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「天音は、どうしている?」
「髪飾りとネックレスが壊れたことにショックを受けているだけで、何があったかを思い出してはいないわ」
「そうか」


梨乃のことも、天音は思い出していないし、そんな幼なじみがいたことすら、覚えていない。

梨乃が、髪飾りを壊したことで泣いている天音を見て、義仁だけでなくて、蓮加も頭に血がのぼってしまい、妖力が暴走するのを止められなかったのだ。

そんな二人を止めたのが、天音だった。

その際にネックレスが壊れてしまったのだ。義仁が、天音に力を使いすぎないようにと抑えるために渡したもので、天音が癒やしの力を本気で使うと命まで燃え尽きるまで、癒そうとするのを知ったからだ。彼女が優しすぎるのを直すのは難しいと思い、それを渡したのだ。それが壊れるほどの力を天音は使ったのだ。幼い頃のように壊れた物までたちまち直した。

それこそ、義仁は天音が死んでしまうのではないかと思っていた。

だが、昔と異なることは、梨乃の怪我を治すことはなかったという点だ。

二人の王族の暴走を止めた天音は、そのことを忘れる代わりに再び力を使いすぎないようにするべく、見ていた者たちに王が他言無用を言い渡したのだ。

梨乃の両親は、娘を勘当したとはいえ、血の繋がった娘がやらかしたことを知っていたたまれなくなったようで、娘の怪我をそのままにするわけにもいかず、梨乃を連れて人知れず引っ越して二度と天音が見かけることはなかった。

それこそ、あやかしの中では癒やしの力を持つ者は珍しいが、たちどころに元に戻す力を持つ天音こそ王子の婚約者に相応しいと思われることに繋がったが、その話を公にすることは控えることになったのも、そんなことがあったからだった。


「天音」
「義仁様」


王子は天音のことを溺愛してやまず、王女と取り合うこともあったようだが、天音の周りはいつも笑顔溢れることに繋がって賑やかだった。

いつ見かけても、義仁と仲睦まじい姿をしていて、幸せいっぱいな天音を羨む者も少なくなかった。それでも、天音に何かしらしようとする者は現れることはなかった。

義仁と蓮加の暴走も殆どないまま、あやかしの世界が天音を中心に栄えることになったことで、天音という名前が歴史に残ることになった。



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