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第2章

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妖精たちが楽しげにしている声が遠くから聞こえた。出入り口付近には、妖精たちはいないようだ。声のする方に移動しつつ、できる限り花たちを踏まないように気をつけて進んだ。


(人間が歩く用には道がないのかな? ……あるわけないか。困ったな。これじゃ、気を遣いすぎて、日が暮れそう)


踏まないように気をつけても、それは無理だった。困り果てたアルテアは、一旦、歩くのをやめてから声に出して、こう言った。


「っと、ごめんね。妖精さんのいるところに行きたいんだけど、踏まないようにするのって、どうにも私には難しくて、足の踏み場があると……。え?」


花たちは踏まれたくないのか。アルテアの言葉に反応したのかはわからないが、花の方が避けて道を作ってくれた。


(避けれるの!?)


その動きにアルテアは、びっくりしてしまった。しないわけがない。これは、あり得ない光景のはずだ。

熊のクリティアスに初対面で威嚇された時よりも、アルテアは今回のことに物凄く驚いてしまっていた。アルテアには、こちらの方が驚きが大きかったようだ。

でも、叫ぶことはしなかった。叫んでいたら、花たちも妖精たちも驚かせていたに違いない。だが、それに気を使って声に出さなかったわけではない。驚きすぎて声が出なかっただけだ。


(ここの花のことも、ユグドラシル様に聞いとけばよかったな。こんなに変わっているというか。意思のある花が咲いているなら、妖精たちうんねんより、蜂の巣箱を置くなんて難しいわよね。でも、入れるかもよくわからないから、詳しい話ができなかったのかも。……まぁ、わからないことは、花たちに聞けばいいか)


アルテアは、そこまで思案してから花を見下ろした。


「えっと、その、ありがとう。あの、さっき聞きそびれたんだけど。妖精さんの声は、あっちからしているようだけど、私が言っても大丈夫な方向かな? 駄目なら、行ってもいい方向に行かせてもらえないるとありがたいんだけど……」


花たちは思案して、声のする方に行けるように道を作ってくれた。アルテアが難なく歩く道幅で大丈夫だと言いたいようだ。

花たちは、それなりに賢いようだ。アルテアが、気を付けて歩こうとしているのもわかってくれていたようだ。


「重ね重ね、ありがとう」


お礼を言いつつ、アルテアはその道を躊躇うことなく進んだ。それでも、時折、見たことない花に見惚れながら、どの花も綺麗だと言葉にしながら歩いた。

道はあるが、花たちを傷つけないように気をつけることは怠らなかった。森の中でも、それなりに気をつけたが、ここでは更に慎重になっていた。避けるくらいだ。踏まれたら、それなりに痛みを感じるのではないかとアルテアは思っての行動だ。

色々と見渡しながら歩いたが、そんなに時間は経っていなかったはずだ。


(あれ? 声がしなくなったわね。びっくりして、隠れてしまったかな? ……驚かせるつもりはなかったんだけど、人間なんて見慣れてないから、驚かないわけないか。困ったな)


だが、花たちはこの辺に妖精がいるとばかりにアルテアが座れるようにしてくれた。……多分、そういうことだと思う。


(座って待てってことかな? ……ユグドラシル様に妖精とのコミュニケーションの仕方を聞いとけばよかったかも。お菓子があれば、大丈夫みたいにしてたけど、失礼なことはしたくないって今更ながら、思ってしまつまてるわ)


そう感じて困りながら、アルテアは腰を下ろした。妖精用のお菓子を地面に降ろして、一息つくことにした。

やはり、気にしながら歩くのは、神経を使うようだ。


(水やりをして歩き回るより、変に緊張して歩いていたせいか。足が変につりそうになっている気がする。ここで、休んだ方がいいのは確かね。足がもつれて花畑にダイブなんてしたくないし)


そんなことを思って、ため息をつきたくなったが、どこで妖精が見ているかわからないため、げんなりしている顔も、面倒そうな顔も、疲れた顔もしないようにした。


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