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第2章

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(3回目にもなると緊張しないかというとそうでもないものね)


妖精のところにアルテアはいて、そんなことを思っていた。前回は、最初に来た時と同じく王宮にそのまま向かったのだが、荷物も前回と同じで、花のことを調べて街で売れそうなものをリストアップしたものを持って来ただけで、そんなに大した荷物ではなかったが、妖精たちは大騒ぎした。

特に王宮に仕えている妖精たちは、出迎えようとしていたところらしく、既にアルテアが自力で到着したことにショックを受けた様子を隠しきれていなかった。


「えっと」


(ここで謝ったらまずいわよね?)


王宮の面々は、救い主となったアルテアを出迎えるために訓練していたようだが、アルテアが歩いて来るスピードが勝ったようだ。


(花たちも、避けてくれたから、ここに来れば大丈夫だろうと思ってしまったのだけど、まずかったみたいね。……何がまずかったのかが、さっぱりだけど)


王宮の護衛隊長をしているダレイオスという妖精は、訓練不足で出迎えが間に合わなかったことに平謝りしていて、その日の護衛たちも顔色悪くしていた。それを見てしまったアルテアは申し訳ない気持ちでいっぱいになってしまった。


(出迎えって、なんか凄いことになってきてるわね)


そんな状況で、アルテアは次はゆっくり入口付近で待っていた方が良さそうだと思いつつ、荷物を持たせたら潰れそうだと思った。

気まずい雰囲気の中で、ダレイオスが申し訳なさそうに謝罪するのにアルテアもいたたまれない気持ちになってしまっているところにカレル王子がやって来た。彼も大慌てで来たようだ。


【アルテア様、お待たせして、申し訳ありません】
「いえ、私の方こそ、お待たせしすぎましたよね」


街で買った本を読み漁ってしまい、使えそうなのをまとめていたら、前回アルテアが来てから2週間が過ぎてしまっていた。


(もっと早くくるつもりで、お菓子の材料も用意していたのに。本に夢中になりすぎるとは思わなかったわ。……私、本を読み始めると集中しすぎてしまうみたいね。気をつけなきゃ)


だが、アルテアの言葉にカレルはきょとんとした。


【そんなことはありません。材料を買うにも、街とやらまで行かれるのですよね? その移動のみならず、材料を買うお金のこともあります。今回は、アルテア様の善意でお菓子を妖精みんなにとおっしゃってくださっているのです。1、2ヶ月は少なくとも先になるものと思っていたんです】
「……」


(つまり、出迎えも訓練途中だったってこと……? 凄い楽しみにしているはずなのにその辺は気長なのね)


とりあえず、お菓子を渡し、アルテアは街で調べたことを話すと、更に恐縮されてしまった。


【こんな短期間に私たちのために調べてくださったのですね。ご無理をなさったのでは?】
「そんなことないです。元々、本を読むのが好きだったみたいで」
【だった……?】


不思議な言い回しをしたことに王子だけでなく、他の妖精たちも首を傾げていた。


「あ、えっと、その、私、ユグドラシル様のいる森の中に突然現れたらしくて、それまでのことあんまり覚えていなくて」
【っ!?】
「名前は、未だに思い出せなくて、ユグドラシル様に付けてもらえて助かってるんです」


妖精たちは、記憶がないことに何とも言えない顔をした。

だが、アルテアにしたら大したことではない。名前は、未だに思い出せていないが、ユグドラシルに付けてもらった名前がある。他は、必要な時に出て来るが、それでもわからない時は調べるか、周りに聞けばいいだけだ。今のところ、困ったことにはなっていない。


「でも、色んなことしているうちにお菓子のレシピをスラスラ書けたり答えられたりしてるので、無意識にしていることも多いんです。今回は、本を読みだしたら集中して止まらなくなるのもわかったし。とりあえず、やってみればわかりますから」
【アルテア様】
「無理はしてないですよ。そんなことしたら、周りが止めてくれますから」


アルテアは、努めて何でもないように話した。本当に本人とって、何でもないことなのだが、あまりにケロッとしているのも、どうかと思うので色々配慮した顔をしていた。

そこから、ユグドラシルがアルテアが救い主となった状態だから、会話が可能だと言って話をしたがっていることを伝えると……。

王子よりも、周りがわたわたとして準備に追われるのを見ることになった。


(大丈夫かな?)


【……救い主様が現れた状態なら、ユグドラシル様と話せるって習っていたのに。すっかり忘れていました】
「……」


(習うんだ。王子も、大変ね)


カレルは、お菓子を配ることやお菓子を定期的にみんなで食べるために物々交換できるものについての議論をしていて、すっかり忘れていたようだ。


(まぁ、お菓子が月1でも食べれるようになるのは、ここでは一大事よね)


アルテアは色んな言葉を飲み込んで苦笑するしかなかった。


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