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しおりを挟むそんなことが続いて、芽衣子は憂鬱な日々を送っていた。早く学校についても、透哉が来るのを待ち構えている女子がいて、そこで女子たちが待ち合わせして話し込むようにまでなったのだ。
席に座れないことが続くばかりではなかった。飲み食いしたのを置いて行くまでになっていて、芽衣子はギリギリになってクラスに着くようになっていた。芽衣子だけではない。芽衣子のクラスの面々が、気を遣うようになっていた。
「浅見さん、おはよう」
「お、おはよう」
(あれ? 女子がいない??)
いつもなら、朝でもお構いなしに芽衣子の席に誰かしらが座って透哉と話しているのだが、その日は違っていたことに芽衣子は首を傾げたくなった。
当たり前のようにゴミが放置されるまでになっていたが、この日はそうではなかった。
転校生が来る前のようになっていて、クラスメイトたちも、前のようになったことに不思議そうにしていた。
休み時間になっても、女子が透哉のところに来て話に盛り上がることはなかった。芽衣子は益々わけがわからない顔をしていた。
(なんか、クラスの女子たちの方が教室から出て行ってない? 何で??)
以前まで透哉と話をしていた女子が、いそいそとクラスから、出て行くのに芽衣子は首を傾げるばかりだった。それとクラスが違うのにやって来ていた女子もいなくなった。お構いなしにやって来ていたのが、嘘のように誰も来なかったことに益々わけがわからなくなっていた。
芽衣子は知らなかったが、昨日こんなことがあったようだ。
透哉は質問攻めに合い続け、そのうち芽衣子みたいなのが、隣なのが羨ましいとなったのだ。
「本当に何で、あんなのが隣なのよ」
「早々、天然だとか言われてるけど、あんなの演技でしょ」
そんなことを言いだしたのはクラスが違う女子で、芽衣子のことが嫌いな人物が集まってしまったようだ。なんてことない話から悪口大会のようになったのだ。
「幼なじみとか言う男子のところに毎日言って、迷惑かけてるらしいよ」
「えー、信じられない。幼なじみが可哀想」
自分たちこそ、迷惑なことをしているというのにその自覚もなく、芽衣子の席を占領しながら、くっちゃべりながら、そんなことを話し始めたのだ。
それを聞いていたクラスメイトたちが、何か言う前に透哉がブチ切れたのだ。
「迷惑かけてるかは、本人が思うことだろ。君たちこそ、今現在、迷惑だと思われてる自覚がないんだな」
「え?」
「私たち、迷惑なんてかけてないけど?」
「なら、はっきり言う。迷惑だから、大した用もないのに来ないでくれ。ここで、飲み食いしたなら、各自でどうにかしろ。ここはカフェテラスでも何でもないんだ。それと他人の悪口を言いたいなら、他所でしてくれ。聞きたくない」
それまで、どんな質問でも、毎回同じようなことを聞かれても嫌な顔一つせずに聞き流し続けていたが、そのうちここに何しに来ていたのかを忘れてしまったようだ。
格好いい人がいるというなに飲み食いをして、好き勝手な話をし始めていて、透哉に質問していたことすら、どうでも良くなっていた。透哉が徹底して空気のようにしていたせいで、ここでなら好き勝手しても許されるみたいになってしまっていたようだ。
それが、一気に悪口大会のようになったことにそれまで黙っていた透哉が本気で怒ったのだ。
「そんな怒ることないじゃん」
「そうだよ。てか、浅見芽衣子みたいな子がタイプなの?」
「少なくとも、君らみたいな女子はタイプではないのは確かだ。もう、大した用事もないのに話しかけないでくれ。こっちが恥ずかしくなる」
そんなことを言われた女子は、頭に血が上ったようで透哉に怒鳴り散らしていた。その形相は、恐ろしいものばかりだった。
「うっわ、逆ギレかよ。怖ぇー」
「どんなに美人でも、あの顔されると幻滅だよな」
「てか、あれだけ飲み食いして、ゴミ放置してるの見ただけでないだろ。顔がよくても、あんなのが彼女だとか恥ずかしくて友達に紹介できねぇーよ」
「だよな」
男子がそんなことを言い始めたのは、すぐだった。押しかけて来る女子より、天然の強い芽衣子の方が、断然可愛いと彼らは思っていた。本人はその自覚が全くないところが、益々好感を持たれていたようだ。
そんなことがあったことを全く知らない芽衣子は、他の男子にも声をかけられて、慌てて挨拶を仕返したりした。わたわたしているのを見て笑われてもいたが、そんなことよりいつもと違うことの方が芽衣子は気になって仕方がなかった。
(どうなってるんだろ??)
昨日と今日で違うのはわかるが、何があったかまではわかることはなかった。誰もわざわざ芽衣子に話さなかったのだ。
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