素敵だったけど、今日はお姉様、学園休んでいたから知らないだろう けど……」
姉に学園であったことを話した。その話は、アミーリアの想像していたものではなかったようだ。
「婚約破棄してまで、こっちに来た令嬢がいたとしても、彼の弟みたいに勘違いしているんじゃない?」
「だとしても、なんか彼の側だと一生ついてまわりそうなのよね。厄介なのがもれなく付いて来そうなんだもの」
「……」
アミーリアは何も言わなかったが、将来有望視されている子息なのに勿体ないと思っていたが、厄介ごとに巻き込まれる運命が必ずしも訪れなくとも、自分とて乗り越えていくのは面倒そうだと思ったようだ。
だが、オーガスタが婚約を解消してから、その令嬢にしつこく追いかけ回されているチェスターを見かけた時にもっと面倒なことになっていたことに気づいたようだ。
「……凄い執念ね」
婚約したままだったら、オーガスタも巻き込まれていた気がしてならない。それこそ、解消しろと追いかけ回されていたのは、オーガスタだったはずだ。
アミーリアは、他の令嬢たちと一緒になってドン引きしながら、チェスターと婚約しようと必死になっている令嬢を見ていた。
その頃にはオーガスタが婚約解消したのは、最良だと誰もが思っていた。
それこそ、アミーリアを馬鹿にしていた令嬢たちも、そう思うくらいだったのは、間違いない。
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