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しおりを挟む(デルフィーヌ視点)
どうなっているのよ!?
ここには、王太子とユルシュルが婚約して初めて着飾って登場して、みんなが見惚れるところだったはずだ。
なのにユルシュルではなく、マクシミリアンはベアトリスを連れて現れたのだ。
それに私だけでなく、王妃や側妃も驚いていたが、私は周りなんて見ている余裕はなかった。
この日をどれだけ待ちわびていたことか。そのためにどれだけ、王太子がすぐに婚約しないようにちょっかいをかけ続けたことか。
なのにその頑張りが、こんな形で報われないことになるなんて思いもしなかった。
するとあちらこちらで、ひそひそと話す声が聞こえて来た。あまりのことになぜこうなったのかと考えていれば、ユルシュルは妹の邪魔にしかならないと隣国に養子に出されていることを耳にした。
そんな、養子に出されたのは、ユルシュルではなくて、ベアトリスだったはずだ。なのになぜ??
王太子は、不満そうにベアトリスを連れて来て居て、その横のベアトリスもまた婚約者として望まれたのが、自分ではないと聞いたからなのか。凄く殺伐としていて、中々お似合いに見えるなんてのは皮肉にしか聞こえなかった。
それが、私のみならず、側妃である今世の母や王太子の実母である王妃が同じイベントを見ようとしていた弊害のせいで、こうなっているとも知らず義理の姉妹になれるのを夢見ていたのにそうならないことに愕然とした。
「「「どうなっているのよ!?」」」
ん? 今、他からも声がして重なったことにそちらを見れば、側妃と王妃と目があった。
は? え? まさか、この人たちも……?!
そこで、母親たちが自分と同じことを知ることになっても、ユルシュルが養子になってしまったあとで、ベアトリスの婚約が解消にも破棄にもならないまま、凄く不服そうにしながらも、王太子は婚約したままでいたのは、ユルシュルと婚約するはずが手違いでこうなったなんて知られなくなかったからにほかならなかった。
そして、不満の矛先は、私たちに向けられた。
「デルフィーヌたちのせいだぞ!」
「……お兄様、何の話?」
「お前たちが、ことごとく邪魔して、私のことをユルシュルに相応しくないと認めなかったから、あんなのと婚約するはめになったんだ。どうしてくれるんだ!!」
「は? 認めなかった??」
王太子の言葉に心外だと思ったが、こんな事になってしまったあとでは何を言っても元の木阿弥だと思って、イケメンだったはずなのにどんどん残念なとこらがあらわになるマクシミリアンの怒鳴り散らすのを私は毎日嫌と言うほど聞くことになった。
それを聞いているうちにこんなのだったのかと思わずにはいられなかった。
そして、ベアトリスと丁度いいなと思うようになるのは、すぐのことだった。この王太子は、私たちが知っている人と違いすぎていると思ったのも、介入しすぎたからなのか。
それとも、私たちがいるからなのかが分からなくなってしまった。
とりあえず見たいものが見られなくなってしまい、途方に暮れていたが隣国の王太子との婚約もなくなり、自分の将来すら思っていたのと違うことになり、焦ることになるとは思いもしなかった。
「そんな、こんなことなら、自分のことにもっと時間を費やせばよかった」
でも、そんな後悔しても後の祭りでしかなかった。
王妃と側妃の中が更に酷いものとなっても、そんなものに構う余裕などなくなった私は私が幸せになるためにいい男を探すも、あの王太子の異母妹であり、王妃と側妃のことをユルシュルに任せっきりにしていた王女と見られていて、ろくな婚約者が現れることはなかった。
こんなはずではなかったのにと思わざるおえない日々を送ることになるとは思いもしなかった。
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