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第1章
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しおりを挟むそのうち、若き木を治したことや他の木たちも水分不足でまいりすぎることもなく過ごせたことが、話題にのぼらない日はなくなっていくことになった。木々の連絡網は本当に凄いようだ。
それこそ、頼んでもいないのに若い木たちが枯れてしまうと彼女だけが、危機感を持って行動していたのは明らかになっていた。
いつか、雨が降ると楽観視されていた。更には、森の主が目を覚ませば、どうにでもなるかのように古株の木々は思っていたことも大きかった。
“まだ、やってるのか”
“いい加減にやめりゃいいのに”
古株の木々たちは、少女を全く歓迎してはいなかった。少女のことを色々言っては非難してばかりいた。
それが聞こえていないのか。少女は、いつもそれを見聞きしても、何も残らなかった。散々なことを言う言葉だけが、彼女の耳には入ることがなかったのだ。
人間の小娘やツキノワグマが配る水やりなんかに頼らずとも、森の主がどうにかしてくれると思っているところが大きかったのは明らかだ。
その森では、それが当たり前になりすぎていたところもあった。古株の木々だけではない。森に住まう誰もが、そこまで最悪な状況になることはないと思っていた。そこにクリティアスも含まれていた。
でも、少女だけが違っていた。森の新参者だが、これから起こることを森の主がいれば何とかしてくれるという目では見ていなかったのだ。
森の主に会ったことはない。困っていたら、桶を貸してくれた。彼女が頼むとすぐに動いてくれた。
少女は気づいていないが、薬草や木の実を動物たちが届けていたのも、森の主からだったが後者のことは知らないままだった。
目覚めたら、どうにでもなる。いつも、そうしていたから、この森のみんなは自然に頼りすぎてしまっていたようだ。
そんなつもりはなくとも、そうなっていた。特に古株の木々が、既に頼りすぎた考え方が当たり前になりすぎていた。
そんな中で少女だけが、無意識にすぐに動いていた。少女だけだったが、無意識すぎて本人にも説明不能なことでしかなかった。
それから、数日が過ぎた。
(これ以上は、まずい。これからの水を確保しないと)
川の水が低くなりすぎる前に水を色んなところに確保していた。それらは、水やり用のためだけの水ではない。
“雨”
「もうしばらくは降らないわ」
“……わかるの?”
「何となく。ごめんね。たっぷり、あげられなくて」
雨が降るのを切望していたのは、木々だけではなかった。動物たちも、雨が降るのを待っていた。
少女は、水が飲めるところを動物たち用に確保していた。それを汲んでためておいた。それを手助けしてくれたのも、森の主だった。水瓶は、貸してくれた。
そこにせっせと水をためる少女をクリティアスが、眺めていたのは、少し前のことだ。彼的には、そこまで必死にならずとも、雨が降ると思っていたのか大きかったが、そうはならなかったのは数日経ってか、川の量で明らかになった。
「川の水が、ここまで減るのは初めて見た」
「……あとは、雨が降ってくれるのを待つしかなさそうね」
クリティアスは、少女を見ていた。あの時点で、こうなることがわかる者など、彼女しかいなかったことに驚いていた。そして、貯めた水瓶を見た。水やりだけでも、どれだけ大変だったことか。
それをかなりの水瓶に水をいれてストックしたのだ。その量からもわかるが、彼女は自分のことだけを考えて行動をしていたわけではないのは明らかだ。これまでのことでもそうだ。彼女は、自分1人の分だけを確保するなんて考えをしない少女だった。
彼女は、クリティアスが見ていることにも気づいていなかった。気にしていたのは、空だ。少女は、最近は空を見つめていた。
(雨は、まだ当分は無理ね。……あと、私にできることは、あの貯めた水でもち堪えるために策を練ることくらいね)
それが、上手くいくことだけを少女は願い続けた。この森にいるしかできず、他に行くことができない者たちが、雨が降らないことで居場所を追われることになるのは何としても避けたかった。
(何とかしてみせる)
少女は、森の主に起きてもらうことを急かすことも、どうにかしてくれると思うこともなかった。眠っているのなら、ゆっくりしていてほしかった。
そんなことを思いながら、時折、桶やら水瓶やらを頼んだりしていたが、その中を常に水でいっぱいにしてくれとか。水やりをしてやるのに力を貸してくれと頼むことはなかった。必要最低限なことしか頼まずにあとは自力でできることをし続けた。
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