命ある限り、真心を尽くすことを誓うと約束させた本人が、それをすっかり忘れていたようです。思い出した途端、周りに頭の心配をされました

珠宮さくら

文字の大きさ
上 下
5 / 24

しおりを挟む

「転校生の隣ってだけで大変みたいだな」


芽衣子はクラスにいられなくなったというか。雰囲気が悪くなったとか、息苦しさを感じているとか、色々と混ざりあって幼なじみの天唯のいる隣のクラスに逃げるようになっていた。

彼とは、母親同士が芽衣子たちのことを1日違いで生んだことで、母親たちはそれで仲良くなった。その後、色々とあったことで、芽衣子たちは必然的に仲良くなった。既に血の繋がった兄弟姉妹よりも仲が良く成長した。

幼稚園、小学校、中学校、そして高校にあがった今でも、何かあると芽衣子は天唯の側にいるのが当たり前になっている。

彼も色々あって、一時は荒れに荒れていたが、今はすっかり大人しくなっていて同年代の男子よりも寛大だ。最もみんなにではない。芽衣子に対しては特に寛大だったりする。

天唯の言葉に芽衣子は……。


「大変なんてものじゃないよ。みんな、私みたいなんだもん」
「……お前みたいって?」
「お尻が大きすぎるのか。足の位置がわかってないのか。私の机にぶつかりまくるのよ。机の物、全部仕舞うと机に座られるから嫌だし、出しっぱなしにしてるとぶつかった拍子に落ちたりする。ずっと座ったままなんて、そんなことされたくない。無理」
「……」
「私もよくぶつかるけど、みんなもよくぶつかるみたいなの」
「……」


愚痴るつもりはないが、疲れた顔で芽衣子はそんなことを言っていた。それを聞いている天唯が何とも言えない顔をしていることに全く気づいていなかった。

幼なじみのせいか。お互いの兄弟よりも仲がいい。天唯には兄と姉がいて、芽衣子は天唯の上の兄姉とも仲がいいが、天唯は実の兄姉とはいまいちだったりする。

逆に芽衣子の方は、上にはいないが双子の弟妹たちがいて、どちらもやんちゃで、天然の強い芽衣子はそんな弟妹たちにいつも色々されて大変だった。

でも、芽衣子の弟妹たちは天唯とは仲良くしていて、芽衣子は羨ましいとは思わないが天唯が家に来たとなると弟妹たちが天唯の側に駆け寄るのを見て、どっちが兄弟なのかと疑問に思うのは、いつものことだった。

それこそ、天唯も実の兄弟が芽衣子と仲良くしているのを芽衣子が家に来た時には見るのだ。同じようなことを思っていたが、それだけだった。

天唯が弟妹たちと一緒になって、芽衣子に何かして来ることはなかったし、芽衣子も幼なじみの兄弟と意気投合しすぎて幼なじみを笑い者にしたり、除け者にすることはなかった。

そんな幼なじみの2人は、小学校、中学校が一緒だった面々には見慣れた光景になっていた。昔は、冷やかす生徒も多かったし、2人が幼なじみだと知っていても知らなくとも、冷やかすような輩はいた。だが、芽衣子はこの通り天然だし、天唯は天然ではないが、何を言われても動じるなんてことを最近では全くしなくなった。

流石に今回の芽衣子の言葉に目を白黒させたが、それについて何か言うことはなかった。それこそ、何か言っていたら、芽衣子は怒らずとも、他の女子に袋叩きになっていただろう。


「マジかよ。尻が大きくてぶつかりまくってるなんて思ってる奴いるんだな」
「それこそ、尻がデカくてぶつかりまくるなら、そんなのどこにでもいるよな」


芽衣子の声が聞こえた男子が、そんなことを言ってゲラゲラと笑っていたが、それが聞こえた女子が眉を顰めてサイテーだとその男子たちを何とも言い現せない顔と目で見た。

天唯のクラスの雰囲気も悪くさせ始めている自覚が全くない芽衣子は……。


「このクラスも、男女であんまり仲良くないみたいだね」
「……」


呑気に自分が言葉にしたのを拾ったことで、険悪になっているという自覚が芽衣子には全くなかった。

天唯は慣れたもので、それにもノーコメントを貫いていた。それに不用意なことを言えば、クラスの女子を敵にする。芽衣子はそんなことになっても、この調子のままなのは長い付き合いでわかる。すぐに忘れるだろうが、そんな風に忘れてくれる女子は少ないはずだ。なので、沈黙していた。

その間にお尻うんねんの議論で、男子と女子が言い争う事態になってしまったが、芽衣子はそろそろ戻らなきゃと何事もなくクラスに戻って行った。

天唯は、幼なじみとよくいることで冷やかしが馬鹿にされていることもあったが、それに芽衣子がきょとんとしていることが多くて、大概が何を言われているのかに気づいていないまま終わることが常だった。何かあるごとに天唯のところに来ることをやめることはなかったが、その来ている理由がズレているのだ。

そのせいで、天唯のクラスの男女もしばらくちょっとした発言だけでも、嫌味に捉えてしまって、口論になるようになったが、天唯はそれでも我、感せずなままでいた。

こうなるのが初めてではないため、それに一々動じていては、芽衣子の幼なじみなんてしてられはしない。天唯がしたのは、幼なじみだろうとも、他の女子だろうともお尻に注目しないことだった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】欲しがり義妹に王位を奪われ偽者花嫁として嫁ぎました。バレたら処刑されるとドキドキしていたらイケメン王に溺愛されてます。

美咲アリス
恋愛
【Amazonベストセラー入りしました(長編版)】「国王陛下!わたくしは偽者の花嫁です!どうぞわたくしを処刑してください!!」「とりあえず、落ち着こうか?(にっこり)」意地悪な義母の策略で義妹の代わりに辺境国へ嫁いだオメガ王女のフウル。正直な性格のせいで嘘をつくことができずに命を捨てる覚悟で夫となる国王に真実を告げる。だが美貌の国王リオ・ナバはなぜかにっこりと微笑んだ。そしてフウルを甘々にもてなしてくれる。「きっとこれは処刑前の罠?」不幸生活が身についたフウルはビクビクしながら城で暮らすが、実は国王にはある考えがあって⋯⋯? 

一目惚れ

詩織
恋愛
恋も長くしてない私に突然現れた彼。 でも彼は全く私に興味なかった

忘れられたら苦労しない

菅井群青
恋愛
結婚を考えていた彼氏に突然振られ、二年間引きずる女と同じく過去の恋に囚われている男が出会う。 似ている、私たち…… でもそれは全然違った……私なんかより彼の方が心を囚われたままだ。 別れた恋人を忘れられない女と、運命によって引き裂かれ突然亡くなった彼女の思い出の中で生きる男の物語 「……まだいいよ──会えたら……」 「え?」 あなたには忘れらない人が、いますか?──

Perverse

伊吹美香
恋愛
『高嶺の花』なんて立派なものじゃない ただ一人の女として愛してほしいだけなの… あなたはゆっくりと私の心に浸食してくる 触れ合う身体は熱いのに あなたの心がわからない… あなたは私に何を求めてるの? 私の気持ちはあなたに届いているの? 周りからは高嶺の花と呼ばれ本当の自分を出し切れずに悩んでいる女 三崎結菜 × 口も態度も悪いが営業成績No.1で結菜を振り回す冷たい同期男 柴垣義人 大人オフィスラブ

城内別居中の国王夫妻の話

小野
恋愛
タイトル通りです。

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

隣国が戦を仕掛けてきたので返り討ちにし、人質として三国の王女を貰い受けました

しろねこ。
恋愛
三国から攻め入られ、四面楚歌の絶体絶命の危機だったけど、何とか戦を終わらせられました。 つきましては和平の為の政略結婚に移ります。 冷酷と呼ばれる第一王子。 脳筋マッチョの第二王子。 要領良しな腹黒第三王子。 選ぶのは三人の難ありな王子様方。 宝石と貴金属が有名なパルス国。 騎士と聖女がいるシェスタ国。 緑が多く農業盛んなセラフィム国。 それぞれの国から王女を貰い受けたいと思います。 戦を仕掛けた事を後悔してもらいましょう。 ご都合主義、ハピエン、両片想い大好きな作者による作品です。 現在10万字以上となっています、私の作品で一番長いです。 基本甘々です。 同名キャラにて、様々な作品を書いています。 作品によりキャラの性格、立場が違いますので、それぞれの差分をお楽しみ下さい。 全員ではないですが、イメージイラストあります。 皆様の心に残るような、そして自分の好みを詰め込んだ甘々な作品を書いていきますので、よろしくお願い致します(*´ω`*) カクヨムさんでも投稿中で、そちらでコンテスト参加している作品となりますm(_ _)m 小説家になろうさん、ネオページさんでも掲載中。

偽装夫婦

詩織
恋愛
付き合って5年になる彼は後輩に横取りされた。 会社も一緒だし行く気がない。 けど、横取りされたからって会社辞めるってアホすぎません?

処理中です...