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それこそ芽衣子は、しばらくクラスの女子にも無視されていた。だが、それもつかの間のことだった。

ある日、芽衣子がクラスメイトの名前を呼んだのだ。ちゃんと聞こえていたはずだが、女子は無視したのだ。

すると芽衣子は……。


「えっと、ごめん。名前、間違えてた?」
「……」
「ごめんね。えっと、ど忘れしちゃった。名前、何だっけ?」


呼ばれた女子があからさまな無視をしていたら、芽衣子は無視されていると思っていないせいで、申し訳なさそうにしながら名前を聞いたのだ。

名前を聞くまで、ん?という顔をしている芽衣子にそのまま無視をし続けることができなかったようだ。芽衣子に悪気は欠片もないし、無視されているとも思っていないため、純粋に名前を間違えてしまったのだと思っているのだ。

困り果てた方は、クラス中の視線を集めているような気がして、こういうしかなかった。


「……あってる」
「あ、そうなんだ。よかった。クラス一緒なのに名前間違えて呼ばれたら、嫌だもんね。嫌な思いさせたかと思っちゃった」


ホッとした顔をして無邪気に笑う芽衣子に何とも言えない顔を名前を呼ばれた女子はした。その女子と一緒にいた友達も、この後はどうなるのかと見ていた。


「はぁ、よかった」


だが、芽衣子は名前が間違えていないことに安堵しすぎて続きがなかったのだ。それどころか。それで終わりそうな雰囲気に痺れをきらしたのは、無視しようとしていた女子だった。


「……何なの?」
「え?」
「名前、呼んだんだから、用事なんでしょ?」


ちょっと別のことでイライラしながら話したが、芽衣子はきょとんとした顔をしたのだ。さっきまで、用があったはずなのに何のこと?みたいな顔をしたのだ。芽衣子の方が、そんな顔をするのはおかしいはずなのだが、芽衣子は目をパチクリした。


「え? えっと、あ、そっか。用事があったんだっけ。……何だっけ?」
「いや、私に聞かれても困るんだけど」
「だよね。あれ??」


芽衣子は首を傾げてから、慌てふためくのを見ていたら、いたたまれなくなったのは、相手の女子の方だった。


「……ごめん。私が、すぐに返事しなかったから」
「そんなことないよ。待って。思い出す。えっと、えっと……」


用件を言うのを忘れていたことに芽衣子は、やっと気づいたが、その用件が何だったかを思い出すのに四苦八苦し始めたのだ。それは必死にあーでもないこーでもないと悩む姿に何とも言えない空気が流れていたが、芽衣子は気づいていなかった。


「あのさ。浅見さん、それ誰に頼まれたの?」
「えっと、英語の先生。あ、そっか。もう一回聞いて来るね!」
「いや、いいよ。私が聞きに行く。その方がいいと思う。その、えっと、ありがとう」
「お礼なんて言わないで。用件を忘れたんだもの」


そんなことがあって、その女子とは仲良くなった。その女子の友達とも仲良くなったのは、すぐだった。

芽衣子が透哉のことを狙っているように見えなかったのと天然すぎて嫌味を言われても、それにきょとんとしていることが多くて、嫌味だとそもそも、気づいてすらいなかったことが大きかったようだ。

しかも、天然すぎて嫌味なことをしても意味がないと気づいたのも大きかったのかも知れない。


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