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第4章
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しおりを挟む(あれは、何だったんだろ? 今、思い出しても不愉快だわ。私を気安く呼ぶより、父さんをその辺にいる人と同じように彼女が言うのを耳にするなんて、許せない。あんなこと、よく口にできたものだわ。……萌音には、そんなこと思わなかったけど。あの女がやるのは、どうしても許せない。今、思い出しても腹が立つわ)
そんなことを思うりらの感情に寄り添うように車窓からの景色は、絵の具をぐちゃぐちゃに混ぜたような色合いになっていて、綺麗なんてものには程遠くなっていたが、りらがそれに気づくことはなかった。
そして、なぜ、そんなにも怒りを抑えられないのかがわからなかったが、りらは許せない何かがはっきりとあるのにそれが無意識で起こっていた。
この時のりらにはそれが何を意味しているのかまでわからずにいた。いや、わかろうとするのを避けていた。
友人たちは、りらが変なのにつきまとわれているとして、夏休みに入るまで大学の中でりらが1人になることはなかった。
それこそ、りらがブチギレてらしくないことをしているのにまるで怒って当たり前だと言わんばかりにしていた。
まるで、どこぞの女王のような振る舞いをしたが、誰も疑問に思わなかったようだ。りらも、自分がそんなことをしたことをやり過ぎたと思うことはなかった。
(何で、大学にいたんだろ? まぁ、もう会うこともないからいっか。思い出すだけでも、腸が煮えくり返る)
そこまでりらが何に怒っているのかを追求することもなければ、おかしいと言う者すら、りらの周りにはいなかった。
りらも、何にそこまで腹が立って仕方がなかったのかがわからなかったし、彼女にそこまでせずにはいられないものを感じたはずなのにただ失礼がすぎると思うばかりだった。
「本当に大丈夫なの?」
「何なら、うちに来る?」
「うちでもいいわよ。りらの料理が食べられるもの」
「ちょっと、それ、羨ましすぎる。りら、ぜひ、家に来て」
りらが、料理上手だと知っている人たちは、そんなことを言って来て、それを聞いたりらは笑ってしまった。
「ごめん。予定があるの」
「そっか。予定あるなら、仕方がないわね」
「りらの手料理が夏休み中、満喫できると思ったのに」
「バイト代が出るなら、考えるわ」
「ホント?!」
「りら。払う子もいるから、気をつけた方がいいわよ」
大学の友人たちは、りらのことを物凄く心配してくれていて、夏休みを一緒に過ごそうと誘ってくれる人たちが、たくさんいた。その多くが、りらの料理をあてにしていた気がする。それが、かなりの本音だった気がする。
「何かあったら、連絡してね」
「あー、それが、電波の悪いところに行くから、連絡つかなくなるかも知れないの」
「そんなところあるの?」
「今どき?」
「ちょっと、りらの気分転換になるなら、どこでもいいじゃない。連絡できたらしてね」
「そうそう。いつでも、家に来ていいからね」
「ありがとう。みんなも、ありがとう」
失礼すぎる変なのに会ってしまってから、友人はすっかりりらのことを心配してくれていた。少しでも笑わせようとしている気がした。
(みんな優しいな。……でも、母のことがあってから話しかけられてる気がする。前から、こんなだったっけ? ……変だな。思い出せない。よっぽど、疲れているのね。それこそ、あんな失礼なのに会って腹が立った後なら仕方がないか。ここで、会うはずがないのに平然と現れるんだもの。怒りたくもなるわよね。……それにしても、料理なんて振る舞ったことあったかな? 思い出せないわ)
りらは、深く考えるのにも疲れていた気がする。激怒するのも仕方がないことをされたと思うばかりで、自分のところにそんな輩が現れたことに不思議に思うことが長続きすることはなかった。思い出すたび、腹が立っても、それだけだった。
そうなる前に夏休みに父のところに居ることにあっという間に決まった気がする。
(彼女に会った後だっけ? その前からだったっけ? 近況のはずなのに変な感じ)
それから、確か、りらは移動手段を確保しようとしたが、それを先回りするように車で迎えに来てくれるとなり、りらはその車で移動することになって、その車にりらは朝から乗っていた。
そう、今、現在、その車で父の家に向かっているところだった。
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