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第3章
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しおりを挟むアルテアは図書館で、熊の一族のことを調べていた。それは、大きく取り上げられていた。それを見つけて、読む前に気になったのは……。
(そういえば、クリティアスさんって、いくつなんだろ?)
熊の獣人の子供が誘拐されたのは、18年前のことだった。当時、7歳と9歳の兄弟が誘拐された。身代金の要求はなかったが、ある日、ひょっこりと9歳の兄だけが戻って来た。でも、弟は、待てど暮らせど戻って来なかった。
そのせいで、身代金をケチったせいで兄だけが戻って来たと騒がれることになったようだ。
(なんか、聞いた話と全然違うわね。身代金を要求されたわけでもなくて、兄弟2人が家出でもして、片方だけが戻って来たとか? 冒険に出て、帰って来れなくなって迷子になったとか?)
アルテアは、そんな想像をしたが、冒険は冒険でも子供らしい無邪気なものではなかった桑田。
兄の方が、人間ばかりのところで過していたと言ったようだ。弟が、行きたがったから仕方がなく着いて行ったが、そこで迷子になってしまい、逸れてしまったと兄は話したようなのだ。
だが、兄は普段から弟の面倒をよく見ていたわけではなかったようだ。どちらかといえば、弟の方が聞き分けがよくて、やらかすのはいつも兄だったようで信憑性は少ないと思われたようだ。
逆に兄が言い付けに従わずに人間のところに行こうとするのを止めようとして、弟が巻き込まれたと熊の一族の大半が、そう思ったようだ。
そんな記事が書かれたところを読んでいて、あるものを見つけた。
(え?)
兄弟の写真があった。その写真を見て、アルテアは驚いてしまった。
(この子、見たことある気がする)
それは、今のアルテアの名前を与えられる前に会った男の子だった。ストーカーや幽霊だと思った子で、腹ただしい感情を持った少年だった。
でも、アルテアにはその頃のことは覚えていないはずだった。
人間界で話しかけても、みんなに無視されたのも許可なく、あちらに行っていたからにすぎなかったようだ。その上、人間界に勝手に行ったのは弟のせいと嘘をつき、色んな嘘をつきすぎていた。
その上、許可なく、そこで人と接触を無意識にしてしまった彼は、その代償に獣人の要素をすっかり失くしてしまったことで、さらなる嘘をついたようだ。
「身代金をケチったから、弟が戻って来れなかったんだ! 僕のせいじゃない!!」
その言葉のせいで、熊の獣人たちは他の獣人たちと争うことになったのだ。子供が、そんな嘘をつくと思っていなかったことで、騒動が大きくなってしまったようだ。
(……この子を私は、どこで見たんだろう?)
アルテアは、その記事に載っていた写真をコピーして何かと眺めていた。何かを思い出せそうなのだ。
でも、もどかしいかな。何かに阻まれて上手くいかなかった。
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