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第2章
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しおりを挟むクリティアスは、森の見回りやらを今日くらいやめて、アルテアについていようとした。動物たちの突撃やらもそうだが、アルテアがまだ疲れているように見えたからかもしれない。
「なら、ユグドラシル様のところに一緒に行く?」
そう言うとクリティアスは、顔を顰めた。
「……見回りに行く。何かあれば、木々に連絡を頼め。すぐに行く」
「ありがとう。近々、街に行きたいのだけど、荷物が多くなりそだから、早めに都合をつけてもらえるとありがたいな」
「そんなに買うのか?」
「お菓子の材料だけじゃないわ。それより、本が色々とほしいものがあって」
本と聞いて、クリティアスは察するものがあったようだ。それに街にアルテアを1人で行かせるのは危ないのもわかっていた。
「わかった。2、3日中に行けるようにしとく」
「ありがとう」
妖精たちのところに再び行くのに間を開け過ぎられないとクリティアスも思ってくれているようだ。それに欲しい本がすぐに手に入るとも限らない。そうなれば、取り寄せなくてはならない。
(それにユグドラシル様に話して、予定が変わるかも知れないけど。本は妖精に関係なく、私が知りたいのが大きいのよね)
そこから、アルテアはユグドラシルのところに慣れたように歩いた。クリティアスが怒ってくれたおかげで、無謀な体当たりを彼女にしてくる動物はいなかったと言いたいが、やらかす動物はいた。聞いていなかったからと言い訳できそうだが、今日はまだ聞いていなかっただけの動物ばかりだった。
でも、その動物を他の動物が阻止して怒ってくれていたから、なんだかんだと言っても学習されているのは確かだ。
(体当たりを止めようとして、体当たりで止めようとするのは見ていて怪我しないかとハラハラするな。動物たちは、じゃれてるだけなのかも知れないけど)
だが、動物同士は慣れっこのようで、アルテアが思ったより元気だった。そこから楽しくなって遊ぶのもいた。
そんな時にぴぃと鳴いたのは、小鳥だった。
「おはよう」
小鳥は、頭に乗らずに肩に乗った。歩いているアルテアの頭の上は、落ちやすいと思ってのことだろう。アルテアは慣れたものだった。
その小鳥が一番知りたがりが強かった。アルテアは、自然と話し始めていた。
「妖精は、一番大きくても、このくらいだったわ。私が会った妖精だけだったから、もっと大きい妖精もいるのかも知れないけど」
小鳥は、そういう話を聞くために現れていた。アルテアが見たままを話して聞かせた。
アルテアの側でうろちょろしている動物も、そうだ。クリティアスが居なくなっても、怒られたこともあり、アルテアの行く手を邪魔しないようにしながら、アルテアの話を聞いていた。
「あとは、それより低い者ばかりで、花びらを加工して洋服に仕立てていたわ。みんな、凄くお洒落だった」
それとお菓子が好きで、羽根で飛んでいたことやらを話した。おとぎ話でも聞くようにしていた。
あまり詳しく話すことなく、ぼかすところはぼかした。彼らは人間の言葉を話せないが、話せる者の耳に入ってもおとぎ話の話だと思われる程度にした。
あそこが危険にさらされないようにしてのことだ。動物たちが、他所で話したところで広まることはないだろうが、知らなければ危険なことにも合わないで済むはずだ。
「っと、もう行かないと。みんなも、いつものように手伝いをしてくれる?」
動物たちは任せろと言わんばかりに頷いて、各々ができることをしに行った。ぴぃと小鳥も鳴いて飛んで行った。それをアルテアは見送りながら、こんなことを思った。
(飛べるって便利よね)
そんなことを思って眺めていた。それは、妖精たちを見たことも大きかった。
妖精のところでは、飛べて当たり前のようになっていて、人間のアルテアだけが歩いていたのだ。そのせいで、羨ましくなってしまっていた。
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