見た目だけしか取り柄のない残念な犬好きの幼なじみと仲違いしたので、私は猫好き仲間との恋に邁進します

珠宮さくら

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千沙都の高校に入って最初のゴールデンウィークも、そんなことで終えた。

兄の恋路よりも、幼なじみが厄介でならなかった。麻呂サンには悪いが、その後で癒しが足りなくて、猫カフェに行って千沙都は癒された。

そのせいで、千沙都が愛猫に浮気を疑われるかのような詮索を受けることになったかと言うとそんなことにはならなかった。

ドッグランに行った時は、凄く近づいて来るなという態度を取られて、それに千沙都は物凄いショックを受けて、猫がカフェに行ったこともあった。猫カフェの方は、ドッグランの時と違う反応が返ってきて、それはいつもの反応でホッとしていた。

だが、肝心の猫カフェは、猫に癒されたが、人間には癒されなかった。


(問題は、カップルが多かったことかな。お一人様にはきつかった。猫に癒されて、別のことで疲れた気もしなくはないけど……)


そう思っていたが、カップルが多かった話は家族にはしなかった。ただ、ひたすらに猫のことしか語らなかったのだ。それを聞いていた家族は……。


「父さんも行きたかった」
「私も行きたかったわ」
「俺も」
「……」


千沙都だけが、人気の猫カフェに行ったとなり、そんな風に言われたのだ。その前にドッグランで耐え忍ぶことになったのだから、そのくらいではないかと千沙都は思っていた。

それに両親は、千沙都とは違うところに出かけているのだ。


「父さんと母さんは、スイパラに行ったんでしょ? 兄さんは、カノジョと行けばいいじゃん」
「あっちは、猫好き以前に動物そのものがあまり好きじゃないっぽいから、無理」
「猫カフェで、夫婦限定イベントがあるってもらったわ」


チケットをもらったと千沙都が言うと、両親は目を輝かせた。すかさず父は、思い出したかのようにこんなことを言った。


「千沙都。今度、女子限定のスイパラがあるらしいぞ。母さんと一緒に行ったら、どうだ?」
「あら、それも嬉しいけど、千沙都はお友達と行ったら、どうかしら? このチラシを持って行くと学生割引が使えるみたいよ」


そう言いながら、母はチラシを千沙都に見せた。学生割引が使えるチラシのようだ。

裏取引のように千沙都と母は、持っている物を交換しようとしていると……。


「え? スイパラ? 俺も欲しい」
「「「……」」」


怜久は、ぽつりと呟いた。カノジョが、スイパラのことを話していたようだ。

だが、怜久以外は何を言ってるんだという目で見ていたが、本人は気づいていないようだ。そもそも、何がまずいかをわかっていないようだ。


「怜久、聞いてたか? 女子限定だ」
「カノジョと行くなら、カップル限定の時が、いいんじゃないかしらね」


母は、すかさず別のチラシを怜久に見せた。

千沙都と母はチケットとチラシを交換し終えていた。怜久は、それに気づいていないようでカップル限定の方に視線は釘付けとなっていた。

怜久は、自分もチラシをもらえるものと思って手を伸ばしていたが、母はそれをすかさず遠ざけていた。


「え?」
「……」


兄は、毎回この手の話題についてこれたことがない。

母は、チラシを持っていない手をひらひらさせていた。その意味がわかっていないようだ。


(こういう時、ノリが悪いのよね。……いや、この場合、ノリがよすぎる方がおかしいのかな?)


妹なのに千沙都は、すっかりこの手の話題に慣れていた。その点、兄は全然このノリに慣れることはなかった。


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