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第2章
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しおりを挟むカレル王子は王宮で賄えるものをと考えていたが、国民が少しずつ出し合ったものによって、こだわりのレシピの材料が簡単に買えるまでになり、それで作ったプリンを王妃が口にするまで、1ヶ月後のことだった。材料費は簡単に集まったが、こだわりの材料が届くまでに月日がかかってしまったのだが、王妃はそれにとても感激していた。
プリンを見るなりわかったようだ。それほど、思い入れの強いものだったのは、王妃の表情でも明らかだった。
【これは】
「ユグドラシル様が、教えてくれたレシピです」
【まぁ! ユグドラシル様は、覚えていてくださったのね!】
アルテアが最初にシェフ長に教えたプリンも、気に入ってくれて、毎日嬉しそうに食していた。他のものが食べられなくとも、プリンだけは食せることから、3食をプリンで食べてもらおうとしたが
王妃は国民が月1のお菓子をようやく食べれるように動いているのだからと自分も月1にしようとしていたが、国民がみんな王妃が元気になることを望んで動いていることを知って、1日1食を頑張つて食べるまでに回復していた。
それだけでも、医者は奇跡を見ているようだと喜んでいて、王子も感激していた。周りの妖精たちもそうだった。
あまり食欲がないせいで、すっかり痩せてしまっていた王妃だが、アルテアの教えたプリンを毎日少しずつ食べるうちに話す言葉も増えていって、笑顔も増えた。
それにカレル王子は益々感激していたし、仕えている者たちも嬉しそうにしていた。アルテアも、訪れては王妃と話した。救い主となったアルテアとカレルがお見舞いに来てくれるのにも嬉しそうにしていた。
【こんな幸せなことはないわ。救い主様とカレルが来てくれて、国民も私を思ってくれている。このプリンを食べるたび、ありがたくて涙が出るわ】
アルテアに感謝しっぱなしで、妖精たちが再びお菓子を食べる喜びで活気づいているのも感じているようだ。
だが、こだわりのプリンを目の前にした時は、それまでと違っていた。目をキラキラとさせて、子供のような無邪気な笑顔を見せたのだ。そんな反応を見せる王妃に王子や周りも驚いていたが、年配の妖精は感慨深げに見ていた。
【王妃様の一番の好物ですな】
【そうなのか?】
【はい。あの頃は、そのお菓子のおかげで勉強がよく進んだものです】
年配の妖精の言葉に王子は更に驚いていたが、王妃は気にすることなく、それを食べた。その時の王妃はそれまでと違っていた。子供のように見えた。
【懐かしい。あの頃を思い出すわ】
嬉し涙を流し、更には国民が自分たちのお菓子の代金にするのを少し王妃のためにと使うことを知っている分、王妃は更に感激していた。
【自分たちのお菓子代を私のために。これは、こだわりの材料が多いから、値も張るでしょうに】
だが、その分がすぐに集まって、今も集まっていると知って更に感激していた。
それが、よほど嬉しかったようだ。こだわりプリンを数日食べた王妃はふせっていたのが嘘のように元気になったのだ。
【王妃様だわ!】
【元気になられたのね!!】
長らくふせっていた王妃が、国民の前に姿を現したことで、国中がお祭り騒ぎになった。
それは、アルテアが最初にここに来た時よりも何倍も凄い盛り上がりだった。
(凄い。カレル王子も嬉しそう)
そのプリンは、奇跡のプリンとして、病気やふせっている他の妖精にも食べさせることになった。
それは、王妃にしたように国民がいつか、具合が悪くなった時に身内や自分が食べれるようにとせっせと寄付をして賄うことになった。
たくさん寄付に励む妖精は、王妃が特別に表彰したりすることにもしたようだ。
それを知って、それまで寄付に見向きもしていなかった妖精もしれっと寄付を始めた者もいたようで、それにアルテアは苦笑してしまったが、そんなことが決まる前から熱心に寄付する者たちが多いことに喜んでいた。
(優しいな。……まぁ、中には寄付なんてしたくないって自分のお菓子のためにしか働いていないのもいるみたいだけど。王妃からの表彰があると聞いて頑張り出す妖精もいるところが、個性よね)
元気になった王妃とユグドラシルは、週に一度は話をするようになっていた。昔を懐かしみつつ、今できることを模索するための話し合いだった。
それにカレルも時折参加して、いいアイディアが生まれるのに母と森の主の凄さを垣間見たようだ。もっと頑張らねばと王子も、そこに参加するたびやる気に満ちていた。
アルテアは、最初に会った時よりも、もっと楽しげで忙しそうにしながら、飛び回る妖精たちを見て笑顔になっていた。
ちなみにプリンは、ダレイオスの好物になった。こだわりのプリンではなくて、アルテアがアレンジしたものが好みだったようだ。
(ぷるぷるしたものが、好みだったみたいね)
王宮に勤める者たちは、お給料としてお菓子も付くことになった。彼は、毎回それでプリンを食べているのを知らない者はいないほどになったが、本人は周りにはバレていないと思っているようで、そこが可愛らしいとアルテアは思ってしまった。
王宮つきの護衛の隊長をしているのだ。威厳は保たれなければならないのだろう。それで、茶化す勇気のある者はいなかったことも大きかったようだ。
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