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第2章

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“あら、凄いことになりましたね”
「すみません。気づいたら、ペラペラと話してしまっていて……」


(まぁ、私の場合、いつのものことみたいになってるけど)


ユグドラシルは、ぐったりして現れたアルテアの報告を聞いて、楽しげにしていたが、話しを聞くうちに驚いていた。

3回目に妖精のところに行った時も、ユグドラシルもまじえて話をしたのだが、カレルが王妃の話題を出したのは、その話を終えてからだったのだ。


(内々の話だからしたくなかったのか。ユグドラシル様を心配させたくなかったのか。でも、プリン用の材料をどうやって届けてもらうかとか考えないと私が数日置きに届けることになるのよね。プリンだけは、王宮で作れるようにしても問題ないと思ってるんだけど、まずかったかな?)


“……そうでしたか。王妃は、そこまで具合がよくないのですね”
「王妃様をご存じなんですか?」
“彼女の子供の頃をよく知っています。彼女は、私の側まで来ては、よく質問攻めにしたり、私を飾り立ててくれていました”


それは、とても懐かしそうな声だった。


(質問攻めはわかるけど、飾り立てるって、クリスマスツリーみたいなことされたってこと? ……それって、ここに来れていたってこと??)


「それって、行き来できていたってことですか?」
“えぇ。あの頃は、行き来も自由にできていました”
「……また、できるようになるといいですね」
“……”


ユグドラシルは、何も答えてくれなかった。アルテアが、そこに入れても行き来までにはならないと思っているようだ。


(一体、何があったんだろう……?)


その辺が物凄く気になったが、ユグドラシルが話す気がない今は深く聞くことをアルテアはしたくなかった。


“それで、プリンでしたね”
「えぇ、材料を定期的に妖精のところに運ぶことって可能ですか?」
“えぇ、街からオノマルコスにここに送ってもらって、ここから妖精の王宮に運べるようにすれば可能ですよ”
「でも、それだと……」
“直接するより、安全です。お菓子も、あなたが忙しくても、街で作ったものを運べるようにすれば、月1のお菓子の日も大丈夫になります。その時は、送る場所を何か所かにすれば、王宮まで取りに行かずに手近なところで手に入るようになるので便利になるはずです”
「っ!? それはいいですね! そこで、採れたものをお菓子と交換できるってことにすれば、妖精たちも楽しく働けそうですし」
“その際は、お菓子の1つと交換できるものを明確にしておくとわかりやすいかも知れませんね”


アルテアは、それに頷いてメモをした。ユグドラシルは、以前もそうして物を送ったことがあるようだが、妖精のところで、複数の箇所に送る場所について明確な印があれば、転送も可能になる話を次回、カレルにすることになった。


「あー、でも、王妃様が気に入ってくれなかったら、別の物を考えないとなんですけど」
“それは、大丈夫ですよ”
「?」
“彼女の幼い頃の好物です”
「え?!」
“毎週、プリンの日があったんですよ。それ以外の日は別のお菓子でした”
「毎日、おやつの時間があったんですね」
“えぇ。ないとあの子は、勉強をしなかったので、特別に設けられていました”


それを聞いて、アルテアは笑ってしまった。

ユグドラシルは、その時のプリンのレシピを知っていたので聞いたら、すぐに教えてくれた。それをアルテアは、すぐにメモした。


(こだわりのプリンって感じね。これ、私が食べたい)


「凄く美味しそう。あー、こっちの材料も、手に入りますか? できれば、私の分とクリティアスさんの分も追加で」
“ふふっ。えぇ、もちろんです。でも、すぐには難しいです。こだわりのものばかりなので”
「でしょうね」
“ですが、早く入手できるように頼んでみます。彼女に食べてほしいので。アルテア、それまでは、この話は内緒にしてください”
「わかりました。えっと、それまでは、エウフェミアさんが書いていたレシピと私の知ってるのをアレンジしたのにしておきますね」


エウフェミアのレシピの中にあったが、具合がよくないとなるとさっぱりと食べれるものがよいかと思ってアレンジすることにした。


アルテアは、そこから、すぐに妖精のところに行って、プリンを庭で作って出来上がるまでにユグドラシルをまじまえて今後の月1でみんながお菓子を食べれるように妖精たちが各々で働いて食べれるようにした案を話すとカレルたちも喜んだ。


【お菓子を働いた分食べれるとなるとわかりやすいですね】
「無理なく働いてもらえればと思ってます」


種の量や花びらの量、花の実の量などを事細かにこのくらいで、お菓子と交換としたことで妖精たちも俄然やる気になったようだ。

だが、自分たちが食べるお菓子よりも、王妃が食べているプリンの代金を支払いたいという国民が多かった。

少しでも元気になってほしいと思い、それだけ慕われている方なのだろう。


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