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第2章
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しおりを挟む“凄いことになりましたね。あなたが、妖精の救い主に選ばれるとは……”
ユグドラシルは、アルテアの話を聞くよりも、アクセサリーを見て、そう言葉にしていた。森の主は、前にも見たことがあるようだ。声音がとても懐かしそうに聞こえた。
「ユグドラシル様、妖精たちはみんな凄く元気でした。お菓子は、長らく食べれていなかったらしくて、妖精の王子が両親や古い者に聞くばかりで食べたことがなかったみたいです」
“そうでしょうね。他の王族には会えましたか?”
「いえ、カレル王子だけです」
“……そうですか”
ユグドラシルは、他の王族を気にしていたのは、アルテアにもわかった。世代交代していても、知っている者がいないかと思ったのだろう。
「妖精たちは、蜂蜜のお菓子をどれも気に入ってくれました。ただ、妖精全員分には全然足りていませんでした。あと2回は同じ物を届けることになりました」
“2回。……そうですか。私が知る頃より、妖精たちは少なくなったようですね”
「……」
それだけでも色々と様変わりしていることがわかったようだ。
(それだけ、あそこを行き来できる人がいなかったということよね)
アルテアは、何とも言えない顔をしていた。
“そのアクセサリーがあれば、あなたがあちらに行けば、すぐにわかります。下手な約束をするよりも、断然良かった。それに妖精たちは、王家の花を咲かせた者には絶対的な敬意を払います。王族すらも、そうです”
「みたいですね。王子に急に様付けで呼ばれて、名前で呼んでくれと言われて、流石に呼び捨ては慣れるまで無理だと答えてしまいました」
“それも仕方がありません。でも、呼び捨てせずに様付けで呼び合うのは良いかも知れません。王子というなら、まだ年若い分類に入るはず。まだ、王位を継いでいない状態ですから、あなたに対等のように話ができると知れれば、皆の目もそういう風に見られていくはずです”
(妖精の世界も色々とあるのね。でも、護衛している妖精も、王宮に仕えている妖精も、王子のことを蔑ろにはしてなかったし、他の妖精たちのことも思っていた。あれを見聞きしてしまうと早くみんなと同じものを食べて、次のお菓子の話をしたいと思ってしまうわ。色んなお菓子を堪能してほしいし、好きなお菓子をチョイスして食べてもらいたいものだわ)
アルテアは、そんなことを思っていた。
「そうだ。ユグドラシル様、街の本屋で妖精のところで採れるもので、今のニーズにあったものを売れないかを調べて、その代金でお菓子の材料を買えるようにしたいと思ってるんです。カレル王子は半年に1回でみんなが食べられるといいと言っていたんですけど、私思わず月1で考えていると言ってしまって」
“月1。それくらいなら、無理なくできそうですね。……本当なら、毎日のおやつが買えるようにしたら喜びもひとしおだと思いますが、また食べられなくなった時の反動を考えれば、妥当でしょうね”
「ですよね」
食べられるとわかって、食べ過ぎてしまうと大変だと思うのは仕方がないと思う。
それに物々交換になるとはいえ、無理をしすぎれば、あの場所が荒れかねない。
(でも、何が売れるかを調べてみないとわからないのもあるのよね。妖精の作ったものだとバレるわけにもいかないし、花を加工したり、染め物に使ったりするとか。花の実を売るとかよね。加工してもらうのは、街の人たちに依頼した方がいいような気がするけど)
そんなことを思ってユグドラシルに話した。
“確かに全部を妖精たちのところで作ったのを売ると値は上がるでしょうが、どこで作ったものかを聞かれて、この森の特産だと言っても妖精のことに行き着く者も現れるかも知れません。できれば、それに行き着かないように上手く誤魔化せる方がよいと思います”
「えっと、とりあえず、持ち出してもいい花の種もいいと言ってましたが、珍しい花だと危ないですよね?」
“そうですね。花の種は、この森で育てる方向にした方がいいでしょうね。その花の特徴が蜂蜜にあえば、新しく花畑を作ることにして、街の人たちに育てやすいものなら、花屋で売ってもらうことにしてもいいかも知れませんね”
「花屋。それもいいですね」
とりあえずは、アルテアが花について調べることにして、どんなものが売れそうかをアルテアが見聞きして、後で、妖精のところで話し合うところにユグドラシルも、参加することになった。
「ユグドラシル様も、あちらに……?」
“あなたが、救い主となったことで、私も、街のオノマルコスと話すような場所で会話が可能になっているはずです。その辺りも、王子に聞いてみてくれれば、わかるはずです”
「わかりました」
(ずっと間に入り続けることになるかと思ったけど、話し合いをいっぺんにできるなら、それが一番よね)
アルテアが、そんなことを思っていると女王蜂たちがやって来て、どの蜂蜜が一番だったかを聞きたがって大変だったが、甲乙つけがたく喜んでいたことに蜂たちはご満悦だった。
あと2回で妖精みんなが食べられると知って、食べたあとの反応をまた聞きたいも女王蜂たちは言っていて、アルテアは必ずすると伝えた。
(やっぱり、他の巣には負けたくないっていう闘志を感じるわ。まぁ、それで美味しい蜂蜜になるんだから悪いことではないはず)
アルテアは、そんなことを思わずにはいられなかった。
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