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しおりを挟む兄の恋路も、兄には高校の成績がすこぶる良くなくとも、カノジョとのことの方が重要なことだろう。だからといって、千沙都の1番の重要案件ではない。千沙都は、ブラコンではない。
兄の方も、シスコンではない。今の優先順位は、確実に家族よりも、成績よりも、カノジョの方にあるはずだ。でも、骨の髄まで首ったけではないと思いたい。流石にこれ以上、成績が下がれば両親でも怒るに違いない。
今現在でも、普通の親なら勉強しろと言いそうな成績であろうとも、しつこく言うなんてことはしない。言ったところで恋路と勉学の両立は難しいとわかっているからかも知れない。かといって、恋をやめさせようとはしないところが、両親だ。無理にやめさせて荒れるよりもいいと思っているのかも知れない。
(兄さんは、中々の面食いだからカノジョさんが可愛いのは間違いないはず。今のカノジョさんと上手くいかなくなったら、どんなに姿形が格好いい分類に属しても次に素敵なカノジョができるか怪しいのよね)
母も同じように思っているようで……。
「連れて来る時は、早めに教えてね」
「は? いや、カノジョの家とかなり距離あるから、学校帰りに気軽に呼べないから来ないと思う」
「……なら、その子の家に行く時は、きちんとするのよ?」
「行く予定はないよ。あっちは、祖父母と二世帯住宅らしくて、カノジョの友達うんねんにも口うるさいらしいし」
そんなことを怜久は言った。そんな話を既にしていたようだ。
「あら、それ、お母様のご両親?」
「いや、父親の方」
「義両親となら、お母様は大変でしょうね」
そんなことを母と怜久が話しているのを千沙都も聞いていた。
(父親の方の祖父母か。私なら、友達のことでとやかく言って来る時点で、余計なことは一切言わないようにするな。カレシの話題なんて、絶対にしない。同性の友達にまで口出すようなら、学校の話もしないわね)
千沙都の母は、子供たちの交友関係にも、カレシにも、カノジョにも、ウェルカムな感じの人だ。自分の若い頃と照らし合わせて、良かれと思って助言したり、あーだ、こーだと押し付けがましく言うこともない。
ただ、気になるから会ってみたいと言うより、来る時は気を使わせまいとして、逆に家には居ないようにする口な気がする。
まだ会ったこともないカノジョが気にならないわけではないが、そっちに行くと益々脱線してしまうので、千沙都の兄の恋路のことはこのくらいにして、千沙都にとって日課になっていることの方に話を向けることにする。
千沙都の住む近所に幼なじみの男の子がいた。同い年の彼の名前は猿渡一希。小さな頃から、見た目がよくて幼い頃は可愛らしく、お目々ぱっちりの男の子だったが、成長するにつれて可愛らしいところがどこかに行方不明となった。中身は元々可愛いらしさの欠片もなかったが。
一希は中学生あたりから格好いいと周りの女の子にやたらと騒がれるまでになった。身長も、グッと伸びて、女の子に間違われることもなくなった。
見た目からすると確かに千沙都の目から見ても格好いい少年だ。そこは、認める。でも、中身がどうかというとそこは問題大有りな少年だった。中身は全く可愛げの欠片もない。まぁ、そんなものなくとも見た目が良ければ、ツンツンしていても愛想が全くなくてもいいと思うが、彼の中身は別のもので占められていた。
その家と千沙都の家族は、家族ぐるみで仲良くしていた。千沙都と一希が同い年で、幼稚園が同じだったことから、まず最初に母親たちが先に仲良くなったのだ。
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