7 / 10
7
しおりを挟むその後、バージルは激怒した。そんな息子に愛想が尽きたとして、勘当すると両親から言われていた。それにギャーギャーと騒いでいるのをオーガスタは、更に冷めた目で見た。
それは、オーガスタだけではなかったはずだが、彼はバージルに突き飛ばされたこともあり、オーガスタのせいでこうなったかのようにしていた。
そんなわけない。勝手に婚約者だと思い込んだのは、バージルだ。それなのに怒鳴られることもした覚えがないかのようにしていて、こんなのが伯爵家の次男なのかと思うとげんなりしてしまった。
姉の方も、こんなのとイチャついていたのかと思うと過去の自分が許せないのか。凄い顔をしていた。
「オーガスタ嬢」
「……」
「婚約を白紙にしたいなら、言ってくれ」
「っ、」
オーガスタは、チェスターに声をかけられて、そう言われて俯いたままだった。
そこに割って入って来たのは、姉だった。
「ちょっと失礼。とりあえず、あなたに最悪な弟がいたのは、わかったわ。でも、あなたの良さがいまいちわからないのよね。この子の姉としては、やり直してほしいのだけど」
「やり直し、してもいいのか?」
「えぇ、きちんとやり直して。その時に初めましてと自己紹介しあえばいいわ」
「お姉様」
「やり直すのよ。そしたら、殴られそうになったのに避けようとしなかったことを許してあげる」
「……」
「オーガスタ、許してほしい?」
「……ほしいわ」
「あなたは?」
「そうだな。許してくれるなら」
こうして、オーガスタたちはアミーリアが取り出してくれたことで、やり直すことになった。
その間、勘当されたことに騒ぎ立てるバージルとその両親にオーガスタたちの両親は凄い顔をして見ていた。
それに比べて、自分たちの娘はいい子に育ったと思っているとは思いもしなかった。特に母は、娘たちが何より自慢のようにしていた。
そこに夫については何もないというのに父は、にこしていた。大方、言わなくても自分は、娘たち以上だとでも思っているのだろう。
チェスターは、騒ぎ立てて勘当された弟を引きずって帰って行った。
「あんなのが家にいると何かと大変そうだな」
「兄の方が、どんなに優秀でも弟があれでは、どうなるかなんてわかりきっているようなものではありませんか。さっさと縁を切っていれば、アミーリアが怪我をすることもなかったのに」
母は謝罪に来ておいて、怒鳴りつけるだけのプレストン伯爵家の夫妻にも何とも言えない顔をしていた。
それに比べて、姉の代わりにやり返していたオーガスタの方が、あの子息には伝わるものがあってもよかったのだが、それで通じるような子息でもなかったことに呆れてもいた。
「オーガスタ」
「はい」
「婚約をどうしたいかは、お前が決めていいぞ」
「……」
「婚約者は、良さそうだったが……」
「もれなく、義両親があぁだと言うことを考えた方がいいわ。厄介な義弟がいなくなろうとも、義両親が消えるのは難しいでしょうから」
「……」
オーガスタは、両親にそんなことを言われて、何とも言えない顔をしていた。
593
お気に入りに追加
700
あなたにおすすめの小説


お姉ちゃん今回も我慢してくれる?
あんころもちです
恋愛
「マリィはお姉ちゃんだろ! 妹のリリィにそのおもちゃ譲りなさい!」
「マリィ君は双子の姉なんだろ? 妹のリリィが困っているなら手伝ってやれよ」
「マリィ? いやいや無理だよ。妹のリリィの方が断然可愛いから結婚するならリリィだろ〜」
私が欲しいものをお姉ちゃんが持っていたら全部貰っていた。
代わりにいらないものは全部押し付けて、お姉ちゃんにプレゼントしてあげていた。
お姉ちゃんの婚約者様も貰ったけど、お姉ちゃんは更に位の高い公爵様との婚約が決まったらしい。
ねぇねぇお姉ちゃん公爵様も私にちょうだい?
お姉ちゃんなんだから何でも譲ってくれるよね?


だから言ったでしょう?
わらびもち
恋愛
ロザリンドの夫は職場で若い女性から手製の菓子を貰っている。
その行為がどれだけ妻を傷つけるのか、そしてどれだけ危険なのかを理解しない夫。
ロザリンドはそんな夫に失望したーーー。

真実の愛のお相手に婚約者を譲ろうと頑張った結果、毎回のように戻ってくる件
さこの
恋愛
好きな人ができたんだ。
婚約者であるフェリクスが切々と語ってくる。
でもどうすれば振り向いてくれるか分からないんだ。なぜかいつも相談を受ける
プレゼントを渡したいんだ。
それならばこちらはいかがですか?王都で流行っていますよ?
甘いものが好きらしいんだよ
それならば次回のお茶会で、こちらのスイーツをお出ししましょう。

【完結済】後悔していると言われても、ねぇ。私はもう……。
木嶋うめ香
恋愛
五歳で婚約したシオン殿下は、ある日先触れもなしに我が家にやってきました。
「君と婚約を解消したい、私はスィートピーを愛してるんだ」
シオン殿下は、私の妹スィートピーを隣に座らせ、馬鹿なことを言い始めたのです。
妹はとても愛らしいですから、殿下が思っても仕方がありません。
でも、それなら側妃でいいのではありませんか?
どうしても私と婚約解消したいのですか、本当に後悔はございませんか?

【完結】愛くるしい彼女。
たまこ
恋愛
侯爵令嬢のキャロラインは、所謂悪役令嬢のような容姿と性格で、人から敬遠されてばかり。唯一心を許していた幼馴染のロビンとの婚約話が持ち上がり、大喜びしたのも束の間「この話は無かったことに。」とバッサリ断られてしまう。失意の中、第二王子にアプローチを受けるが、何故かいつもロビンが現れて•••。
2023.3.15
HOTランキング35位/24hランキング63位
ありがとうございました!

さよなら 大好きな人
小夏 礼
恋愛
女神の娘かもしれない紫の瞳を持つアーリアは、第2王子の婚約者だった。
政略結婚だが、それでもアーリアは第2王子のことが好きだった。
彼にふさわしい女性になるために努力するほど。
しかし、アーリアのそんな気持ちは、
ある日、第2王子によって踏み躙られることになる……
※本編は悲恋です。
※裏話や番外編を読むと本編のイメージが変わりますので、悲恋のままが良い方はご注意ください。
※本編2(+0.5)、裏話1、番外編2の計5(+0.5)話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる