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第4章

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そのうち、母の恋人に誘拐されそうになるも、何を間違えたのか。大学が一緒の女子生徒を誘拐してしまったようだ。

りらの代わりに誘拐されて酷い目にでもあわされることはなかったと思いたいが、結果的には死ぬことになったのだ。何とも言えない気持ちになってしまった。

それに焦った母たちは目が覚めて騒ぎ立てた間違われた女性にパニックを起こして、運転を誤って事故にあうことになってしまったのだ。

母も、その車に乗っていた。誘拐しようとして失敗したのではなくて、痴情のもつれで運転操作を誤ったということにされたのは、母の恋人のはずの男性が、間違えて誘拐したはずの女性と高校生の頃に付き合っていたのがわかったことで、そういうことになったようだ。

間違えたふりをして、金をふんだくろうとしたようだ。母は、またも本命ではない若い男に騙されていたようだが、それをやり返すことがないまま、終わることになるとは本人も思ってはいなかったのではなかろうか。

あまりに呆気ない母の死にりらは、何が何だかわからなくなっていた。


(どんなリアクションを期待してたんだか。私を誘拐して、父さんにお金を出させようとしていたのなら、母さんにとっては、その程度の娘ってことよね。……期待してたことなんて欠片もないはずなのに変な感じ。呆気なく死んだことにショックを受けているのか。父にお金を出させようとしたことか。そんなことしたら、味をしめて繰り返しそうだと思ってしまうのも早かった。母の死よりも)


それに行き着いたりらは、祖父母の葬儀の時より、どっと疲れが出て仕方がなかった。

母のやることなすことで、りらは散々な目にばかりあっていたが、ここまでになっているとは思いたくなかった。

お金のために娘を誘拐して、身代金を要求しようとするまで落ちぶれていることを知りたくもなかった。


(大体、お金がないと若い男性と付き合ってられない時点で、その程度の金づるとしか思われていないことを認識していれば、あんな最後を迎えることはなかったでしょうに)


りらは、男性の方にも全く同情できなかった。でも、高校の時に付き合っていたという女性は、巻き込まれただけのように感じてならなかった。

それなのに誘拐事件の共犯者となっていた。そんなことをしたと面白おかしくニュースで取り上げられて、りらがいたたまれなくなったのも、すぐだった。


(私を誘拐しないで、別の人を利用するなんてね。誘拐の協力も共犯になるつもりもなかったのに巻き込まれたのなら、あの女性が一番の迷惑を被ったってことよね)


りらは、会ったことも話したこともないであろう女性がやたらと気になって仕方がなかった。


(会ったことなんてないはずなのに。どうして、こんなにも気になってしまうんだろう。わからないな)


気に掛ける自分がわからなかった。だからと言って、大学で彼女の友達を探して、どんな人だったかを聞くことはなかった。

りらとしては、山奥で不便だと思っていても、母や祖父母に振り回されずに外のことを知らずにいられた方が幸せだったのではないかと思うこともあった。

それとも、散々な目に合うのもいい経験になってよかったと思うべきなのか。全くわからなかった。つらい経験なんて、しなくていいのなら、しないことに越したことはないはずだ。


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