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第4章
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しおりを挟むりらは不思議なことに普通に生きていると思って大学にも通っていた記憶があった。
それは、なかったはずなのに妙にリアルな感覚がしていた。友達は、リアルなものではなかったが、りらが父に会っていると思っていたあの女性は物凄くリアルだった。
あれが、なかったこととはどうしても思えなかった。運転手をしている彼にその話をしてみた。
「私が、父の家に月に何度か行っていたのを知ってる人が大学に来てた。ううん。あれは、夢の中というか、なかったはずのこと。死んでからのことだった。ありえないはずなのにその女性は知っていたの。私は、それをその女性に話したことなんてないのにその人は、誰かに聞いて知っていた。どういうことかわかる?」
「俺と同じだな。魂だけになってるあんたと話せる奴が接触したんだ。大学とやらに普段からいたなら、紛れ込もうとしたんだろうな」
彼は、即答してくれた。確かに死んだのなら、魂だ。話せる奴ということは、みんながみんなできるわけではないのだろう。
「その話をあなたのような人にわざわざしたってことね」
「っ、」
「でも、私は腹が立って仕方がなかったのは、許可を得て、こっち側に来ていたわけでも、緊急事態だと判断される状況でもなかったってことね。そのせいで、私を父のところに案内できるどころか。私がブチギレたから、大変な目にあっただけになったってことね」
「ブチギレたのか?」
「気安く、さん付けで呼ばれて、あなたのお父さんなんて言われたのよ? 会ったことないって言ったら、嘘つき呼ばわりまでされたんだもの。キレないわけないでしょ」
「……そこまで言う奴がいたのか。無礼だな。いや、俺も、人のこと言えないが」
りらの言葉に苦虫を噛み潰したような顔をした。それを見て、りらはどうしたものかと考え始めた。
(ミハイルなら、会えていないのを知っている。なら、私を守ると誓った中に裏切り者がいるってことになるのかな? 私の近くにいれても話しかけることも、私のことに答えることも許可されていない者。自分がやれば罰を受けるから、別の人にさせたのかも)
でも、父に会えていないことを知らないのなら、その中に入りたくとも入れなかった者の方があり得るかも知れない。
(近くのようで、あと一歩近づけない。だから、詳しいことを知らないで、知ったかぶりして誘導した。そのせいで、あの世界が危うくなっているなんて皮肉なものね)
だが、それでも真実ではない気がした。
(知っていて知らないふりをしているとか? ……私を助けようとしているけど、本当は助ける気がないってこともありそうね)
今現在、死にかけているというか。死んでいるから、死にかけているというのも変だが、完全に死ぬというのが正確かも知れない。
そんな状況になっているのにりらは、今までの中で一番冷静だったかも知れない。普通なら、パニックになっていいはずの場面だが、りらはそうはならなかった。
1人だったら、そうなっていたかも知れないが、運転手がりらを父のところに行かせようとしている理由を聞いて、それが気になっていたからかも知れない。彼は、自分のためやお金のためには動いていないのだ。
彼は家族のみならず、病気の人のためにどうにかしようとして動いているのだ。それに嘘がないと思っていることが大きかった。
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