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第2章

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アルテアは、妖精の住まうところから帰って来ていた。ユグドラシルの方には木々から連絡してもらった。妖精のところにはちゃんと行けたが、森の主への報告は明日ということで、アルテアはそのまま帰宅することになった。


(まぁ、私も頭の中、整理しないとぐちゃぐちゃだけど……。すぐにでも、聞いてもらった方がいいこともある気がするのよね。……こんないっぺんに色々あるとは、流石のユグドラシル様も思わなかったみたいね)


クリティアスも、気にしていたのか。早めに帰って来ていて、家の外の小さな動物用の水飲み場や木の実が食べれるところを綺麗にしていた。

言葉を発せられず、動物の姿のままで行く宛もない者たちも、この森には多くいた。そんな動物たちが、続々と集まって来るようになっていた。この家の周辺なら安全だと言わんばかりに寛ぐようにもなっていた。

それにクリティアスが森の見回りやらをするようになってから、他のところもだいぶ安全になったようだが、それでも気が抜けるところは広い森の中でも、そんなにないようだ。

そんな動物たちは、そこで自分たちが食べれる分や水飲み場や水浴び場を利用するのにお礼代わりに情報や薬草、クリティアスとアルテアの食べれるものなどを持って来てくれていた。

言葉で話せない分、意思疎通ができるように文字の練習をしたりして、会話が可能になってもいた。それを教えたのは、アルテアだ。

それによって、助かることも増えていた。クリティアスは、要注意や何か困ってることがある場所の情報を地図で、動物に教えてもらっていた。小さい動物だけでなくて、クリティアスのようなツキノワグマは彼しかいなくとも、他の大きな動物たちもいて、彼らは動物の姿のまま言葉を理解しても、話せないことで出来損ないだのと言われて、家族から見放されて行く宛もない者たちばかりだ。

この森に住み着いていることをユグドラシルが許してくれていたが、アルテアが色々と教えたことで自分たちにもできる仕事があることが嬉しいようだ。クリティアスがカバーしきれない場所を気にかけて見回ってくれるようになっていて、とても助かっているようだ。


(動物の姿のままで、人の姿に完全にはなれなくとも、欠片も変化できないだけで、言葉が話せないからって出来損ないなんて言われて捨てられたり、売られたりするなんてあんまりよね。その辺は、未だに納得も理解もできないわ)


アルテアは、そう思って憤慨していたこともあり、色々と彼らに教えたのは、役立ちそうなことばかりだった。この森で生活できれば、どこかに行く必要はなくなるし、こそこそ隠れて生きていくこともないはずだ。そもそも、隠れる必要なんてないはずだ。

ユグドラシルも彼らが住み着いてからずっと気にかけていたようだが、仕事を与えられて自分たちにもできることがあるとわかって、最近では張り切っている動物も増えた。

たまに野生が過ぎておかしくなる者もいるが、そうなると言葉も理解できなくなって、危険な状況になる。本能が強くなって、この森から出ようとする者は少ないが、落ち着かせるのも一苦労になる。そういう者が、森の中で平和に暮らす者に会うのも、外で理解できない者に会うのも、危険となってしまう。特に理解できない者は、そうなったのを見かけたら、撃ち殺すことにしているらしく、アルテアは色々考えさせられてしまった。


(前までお肉を食べたかったけど、そういう動物がお肉になって売られてるってわかって、屋台でも食べられなくなったのよね。……通りにでお肉が貴重なわけよね)


そんなことがあって、そうなった者を隔離する場所も森の中に確保されることになった。ユグドラシルも、危害を加えて撃ち殺されるよりもいいと思っていた。定期的に食べ物が届けられるが、そんな生活をしていて長生きする者は少なかった。


(人の言葉を忘れていくって、人間で言う認知機能の低下ってことになるのかな?)


そんなことを思ったりもしたが、今はそちらのことより、妖精たちのことだ。アルテアは、自分しかできないことをやるのが、山積みな状態にいっぱいいっぱいとなっていた。


「大丈夫か?」
「……ちょっと、色々ありすぎただけ」


クリティアスは、くたびれたアルテアを見て驚いていた。他の動物たちも、心配そうにしていた。


(明日はユグドラシル様のところに行って、それから街に行かないと。街に行くのは楽しいけど、私1人で行き来すると危険だから困るわ。クリティアスさんの仕事の邪魔をしてしまう。……でも、今回は荷物が多くなりそうだから、着いてきてもらわないと困るのは明らかだけど。街に行く用事ができるたび、これだと困るわよね。どうにかしないと)


その辺もどうしたものかとアルテアは思っていた。でも、ユグドラシルに名前をつけられて守られているとは言え、人間の小娘が森に住んでいると知れ渡れば、物珍しいと思われて売り物にされるのは目に見えてもいた。


(いっそうのこと、動物の耳とか、尻尾をつけるとかしたら、誤魔化せたりしないかな?)


アルテアは疲れすぎているのか、そんなことを思いついていたが、獣人は鼻が物凄く効くのを忘れていた。逆にそんなことをして怪しまれてバレることになるだけだということに全く気づいていなかった。


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