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第4章
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しおりを挟むりらは、父に関することで色々思い出した中に自分は愛されていたかも知れないと思うものがあって、それが嬉しくなって笑顔になっていた。
(何不自由なく過ごせるように少なくとも、お金は出し続けてくれていたのよね。そんな話を向こうから私にしてくれることもなかったし、母もしてくれなかったけど。どう考えても、母たちの散財っぷりからして、お金がそっちに使われていた気がする。それに対してお礼の一つも、感謝の言葉もなかったのに。父の日の前後にプレゼントの一つも渡さない娘なのに。父の誕生日も聞こうともしなかったのに。あの家に行きたいと言えば、拒むなんてしないのに。私、1人暮らししてからも、チャンスはあったのに)
そう思うと泣きたくなってしまった。
(あぁ、どうしよう。今更、あの家に着いたら、父さんのことを聞いたら、変かな? それこそ、頼る大人が父さんしかいなくなったから、必死なんだって思われるかな?)
そんなことを考えているうちにりらの表情は曇っていくのも早かった。今度は別の意味で泣きたくなってしまった。
(とりあえず、父さんに包み隠さず伝えてもらおう。本当のことだもの。伝えてくれる人なら、わかってくれるはず)
とりあえずは父の家に着いたら、やることができたとりらは思うことにした。
ずっと、浮かない顔で顔色も良くなかったが、そこから再び、昔のことを思い返すことにしたのは、嬉しさと感謝が全く足りていなかったことを痛感してしまったのをこれ以上、考えるよりも他のことを思い出すことに専念することにした。
母は父と暮らしていた時、やたらと怒っていたようだ。それもおかしいかも知れない。あの人は、機嫌が悪いと怒って当たり散らしてばかりいた。それは、昔から変わっていないことだったはずだ。誰かと暮らしていたから怒っていたわけではない。不満があると怒ってばかりいる人だった。
りらが産まれる前に里帰りしたまま、戻って一緒に暮らすことをしなかった母だが、りらが物心ついた時には、母が父のことで怒っていない時はなかったと思うほど、父のことでやたらと怒ってばかりいた。祖父母も、そうだ。父のことで、悪口しか言わない人たちだった。
(父だけじゃない。気に入らない人のことを悪く言わないなんてことができない人たちだった。よくあの人たちと暮らしていたのに同じようにならなかったものだわ。似たくないって必死だったのもあるのよね)
幼稚園に入ったりらは、しばらくして父に会える日が決められることになった。それを一方的に決めたのは、母だった。りらが父に会いたがっていると言ったことで、そうなったようだが、母にそんなことを言って困らせたことは一度もない。
そもそも、父の話題を出しただけでも、怒鳴り散らされるのだ。りらから母にするはずがない。それなのに母は、父に勝手に嘘をついていた。
「いい加減にしてよ! こっちは、都合をつけてわざわざ会いに来てるのに部屋から出てすら来ないって、どうなのよ!!」
りらは、大騒ぎする母の声をぼんやりと聞いていた。母が父の住んでいる家に着くなり、父のいる部屋まで直行するのは、いつものことだった。勝手知ったる我が家のように移動するのに驚いてしまった。
(ここにすんでたことあるんだっけ。よくおぼえてられるな)
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