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第4章
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しおりを挟むりらの作品を萌音の母親は、色んなところに娘の作品として、手当たり次第に応募していた。
それがわかったりらは、こんなことを思った。
(そういえば、どうせ捨てるのだから、私がサインするのも変だって言われてから、サインしてないのよね。それに萌音のサインに拘るように言っていたのよね。あれって、こういう意図があったのね。娘のサインを偽造するなんて、信じられない)
仕上がった作品を捨てているのかと思っていたが、そうではなかったのだ。捨てられていた方が、りらは良かった。
直前に先生が変わったが、前の先生はとても良い先生だった。りらが、そう思ったのは、その先生だけだった。りらがすることなすことを楽しそうに見ていてくれた。
「今日は、学校で嫌なことでもあったみたいだね」
「……わかるんですか?」
「わかるよ。ずっと、君の筆さばきを見ていたからね。せっかくの絵が、嫌な絵になりそうだとは思わないかな?」
「でも、絵を描くのは好きなんです」
「なら、楽しい気分になってから描けばもっと良くなる。丁度、萌音も退屈しているようだ。カードゲームをするのは、どうかな?」
萌音も、その先生を気に入っていた。特にこうして、楽しくなるように遊ぼうと誘われるからだろう。
そんなことをする先生だった。2人共、先生が好きだった。なのになぜ、変わったのだろうかと、りらたちは思っていた。
新しい先生はお金に目が眩んでしまっていたようだ。萌音の作品として応募する手助けをしていたのだ。サインを真似て書いていたのも、その先生だった。
母親の方は、頑張ってもうまくできずに台無しにしてしまったらしく、それからは先生まで巻き込んで、そんなことをしていた。
りらたちが一番素敵な先生は、それを提案されて拒否したことで辞めさせられてしまったようだ。それをりらたちに言えなかったのは、圧力があったからだろう。
(そこまでやる? 先生が、関わっているなんて信じられない。お金がもらえるからって、サインの偽装だけでなくて、コンクールに応募までしていたなんて……)
そんなことをしていたことに気づいた時には、色んなところで賞を取ることになっていて、萌音はあっという間に時の人になっていた。
みんなが、萌音が描いたと思ってちやほやしていた。そうでなくとも、萌音は学校の成績もよくて、家柄もよく、父親がどこかの社長をしているとかで、その界隈では有名な娘だったようだ。
そのため、萌音の名前が、他の人よりも広まるのは、とても早かった。
「ママ! 何てことしたのよ!!」
「りらを教えてあげていたのでしょう? なら、りらの作品も、萌音の作品よ」
それを耳にしたりらは、萌音の母親の言葉に苦笑していた。
(そういうことにしたのね。私が、私でいてもいいと言われたから、隠すことなくしたことで、こんなことになるなんて……。普通でなくて、本気になった結果が、こんなことになるなんて……。ただ、好きな絵を描いていただけなのに。それが、こんなことになるなんて。萌音と一緒の時間を過ごして、好きなことをしていた結果が、こんなことになるなんて思わなかったわ)
りらは、いたたまれない気持ちになってしまった。でも、りらが萌音の母親に何か言うことはなかった。
その代わりのように萌音が激怒していた。
「そんなことしてないわ! 同じ先生に習っていたのよ。私は、りらを教えてなんかない! むしろ、その逆よ。私より、できるのは、りらだもの!」
「違うわ! あんな子より、できないわけがない。あなたの方が、家柄も何もかもが、恵まれていて、上なのよ。負けるわけがないの。あんな片親が何してるかもわからないようなのと一緒にいるのも、そもそも変なのよ」
「なんてこと言うのよ!」
「事実よ。いい加減、自分の立場を理解しなさい。あなたは、あんなのと暮らす世界が違うのよ」
頑なに萌音は事実を言い続けて、母娘の喧嘩となったのを聞いているのは辛かった。りらの家庭のことを色々言われて悲しかったが、ずっと萌音はそんなこと言う母親に言い返していた。
(そう思われていたのね。何となくわかってはいたけど、このままじゃまずいわ。でも、おじ様なら、おさめてくれるはず)
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