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しおりを挟む(そういえば、初代は元々おばさんが飼ってたから私が出会った時には老犬で老衰で亡くなってるけど、2代目が急逝して、そこから麻呂サンを飼うまでが急すぎた気がするんだよね)
そんなことを思っても、流石に早くないかと当時も聞いていたが、フィリーグの合う犬には早々会えるものじゃないからと一希の家族が、即断即決して麻呂サンを飼うことにしたのを千沙都はよく覚えていた。
丁度、千沙都の家の愛猫のアインシュタインを飼った少し後だった。
そこから、幼なじみの一家との交流には、麻呂サンが挟まれていることばかりとなった。
その間となる存在のことを気にかけなくなれば、千沙都たち家族にはあり得ない犬好き家族でしかないのだ。
そんなことがあって、ようやく怜久のカノジョの飼っていたワンコに新しい飼い主が見つかった。それには、クラスで大喜びすることになった。だが、無類の犬好きである一希だけが全く仲間に入らず、何もしていなかったくせにあり得ないとこれまた説教を始めたのだ。
(こんな時に説教する? 信じられない)
千沙都は、幼なじみに色々と言われることになり、それを見聞きしたクラスメイトたちに総スカンをくらっていた。
「ムードぶち壊すようなことやめてくれない? そもそも、何もしてないじゃん」
「そんなのを手伝うわけないだろ。犬を飼うことにしたのに諸事情で手放すなんて、最低最悪だ」
「でも、飼えないのに無理して放置されるより、よくない?」
「そうだな。無理して飼われてるより、無理なく飼ってくれる家族がいいに決まってる」
「それは、人間側の言い分だろ。俺が言いたいのは、犬の方のことだ」
そこから、犬のことを考えて発言しろとくどくどと言うのにブチギレたのは千沙都ではない。
「は? それ、お前が言うのか? お前も、家族も、犬を忘れてよく散歩してんじゃん」
(え? 何で、知ってるの??)
これを言ったのは、千沙都でも、寧々でもなかった。この2人は、ぎょっとしてお互いを見合ってしまった。
理人が、あり得ないとばかりに暴露したのだ。彼には従兄弟がいるらしく、その従兄弟が小中学と一希と一緒で前々から無類の犬好きなのに犬を忘れて散歩しているおかしな奴と言っていたらしい。それが、クラスメイトになって、そのヤバさがよくわかったようだ。
そのヤバさがよくわかって、たまらずに今回それを指摘したのだ。説教するほど何もしてないだろうと言いたいのとそもそも説教できる立場ではないのではないかと言いたかったのだろう。
(知ってる人が他にもいたんだ。通りで、やたらと庇ってくれてたわけね)
千沙都は、麻呂サンのことを知っているからだったことにちょっと残念な気分になってしまった。いや、麻呂サンを気にかけてくれている人がいたのは嬉しいのだが、ちょっとだけ変な期待を持ってしまっていたようだ。
(まぁ、優しいのはよくわかったわ。人にではなくて、動物に。私に特別に優しいわけではないのには、ちょっと、ううん。かなりがっかりだけど)
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