上 下
10 / 23

10

しおりを挟む

(なんか、壮大な夢を見ている気がする)


颯は、自分も抱っこしてほしそうにそわそわしていたが、勉強の時間らしくしょんぼりしながら、部屋に戻って行った。その頃には長く人の姿を保っていられないらしい。仔猫の姿になって、女官に抱っこされていた。

それこそ、いい子にしていないとシッターをしてもらえないとお付きの女官らしき女性に言われて、それは困ると思ったようだ。


(しょんぼりした颯くんも、可愛かったな)


「晃様。陛下が、お呼びです」
「仕事は?」
「全て片付けたそうです」
「そうか。珠紀さん、行こうか?」
「あ、はい」


白が何処かに行こうとするのを晃が捕まえるも、ジタバタと暴れるのを見かねて珠紀が抱っこすると落ちついた。


「ごめん。珠紀さん、お祖父様を頼めるかな?」


珠紀は、頷くことしかできなかった。










(王様って、え? 晃さんって、王子様ってこと?!)


大広間で、珠紀はそんなことに混乱していたが、王様も中々のイケメン。いや、美中年がいた。だが、彼が口にしたのは……。


「クソ親父! 何、羨ましいことしてもらってんだ!!」
「へ?」


どうやら、珠紀に抱っこされているのが羨ましくて仕方がないらしい。

そこにゴホンと咳払いの声が響いた。


「陛下。こちらが、珠紀様です。先日、颯様が拐われそうになったところを助けてくださったとか」
「あ? ちび助、凝りもせずに人間界に行ってんのか?」
「晃様が、あちらに行かれて興味を惹かれておられるのでしょう」
「ったく、しょうがねぇな。自分の身一つ守れねぇくせに危ないことしやがって。珠紀嬢、悪かったな」
「い、いえ」
「それと親父のことも、悪いな。そのまま落としていいぞ。むしろ、叩き落してくれ」
「えっと……」
「父上。羨ましがらないでください。母上に知られてもしりませんよ」
「っ、あー、いや、俺は、珠紀嬢の腕を心配してるだけだ。年々丸っこくなってるだろ」


それこそ、息子の晃だけでなくて、そこにいる珠紀以外にジトッと見られてたじろいでいた。


しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

はじまりは初恋の終わりから~

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:78pt お気に入り:3,060

伯爵様は色々と不器用なのです

恋愛 / 完結 24h.ポイント:2,854pt お気に入り:2,683

ただいま冷徹上司を調・教・中!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:391

政略結婚が恋愛結婚に変わる時。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:842

残念ながらすべてお見通しです

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:340pt お気に入り:1,994

どうせ政略結婚だから、と言われた話

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:134pt お気に入り:49

処理中です...