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第2章
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しおりを挟む(座って見る景色も、格別ね。この高さから見るのも素敵だわ。それにいい香り。寝転んで、お昼寝したら、もっと気持ち良さそう)
アルテアは、そんなことを思って眺めていた。あまりに美しい花畑に見惚れすぎていて、何をしに来たのかを忘れかけていた。……いや、すっかり忘れていた。
【誰?】
「あ、えっと、こんにちは」
声が近くから聞こえて、アルテアはハッとした。側にじっと見上げる可愛らしい妖精がいた。
(気づかなかった!?)
周りに妖精たちが他にもいた。隠れているつもりだろうが、見えている。頭隠して尻隠さずという状況だろうか。
花の側にいて、擬態しているつもりもありそうだ。
【……】
「えっと、私はアルテア。あなたは?」
【……アグニェシュカ】
「初めまして。それにしても、あなた素敵な服を着てるのね。それ、あの花びらのよね?」
【っ、そうよ! 私が、作ったの!】
「っ!?」
花びらを使った服を褒めたら、アグニェシュカは嬉しそうに作った過程を話してくれた。
(なんて、楽しそうに話すんだろ)
しかも、花びらを摘むタイミングによって見栄えが変わるらしい。一着作るのにかなりかかって、数時間しか保たないものもあるらしい。長く保たせられても、数日。花びらを使ったものだから、次の物やその先の物までの仕立てを考えたり、新しい花びらやらデザインやらを常に考えているらしいことを教えてくれた。
(凄いこだわりがあるのね)
アルテアは、アグニェシュカの言葉にわからないところを尋ねれば、そこも詳しく教えてくれた。どうやら、服やデザインやらに関するお喋りが好きなようだ。
そんなことをしていると他の妖精たちも集まって来て、アルテアが他の妖精たちの身につけているものを褒めると嬉しそうにして、ファッションショーのようなことが起こった。
割り込もうとするのも時折いたが、順番を取り仕切る妖精もいて、きちんと守らない妖精は参加させないと取り仕切る妖精までいた。
(なんか、手慣れているな)
かなり、その辺はきっちりしているようだ。普段から、よくやっていることが垣間見えた。
見た目が凄く可愛いらしいが、アルテアに見せるのが目的だからとアルテアが困らないように規制をしてくれたようだ。
そもそも、そういうファッションショーのようなことを毎月開催しているようだ。他にも、色々とやっているようだが、今はファッションショーに夢中になっていて、そういうのが好きな妖精たちが集まって来ているようだ。
(凄いな。これだけ、たくさんの妖精たちがいて、同じデザインにならないように各々がこだわりの服やらアクセサリーを付けているのね。……お菓子好き以外にも、こだわりがあるみたいね。ユグドラシル様は、知っているのかな? もしかすると外との交流が断たれてから、こうなったのかも)
こだわりについて、そんなことをアルテアが思っていると……。
【アルテア。甘い匂いがする】
「あ、うん。お菓子持って来てるの」
【っ!?】
アグニェシュカが、クンクンと匂いをかぎ始めた。アルテアが持って来た物にそんなことを言うので、お菓子のことをアルテアも思い出して、何気なく言えば妖精たちは、ピシッと固まったかと思えば、途端に大騒ぎになった。
【大変! 大変!】
【王子様に伝えなきゃ!】
「え? 王子様??」
アルテアは、ここに集まった妖精たちにお菓子を試食してもらおうとしたら、王子に会わないと駄目となったのだ。
その騒ぎっぷりは、ファッションショーをしていた時より凄いことになっていた。
(えっと、どうなっているの??)
アルテアは、順番を間違えたようだと焦ってもいた。勝手に入ってしまったままな状態なのを思い出して、呑気にファッションショーを見ていたことも、まずかったと思っていた。
するとアグニェシュカが、教えてくれた。
【王子様に謁見して】
「謁見?」
【そう。王子様に挨拶して、王子様が歓迎してお菓子を先に食べるの。じゃないと私たちは食べられない】
「……」
(あぁ、そういうしきたりなのね)
どうやら、外から来た者は、まずは挨拶しなきゃいけないようだが、別のことで盛り上がり過ぎてしまったようで、妖精たちはまずい、まずいと焦っていた。
花たちは、妖精たちが王子のところまで案内すると思っていたが、別のことで盛り上がりすぎたのをそれはそれで傍観していたようだ。
なにせ花を使った衣装やアクセサリーだ。花たちも自分たちを褒められているのが嬉しかったようで、慌てたようにアルテアが通る道を作ってくれた。
妖精たちは、お菓子があることにも気が気じゃないようだ。そわそわとお菓子の方を見ている妖精は多かった。
(凄い視線が、注がれてるわね)
【お菓子、たくさんある?】
「一応、蜂蜜の種類ごとにお菓子を作って来たんだけど。好みに合うかは試食してもらわないとわからないかな」
【はちみつ……?】
アグニェシュカは、蜂蜜がわからなかったようだ。こてんと首を傾げていた。
(やっぱり、そこからなのね。ちゃんと伝わるかな)
アルテアはアグニェシュカに話しつつ、これから会う王子が、どんな人だろうかと思っていた。
それに比べて妖精たちは、ファッションショーをしていた時よりも、更にお菓子がもらえると広まったようだ。続々と集まって来ていて、凄いことになっていることをアルテアは、この時知りもしなかった。
妖精が甘い物に目がないことを見くびっていたようだ。
それに何より花たちがアルテアの行く方向の地面を開けてくれていた。妖精たちは羽根があるから、普段は歩くなんてことはしないようだ。
アルテアの行く手をちゃんと花たちが避けるのに妖精たちは驚いていた。それも、ちょっとした騒ぎだったが、アルテアは気づいていなかった。
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