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しおりを挟む晃は、知り合いが喫茶店をしているからと珠紀を連れ立って、そこまで歩くことになった。
それこそ、色々と話したはずだが、緊張しすぎていた珠紀は当たり障りのないことを答えていたか自信はなかった。
反省しても、この時の記憶を思い出すことはなかった。
晃が不愉快そうにしてはいなかったから、きっと上手く会話できていたはずだ。
(……こんなところがあったんだ)
慣れたように細道を晃を歩くのに珠紀は、どこに行くかを詳しく聞くことなく着いて行った。そこには、雰囲気のいい喫茶店があった。
それこそ、大学を出てしばらくは晃の追っかけが、珠紀とどこかに行こうとしているのを見て着いて来ていたはずが、そこにたどり着いた時には一人もいなくなって、静かになっていることに珠紀は全く気づかなかった。
カラン、カラン。
扉を開けると軽やかな音が鳴った。
「晃。珍しいな。お前の彼女か?」
「翔太」
「悪い、悪い。人間は誰も居ないから、好きなとこ座れよ」
(うわっ、これまた、イケメンな人がいる)
それこそ、こんなイケメンがいるところなら、目当ての女性たちで賑わっていそうだが……。
(あ~、でも、ここ、落ち着くな~)
そんなことを思いながら、奥まったところに座ることになったのだが……。
「猫だ」
「珠紀さん、猫は平気かな?」
「あ、はい。動物は、全般平気です」
「よかった。ここは、どこも猫が好きなように座っているから、退かさずに座れそうなのここしかなさそうなんだ」
珠紀が、辺りを見渡すと人間より、猫の方が上客のようで、それがとても可愛いくて退かすなんて無理な気持ちがよくわかった。
珠紀が座ろうとしたところの奥に丸まった猫が寝ていた。毛艶のよい真っ白な猫だった。
「えっと、隣、いいかな?」
「……」
丸まっていた猫が、嫌がらないかと珠紀は指を鼻先にやって様子を見る。晃の方にも猫がいたが、嫌がらずに喉をゴロゴロ言わせていた。
珠紀の方の猫は、珠紀の指をくんくんと匂いを嗅いでから、何事もなかったようにまた寝始めたので大丈夫そうだなと隣に腰掛けた。
「お邪魔します」
そんな行動をじっと見られていたようだ。
「白さんが、認めたな」
「え?」
「その猫、ここの主みたいなもんなんだよ」
珠紀は感心されていたようだが、見られていたことに赤面していた。
(こんな猫カフェがあるの知ってたら、通い詰めてたわ。どこもかしこも、猫だらけ。なんて、魅惑的な空間なんだろ)
珠紀のことを他の猫たちも、じっと見ていて、何やら不思議な感覚がしたが、新参者の人間を見ていると思っていた。
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