見た目だけしか取り柄のない残念な犬好きの幼なじみと仲違いしたので、私は猫好き仲間との恋に邁進します

珠宮さくら

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ある日、デートらしいことをしようとして千沙都と理人は映画を見ようとした。するとそこに怜久がいて、千沙都は驚いてしまったが、兄の隣にカノジョがいて、更にそれに驚いてしまった。それは、兄の方も同じだったようだ。


「「あ、」」
「どうしたの?」
「どうした?」
「「兄/妹」」
「「え?」」


兄と妹が、同じリアクションをしてしまっていた。それにお互いのカノジョ、カレシが同じようなリアクションをしていた。第三者からしたら面白かったかも知れないが、千沙都は面白がっている余裕はなかった。


(映画が被るのはわかるけど、日時が被るって、早々ないわよね。こんな偶然は気まずいわ)


まさか、怜久たちと同じ映画を見ることになるとは思わなかったが、お互いカレシそっちのけで、怜久のカノジョの詩と千沙都は意気投合するのも早かった。

詩は1つ年上だが、気さくで話しやすかったのだ。威張り散らすとか、マウントを取るとかは一切なく、気まずい雰囲気を諸共しなかった。


「この映画、話題になってるからずっと見たかったんだよね」
「あ、私もです」


そこから、映画の話題やら最近のドラマやらを話しつつ、怜久たちが居ない間だろうとも気にならないのも早かった。

それに犬のことで必死になって飼い主探しをしたのが、詩の方には好印象になって残っていたのも大きかったようだ。会ったのは初めてだったが、あの時はお礼にお菓子をもらったりもしたため、そのことで理人が探してくれたところで、今は元気にしていると知って、映画が終わってからもそれで盛り上がって、喫茶店でお茶までしていた。

怜久が置き去りになっているが、しょうがない。兄の方はあまりにも犬の新しい家族探しでは役に立たなかったのだ。……友達が少なかったとか、クラスメイトとの仲がいまいちだったようだ。


(詩さんみたいな美人な彼女がいれば、反感も買ったでしょうね。成績はいまいちで、中身もいまいちなのにモテるなんて認めたくないものよね)


実の妹のはずの千沙都は、そんなことを思っていた。


「理人くん、奢らせて!」
「え? いや、そんな悪いです」
「いいのよ。弟が、迷惑かけた挙げ句、お世話になったんだもん。直接、お礼したかったんだ。千沙都ちゃんも、奢るから」
「いや、私、お礼もらいましたから」
「あんなのじゃ、足りないわ」


めちゃくちゃ、いい人だった。結局、奢ってもらうことになり、すっかり仲良くなってしまった。


(この人が、イケメン詐欺師のお姉さんなんだ。全然似てないわね。私と兄さんみたいだわ。……どうして、こんなにいい人なのに兄さんと付き合っているんだろ? もっと、素敵な男性がいっぱいいそうなのに)


千沙都は、それが不思議で仕方がなかった。それこそ、瑶みたいな弟がいるのなら、怜久のようなのと付き合いたいと思う詩の考えが、千沙都には全くわからなかった。


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