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颯は、自分も抱っこしてほしそうにそわそわしていたが、勉強の時間らしくしょんぼりしながら、部屋に戻って行った。その頃には長く人の姿を保っていられないらしい。仔猫の姿になって、女官に抱っこされていた。
それこそ、いい子にしていないとシッターをしてもらえないとお付きの女官らしき女性に言われて、それは困ると思ったようだ。
(しょんぼりした颯くんも、可愛かったな)
「晃様。陛下が、お呼びです」
「仕事は?」
「全て片付けたそうです」
「そうか。珠紀さん、行こうか?」
「あ、はい」
白が何処かに行こうとするのを晃が捕まえるも、ジタバタと暴れるのを見かねて珠紀が抱っこすると落ちついた。
「ごめん。珠紀さん、お祖父様を頼めるかな?」
珠紀は、頷くことしかできなかった。
(王様って、え? 晃さんって、王子様ってこと?!)
大広間で、珠紀はそんなことに混乱していたが、王様も中々のイケメン。いや、美中年がいた。だが、彼が口にしたのは……。
「クソ親父! 何、羨ましいことしてもらってんだ!!」
「へ?」
どうやら、珠紀に抱っこされているのが羨ましくて仕方がないらしい。
そこにゴホンと咳払いの声が響いた。
「陛下。こちらが、珠紀様です。先日、颯様が拐われそうになったところを助けてくださったとか」
「あ? ちび助、凝りもせずに人間界に行ってんのか?」
「晃様が、あちらに行かれて興味を惹かれておられるのでしょう」
「ったく、しょうがねぇな。自分の身一つ守れねぇくせに危ないことしやがって。珠紀嬢、悪かったな」
「い、いえ」
「それと親父のことも、悪いな。そのまま落としていいぞ。むしろ、叩き落してくれ」
「えっと……」
「父上。羨ましがらないでください。母上に知られてもしりませんよ」
「っ、あー、いや、俺は、珠紀嬢の腕を心配してるだけだ。年々丸っこくなってるだろ」
それこそ、息子の晃だけでなくて、そこにいる珠紀以外にジトッと見られてたじろいでいた。
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