見た目だけしか取り柄のない残念な犬好きの幼なじみと仲違いしたので、私は猫好き仲間との恋に邁進します

珠宮さくら

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そんなことになっているとも知らず千沙都の家族も、一希の家族と同じ時刻に揃って夕食を食べていた。


「そういえば一希くんが、公園のとこにいたのを見たが、犬は連れてなかったぞ」
「……」


(猿渡も公園に行ったのね)


父の何気ない言葉に千沙都は、目をパチクリさせながら、そんなことを思いつつ、違うことを口にした。


「朝におばさんが散歩してるのを兄さんが見たって話をしたから、安心しきって公園に行くのに夢中になりすぎたのかもね」
「まぁ、あの公園は今が見頃だからな」
「見頃……?」


怜久も朝、公園の花を見たと話したが、2人の父親はその会話で首を傾げたのだ。


(どうしたんだろ?)


千沙都は、兄と不思議そうに父を見た。特におかしな会話をしたつもりはなかったのだが、父は違っていたようだ。


「それ、どこの公園の話だ?」
「え? どこって、ひばり公園のことだけど?」
「……父さんが、一希くんを見かけたのは、よつば公園だぞ?」
「「は?」」


(よつば公園? 何で、そんなとこにいるのよ。わけがわからなすぎて、頭が追いつかないんだけど……)


いつもの麻呂サンの散歩のコースからしたら、真逆のところにある公園の名前を父が口にして、兄妹は間抜けな顔をしていた。

その間、母だけが黙々と食事していた。幼稚園で一希の母のことをよく知っていることもあり、抜けているところが多々あるのは親譲りだと思っているようで、大概のことで千沙都の母は驚かなくなっていた。変な方向に慣れすぎてしまったようだ。

きっと、千沙都たちに語ってはいないエピソードのオンパレードではないかと思っている。聞いても楽しいと思えるものは、殆どないだろう。


「今日は、出先から帰って来たから、いつもと違う方向から帰宅したんだ。だから、いつもと違うとこを一希くんだけが散歩してるから、不思議に思ってたんだが……」
「「……」」


千沙都と怜久は、何とも言えない顔をして父の言葉を聞いていた。兄妹らしく、そっくりな顔をしていた。

黙々と食事をしていた母は、ふと思い出したように食べるのをやめて首を傾げた。食べることに集中しているわけでなく、会話はきちんと聞いていたようだ。


「そもそも、公園を間違えていたみたいね。よつば公園なんて、見頃な花どころか。荒れ地状態になってるところなんて、よく見に行こうと思ったわね」
「荒れ放題なのか?」
「そうよ。前は、あそこの町内でボランティアを募って綺麗にしてたんだけど、揉めたみたいでボランティアが集まらなくなったのよ。ボランティアに参加した人たちに嫌味なこと言う人が現れて、参加してない人たちも一緒になって悪口言うようになって、ボランティアなのに嫌味言われるなんて割に合わないから、やめたくなるのも無理ないわ。それこそ、文句言っていた人たちが、代わってボランティアをするはずなんだけど、言うだけでやる気にはならなかったみたいなのよね」
「……」


母は町内が違うから、揉めた中にママ友がいたのかも知れない。町内が一緒だったらまだしも違う町内にまで赴いて色々助言しても大変なのだろう。

ママ友が頑張ってやり続けているなら手助けをしたかも知れないが、関わらないことにして完全にやめることにした人をその気にさせることまでしないはずだ。


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