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第3章
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しおりを挟むフィロンは、クリティアスと同じく、りらの側にいることになった。りらが頼んだわけではない。彼が望んだことだ。
父は凝りもせず、フィロンに世話役を頼もうとしたようだが、彼もまた森の主であるユグドラシルから、りらのことを任されて来ていたこともあって、王の言葉に従うことはなかった。
(ユグドラシル様って、アルテアの名前を付けてくれただけあるわよね。できる女性代表とできなさ過ぎる代表の男性が揃った感じがするわ。誰も、ユグドラシル様には敵わない。そして、逆の残念っぷりを更新できる男性も他には現れなさそう)
りらは、父と食事を取ったりするようになったが、挨拶程度で親子らしい会話をしたことはない。親子らしい会話をりらと父も知らなさすぎた。
(家族で食事なんて、小さい頃にしたことあるだけなのよね。あの人は、母たちとしていたって思っているみたいだけど。影ながら見守ってくれていたはずなのに。全くされてなかったってことよね)
りらは、死んだ時だけ、たまたま見失ったのだと思っていた。でも、たまたまではなかったようだ。
りらのことを気にかけていたのは、りらが父の家に来る時だけだった。それ以外のことでは、りらがどんな目にあっていたかをまるで知らなかった。
知っていたら、そんなところにいさせはしなかったと悔やむ姿に怒りがこみ上げてならなかった。世話役をいいように解釈していただけなのに。そこまで、任されていないかのようにしたのだ。
(ここに来て、ミハイルたちにブチギレたのも、その辺のことが関係していたからみたいなのよね。父は、その程度の人に世話役や影で見守ることを任せていたのよね。見る目がないのは、親譲りじゃなきゃいいけど。どっちに似ても、最悪そう)
ここに来て、ひしひしとりらは感じてしまった。人間界で頼っていた人物は、常に頼っても応対してくれる人ではなかったのだ。
それを知ったりらは、ぼんやりしていた。
「りら様」
「ねぇ、フィロン」
「何でしょう?」
「あなたに助言した人をここに戻ってから見かけた?」
「え?」
「? 私に話してくれたわよね?」
フィロンは、目をパチクリさせたが、それを彼は思い出せなくなっていたようだ。
「え? 助言……? すみません。何の話でしょうか?」
「……ううん。私の勘違いだったみたい」
「? そうです?」
「……」
(私が聞き間違えた……? ううん、そんなわけは……。私も、思い出せなくなってるところがある気がする)
だが、りらもまた、少しずつ記憶が書き換わり始めている気がしていた。
それにもしかしてと思い始めた。
(アルテアは、あのまま本当に消えてなくなったの? それとも、私と一体化した……? そんなわけない。私は、アルテアのしたこと全てを思い出せない。私が、本物なの……?)
本物、偽物とわけるのも変な感じがするが、りらは奇妙な感覚がし始めていた。
それを払拭するためにりらは、ここに来るまでのことの自分のことを思い出すことにした。
(もしかしたら、そこにヒントがあるかも知れない)
思い出して楽しいことなど何もない人生だったが、そこに意味があるのならりらは、やり直したいと思わずにはいられなかった。
全てではない。今の状況よりも、より良くなるように。世界がもっとよくのるために。そう思わずにはいられなかった。
そんなことをしても、無駄に虚しく、悲しい思いをするだけになろうとも、それでもりらは意を決してそれをやることにした。
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